訪問看護の営業方法|依頼が増える多職種連携と挨拶のコツ

「訪問看護の営業って、何をどうすればいいの?」「チラシを配っても、なかなか依頼につながらない」——ステーションの運営や管理を任されると、必ずぶつかるのが新規利用者の獲得という壁です。営業経験のない看護師・セラピストにとっては、特に手探りになりがちなテーマではないでしょうか。
訪問看護の営業は、モノを売り込む営業とはまったく違います。鍵を握るのは「多職種との信頼関係づくり」。この記事では、依頼が自然と増えるステーションが実践している営業先の選び方・挨拶のコツ・多職種連携の進め方を、現場目線で具体的に解説します。
- 訪問看護の営業が「売り込み」ではなく「信頼づくり」である理由
- 優先して回るべき営業先と、それぞれへのアプローチのコツ
- 依頼につながる挨拶・自己紹介・パンフレットの作り方
- 継続的に依頼が入る「多職種連携」の仕組みと、やってはいけないNG行動
訪問看護の営業とは?「売り込み」ではなく「信頼づくり」
まず押さえておきたいのは、訪問看護の営業のゴールです。商品を売り込むのではなく、「困ったときに、まずこのステーションに相談しよう」と思い出してもらう関係を築くことが本質です。

営業って、うちの強みをアピールして「使ってください!」ってお願いするイメージなんですけど…違うんですか?

その気持ちが強すぎると逆効果なんだ。ケアマネさんが本当に見ているのは「この人たちは利用者さんを安心して任せられるか」。売り込みより、信頼できる相手だと感じてもらうことが先だよ。
依頼はなぜ生まれるのか
訪問看護の依頼は、多くの場合ケアマネジャーや医療機関からの紹介で生まれます。紹介する側は、自分が担当する利用者・患者を託すわけですから、「信頼できる相手かどうか」を何より重視します。つまり営業とは、この信頼を日々積み上げていく活動そのものなのです。
訪問看護の営業の目的は「即・契約」ではなく「顔と名前を覚えてもらい、相談先として選ばれること」。一度の訪問で結果を求めず、中長期の関係づくりと捉えることが、遠回りに見えて最短の近道です。
訪問看護の主な営業先|どこを回るべきか
限られた時間で成果を出すには、営業先の優先順位づけが欠かせません。訪問看護の依頼元になりやすい先を整理します。
| 営業先 | 期待できること | アプローチのポイント |
|---|---|---|
| 居宅介護支援事業所 (ケアマネ) | 介護保険利用者の紹介の中心 | 最優先。顔を覚えてもらい、相談しやすい関係を作る |
| 病院 (地域連携室・MSW) | 退院患者の在宅移行の紹介 | 退院支援の窓口へ。医療依存度の高い利用者につながる |
| 診療所・クリニック | 主治医からの指示・紹介 | 連携のしやすさをアピール。報告の丁寧さが信頼に |
| 地域包括支援センター | 要支援者・地域の相談経由の紹介 | 地域の相談窓口として関係構築 |
| 他の介護サービス事業所 | 併用ケースの相互紹介 | デイ・ヘルパー事業所などと顔の見える関係を |
最優先はケアマネジャー(居宅介護支援事業所)
介護保険での訪問看護は、ケアプランに位置づけられて初めて利用につながります。そのプランを作るのがケアマネジャーですから、居宅介護支援事業所への営業は最優先です。近隣の事業所をリストアップし、定期的に顔を出して相談しやすい関係を作りましょう。
病院の地域連携室・MSW
退院してそのまま在宅療養に移る患者は、訪問看護の重要な依頼元です。病院の地域連携室や医療ソーシャルワーカー(MSW)に、自ステーションが対応できる医療処置や体制を伝えておくと、退院調整の際に候補として挙がりやすくなります。
診療所・クリニックの主治医
訪問看護は主治医の指示書に基づいて提供されます。日頃から報告を丁寧に行い、「連携しやすい看護師がいる」と感じてもらえれば、主治医からの新規紹介にもつながります。
依頼が増える営業の進め方【5ステップ】
行き当たりばったりで回っても成果は出ません。次の流れで、計画的に進めましょう。
- 営業先リストを作る近隣の居宅介護支援事業所・病院・診療所を地図上でリスト化します。距離・規模・つながりの有無で優先順位をつけましょう。
- 自ステーションの強みを言語化する「24時間対応」「精神科に対応」「リハビリ職が在籍」など、他との違いを一言で伝えられる形に整理します。
- パンフレット・名刺を準備する対応できる医療処置・営業時間・連絡先が一目でわかる資料を作成。相手が後で思い出せる”残るツール”にします。
- 挨拶回りをする(第一印象づくり)短時間で失礼なく、要点を伝えて顔と名前を覚えてもらいます。長居せず、相手の時間を奪わないのが好印象のコツです。
- 関係を継続する(報告・情報提供)紹介を受けたら、経過報告を丁寧に。勉強会の案内など、売り込み以外の接点を続けて関係を深めます。
営業の年間計画・目標の立て方
営業を「気が向いたときにやる」状態にすると、活動が続かず成果も安定しません。ゆるやかでよいので、計画と目標を持つことをおすすめします。
まず現状を把握する
「今どの事業所・病院から、どのくらい紹介が来ているか」を書き出してみましょう。依頼元の内訳が見えると、手薄なエリアや、関係を深めるべき相手が見えてきます。
ゆるやかな目標を決める
「月に○件の事業所へ挨拶に行く」「四半期に一度は主要なケアマネへ近況報告に伺う」など、行動ベースの目標を置くと続けやすくなります。契約数のような結果目標だけだと、コントロールできず息切れしがちです。まずは”訪問回数・接点の数”を目標にするのがコツです。
| 期間 | 行動目標の例 |
|---|---|
| 毎月 | 新規の居宅介護支援事業所へ2〜3件、挨拶に伺う |
| 四半期 | 紹介実績のある連携先へ近況報告・お礼に回る |
| 半年 | ケアマネ向けの勉強会や情報提供を1回企画する |
| 随時 | 紹介を受けたら、経過を丁寧に報告し関係を深める |
営業は「新規開拓」と「既存フォロー」の両輪で考えます。新しい連携先を増やすことばかりに気を取られず、すでに紹介をくれる相手との関係を温めることが、安定した依頼の土台になります。
依頼につながる「挨拶」のコツ
営業の第一歩は挨拶回り。ここでの印象が、その後の関係を大きく左右します。
短く・要点を絞って伝える
ケアマネや連携室のスタッフは多忙です。アポなしで訪ねる場合は特に、相手の時間を奪わない配慮が信頼の第一歩。「ご挨拶に伺いました」と名乗り、ステーション名・対応できること・連絡先を1〜2分で伝えて切り上げる、くらいがちょうど良い塩梅です。
伝えるべき3点を用意しておく
- どんなステーションか:対応エリア・営業時間・24時間対応の有無
- 何が得意か:医療処置・精神科・小児・リハビリなど、強みを一言で
- どう連絡すればよいか:担当者名と連絡手段。「困ったらここに」を明確に
アポなしで長時間居座る/一方的に売り込む/他ステーションを悪く言う——これらは一発で信頼を失います。「忙しい中お時間をいただいている」という姿勢を忘れず、相手のペースを尊重しましょう。
パンフレットは「後で思い出せる」形に
その場で覚えてもらえなくても、手元に資料が残れば思い出してもらえます。対応可能な医療処置の一覧、営業時間、連絡先、担当者の顔写真などを、A4一枚でパッと見て分かる形にまとめておくと効果的です。
継続依頼を生む「多職種連携」の実践
一度きりの挨拶で終わらせず、依頼が”続く”仕組みを作るのが多職種連携です。ここが訪問看護の営業の本丸といえます。

挨拶に行ったあと、どうやって関係を続けていけばいいんでしょう?

いちばん効くのは「丁寧な報告」だよ。紹介してくれたケアマネさんに、利用者さんの状態をこまめに共有する。それが「任せて安心」につながって、次の紹介を呼ぶんだ。
報告・連絡・相談を丁寧にする
紹介を受けた後の対応こそ、最大の営業活動です。利用者の状態変化や気づきをケアマネ・主治医にこまめに共有すること。「報告が丁寧で、任せて安心」という評価が、次の紹介を生む最も確実なルートです。担当者会議やサービス担当者会議にもしっかり参加しましょう。
「困ったときに動ける」存在になる
急な状態悪化や、他ステーションで断られたケースに柔軟に対応できると、連携先からの信頼は一気に高まります。無理をする必要はありませんが、「相談すれば一緒に考えてくれる」という姿勢が、選ばれる理由になります。
勉強会・情報提供で接点を増やす
ケアマネ向けの勉強会や、季節ごとの健康情報の提供など、売り込み以外の接点を持つと、自然に顔を覚えてもらえます。「役立つ情報をくれるステーション」という印象は、長期的な関係づくりに効いてきます。
営業の成果は「訪問した回数」より「紹介後の対応の質」で決まります。新規開拓ばかりに目を向けず、今つながっている連携先との信頼を深めることが、結果的に安定した依頼の流れを作ります。
営業先別・信頼される伝え方のコツ
同じ挨拶でも、相手が何を気にしているかは営業先によって違います。相手の関心に合わせて伝えると、ぐっと印象が良くなります。
| 営業先 | 相手が気にしていること | 刺さる伝え方 |
|---|---|---|
| ケアマネ | 利用者を安心して任せられるか・連絡のしやすさ | 対応範囲と「困ったらすぐ相談できる」体制を具体的に |
| 病院の連携室・MSW | 医療依存度の高い患者に対応できるか | 対応可能な医療処置・緊急時の体制を明確に |
| 診療所の主治医 | 指示への的確な対応・報告の質 | 丁寧な報告と、医師の方針を尊重する姿勢を示す |
| 他事業所 | 併用時に連携がスムーズか | 情報共有の姿勢と、顔の見える関係づくり |
共通するのは、「自分たちが何をできるか」より「相手の困りごとをどう助けられるか」を主語にすること。相手目線で語れる人ほど、信頼されやすくなります。
依頼につながる営業ツールの作り方
口頭の挨拶だけでは、相手の記憶に残りにくいのが現実です。手元に残る営業ツールを整えておくと、思い出してもらえる確率が上がります。
パンフレット(事業所紹介)
A4一枚で、対応エリア・営業時間・24時間対応の有無・対応できる医療処置・連絡先がひと目で分かる構成にします。文字を詰め込みすぎず、必要な情報を素早く探せるレイアウトが好まれます。
名刺・担当者カード
担当者の顔と名前が分かるものがあると、「あの人のステーション」として記憶に残ります。連絡手段(電話・FAXなど)を明記し、迷わず連絡できるようにしましょう。
ニュースレター・情報提供資料
季節の健康情報や、対応事例の紹介(個人が特定されない範囲で)などをまとめた資料を定期的に届けると、売り込みでない自然な接点を継続できます。「役立つ情報をくれる」という印象は、長期的な信頼につながります。
ツールは”作って配って終わり”にせず、会話のきっかけとして使うのが正解。「新しく○○に対応できるようになりました」と資料を手渡すことで、更新のたびに自然な訪問理由が生まれます。
依頼が増えないステーションの共通点
営業しているのに依頼が伸びない——そんなステーションには、いくつか共通のつまずきがあります。当てはまっていないか、チェックしてみましょう。
- 挨拶が一度きりで続かない:初回だけで関係が途切れ、思い出してもらえない。
- 報告が遅い・雑:紹介後の対応が悪く、「次はやめておこう」と思われてしまう。
- 強みが伝わっていない:何が得意なステーションか、連携先が把握できていない。
- 断りが多い:条件の合わないケースを断り続け、相談先の候補から外れてしまう。
- 営業がスタッフ任せ・管理者任せで属人的:チームで取り組めておらず、活動が続かない。

特に多いのが「報告が遅い」パターン。紹介してくれた人は、その後どうなったか気にしているんだ。こまめな一報があるだけで、信頼はまるで違ってくるよ。
新規開設・オンラインでの集客も視野に
足で稼ぐ営業に加えて、いまはWebやSNSも大切な接点になっています。無理のない範囲で取り入れてみましょう。
ホームページ・Googleビジネスプロフィール
ケアマネや家族が「地域名+訪問看護」で検索することは珍しくありません。対応内容や連絡先が分かるホームページや、地図検索に表示されるGoogleビジネスプロフィールを整えておくと、探している人に見つけてもらいやすくなります。
新規開設時の営業
開設直後は認知がゼロからのスタートです。まずは近隣の居宅介護支援事業所・病院・診療所への挨拶回りを集中的に行い、「新しくできたステーション」として顔を売ることが最優先。開設案内を持って、対応できることを丁寧に伝えて回りましょう。
営業を続けるための工夫と注意点
営業は一度やって終わりではなく、続けることに意味があります。無理なく継続するための工夫をまとめます。
| 工夫 | 内容 |
|---|---|
| 担当エリアを決める | 回る範囲を絞り、定期的に顔を出せる体制にする |
| 訪問記録を残す | いつ・誰に・何を伝えたかを記録し、次回に活かす |
| チームで役割分担 | 管理者だけでなく、スタッフも日々の連携で信頼を積む |
| 感謝を伝える | 紹介へのお礼を言葉で。関係を温める小さな習慣 |
紹介への”お礼”は言葉や丁寧な報告で示すのが基本です。金品や過度な接待による働きかけは、公正性を損ない、かえって信頼を失うおそれがあります。あくまでケアの質と誠実な対応で選ばれることを目指しましょう。
そのまま使える挨拶トークの例
「実際に何を話せばいいか分からない」という声は多いもの。初回の挨拶で使える、シンプルな流れの例を紹介します。丸暗記ではなく、自ステーションに合わせてアレンジしてください。
ケアマネへの初回挨拶(1〜2分)
「お忙しいところ失礼いたします。近くで訪問看護をしております○○ステーションの△△と申します。ご挨拶に伺いました。私どもは□□エリアで、24時間対応と○○(医療処置など)に対応しております。もし利用者さんのことでお困りの際は、いつでもご相談ください。こちらが連絡先です。本日はお時間をいただきありがとうございました」
ポイントは、名乗る→対応できること→「困ったら相談を」→連絡先→お礼という流れを、短くまとめること。長々と説明せず、相手が忙しければすぐに切り上げる姿勢が好印象につながります。
紹介を受けた後のフォロー
「先日はご紹介いただき、ありがとうございました。○○様、訪問を開始しております。現在の様子ですが……(簡潔に状態を共有)。また変化があればすぐにご報告いたします」——このひと言があるだけで、「任せて安心」という信頼が積み上がります。

こう言えばいいんだ、と分かると気持ちが楽になります。もっと上手く話さなきゃと思ってました。

流暢さより誠実さだよ。相手の時間を大切にして、約束を守る。それが伝われば、話が上手くなくても信頼はちゃんと積み上がるからね。
よくある質問(訪問看護の営業)
営業はアポを取ってから行くべきですか?
初回の簡単な挨拶であればアポなしでも受け入れられることが多いですが、相手の忙しい時間帯を避け、短時間で切り上げる配慮が必要です。改まった面談や勉強会の相談をしたい場合は、事前に連絡してアポを取るほうが丁寧で、相手にも歓迎されます。
営業に行くのは管理者だけでいいですか?
管理者が中心になりつつも、実は日々のケアで連携先とやり取りするスタッフ全員が”営業担当”です。丁寧な報告や誠実な対応そのものが信頼を築くため、チーム全体で意識を共有することが理想です。
営業に行ってもすぐに依頼が来ません。どうすれば?
訪問看護の営業は成果が出るまで時間がかかるのが普通です。すぐに紹介がなくても、顔を覚えてもらえていれば、必要なタイミングで思い出してもらえます。焦らず接点を継続し、紹介を受けた際の対応を丁寧にすることが、次につながります。
自ステーションの強みが分からず、何を伝えればいいか迷います。
「24時間対応」「特定の医療処置に対応」「精神科・小児に対応」「リハビリ職が在籍」など、対応範囲や体制を具体的に洗い出してみましょう。特別な強みがなくても、「連絡がつきやすい」「報告が丁寧」といった対応面の安心感も立派な差別化ポイントになります。
チラシやパンフレットは効果がありますか?
配って終わりでは効果は限定的ですが、挨拶の際に手渡し、後で思い出してもらう”きっかけ”として使うと有効です。対応できる医療処置・連絡先・担当者が一目で分かる作りにし、口頭の挨拶とセットで届けるのがおすすめです。
まとめ|訪問看護の営業は「信頼の積み重ね」がすべて
訪問看護の営業は、モノを売り込む活動ではありません。ケアマネジャーや医療機関との信頼関係を、日々の丁寧な対応を通じて積み上げていくこと。それが依頼の増える最も確実な道です。挨拶で顔を覚えてもらい、紹介後の報告で「任せて安心」を実感してもらう——この循環こそが、営業の本質です。
- 訪問看護の営業は「売り込み」でなく「信頼づくり」が本質
- 最優先の営業先はケアマネ。次いで病院の連携室・診療所・地域包括
- 挨拶は短く要点を絞り、相手の時間を奪わない配慮が第一印象を左右
- 継続依頼の鍵は「丁寧な報告」。紹介後の対応の質が次の紹介を生む
- 金品ではなく、ケアの質と誠実さで選ばれることを目指す
今日からできるのは、近隣の連携先リストを作り、まず一件、顔を出してみること。焦らず信頼を重ねていけば、依頼は着実に増えていきます。
