潰れる訪問リハビリ事業所の特徴7つと安定経営のコツ

「訪問リハビリの事業所が閉鎖になるって聞いた」「うちの事業所は大丈夫だろうか」——訪問リハビリは、介護サービスの中では比較的収支が安定しているといわれる一方で、利用者が集まらない、スタッフが定着しない、制度改定に対応できないといった理由で、事業を縮小・撤退する事業所もあります。
この記事では、厚生労働省の経営データをもとに訪問リハビリの経営状況を確認したうえで、事業がうまくいかなくなる事業所に共通する特徴と、安定した経営を続けるためのコツを整理します。管理者や経営者はもちろん、転職先を選ぶPT・OT・STにも役立つ内容です。
- データで見る訪問リハビリの経営状況(収支差率・事業所数)
- 経営がうまくいかなくなる訪問リハビリ事業所の7つの特徴
- 安定した経営のために押さえたい収入と支出のポイント
- 減算・返還を防ぐための運営管理
- 転職時に「続く事業所」を見分けるポイント
データで見る訪問リハビリの経営状況
厚生労働省の資料によると、訪問リハビリテーションの収支差率(令和6年度決算・税引前、物価高騰対策関連補助金を含まない)は10.8%で、令和5年度の11.8%からやや下がっています。全サービスの平均(4.7%)と比べると高い水準です。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 収支差率(令和5年度決算) | 11.8% |
| 収支差率(令和6年度決算) | 10.8% |
| (参考)全サービスの平均(令和6年度決算) | 4.7% |
| 請求事業所数(令和7年11月審査分) | 5,747事業所 |
| 受給者数(令和7年) | 約15万人 |
ただし、これは平均の数字です。訪問リハビリの事業所の多くは病院・診療所・介護老人保健施設などに併設されており、母体の経営方針や人員配置によって、事業所ごとの収支は大きく異なります。平均が黒字でも、個々の事業所が赤字で撤退することは十分にありえます。

収支差率が10%もあるなら、潰れることはなさそうですね。

平均だけを見ると安心しがちだけど、人件費の割合が高いサービスだから、スタッフが一人辞めたり、利用者が減ったりすると、すぐに赤字になりやすいんだ。それに、母体の病院が経営方針を変えて、訪問部門を閉じることもある。事業所ごとの状況を見ることが大切だよ。
潰れる訪問リハビリ事業所の7つの特徴
| 特徴 | 起こりがちな状況 |
|---|---|
| ① 紹介元が限られている | 特定のケアマネジャーや母体の病院からの紹介に頼り、そこが減ると利用者が急減する |
| ② スタッフが定着しない | 離職が続き、残ったスタッフの負担が増えてさらに辞める悪循環に陥る |
| ③ 移動の効率が悪い | 訪問エリアが広すぎる、ルートが非効率で、1日の訪問件数が伸びない |
| ④ 医師の関わりが弱い | 事業所の医師の診療が少なく、診療未実施減算が多い。計画の見直しが遅れる |
| ⑤ 加算の要件を整えていない | リハマネ加算などの体制が整わず、提供した質に見合う報酬を得られていない |
| ⑥ 制度改定への対応が遅い | BCPや虐待防止の措置が未整備で減算を受ける、新設の加算に気づかない |
| ⑦ 運営指導で返還を求められる | 計画書や記録の不備、減算の適用漏れが見つかり、過去にさかのぼって返還する |
事業所が撤退すると何が起こるか
訪問リハビリの事業所が閉鎖・撤退すると、影響を受けるのは事業所だけではありません。
| 影響を受ける人 | 起こること |
|---|---|
| 利用者・家族 | 担当が変わる、近くに代わりの事業所がなく訪問リハビリを続けられない、生活機能が低下する |
| ケアマネジャー | 代わりの事業所探しやケアプランの変更の負担が生じる |
| スタッフ | 配置転換や転職が必要になる。地域で築いた関係が途切れる |
| 地域 | 在宅でリハビリを受けられる資源が減る |
特に訪問リハビリ事業所が少ない地域では、一つの事業所の撤退が地域の在宅リハビリに大きな影響を与えます。事業を続けること自体が、地域への責任でもあるのです。
安定した経営のための収入のポイント
紹介元を広げ、受け入れ体制を整える
新規利用者の多くはケアマネジャーや医療機関からの紹介です。特定の紹介元に偏らないよう、地域の複数の居宅介護支援事業所、医療機関、地域包括支援センターと関係をつくりましょう。依頼から開始までの日数を短くすることも、紹介を増やすうえで重要です。
提供している質に見合う加算を算定する
厚生労働省の資料(令和7年10月サービス提供分)では、リハビリテーションマネジメント加算(ロ)を算定している事業所は30.6%、短期集中リハビリテーション実施加算は32.7%でした。一方、退院時共同指導加算は8.6%、認知症短期集中リハビリテーション実施加算は0.7%にとどまっています。要件となる取り組み(会議・情報提供・医療機関との連携など)をきちんと行えば算定できる加算は、体制を整える価値があります。
診療未実施減算を減らす
事業所の医師が診療せず、別の医療機関の医師の情報で計画を作成した場合は、1回につき50単位の診療未実施減算となります。同じ資料では、この減算を算定している事業所は22.1%ありました。事業所の医師が診療できる体制を整えることは、報酬の面でもリハビリの質の面でも重要です。
安定した経営のための支出・体制のポイント
- 人件費とスタッフの定着:訪問リハビリは人件費の割合が高いサービス。採用より定着に力を入れ、教育や休みやすい体制を整える
- 移動の効率化:訪問エリアを適切に設定し、地区ごとにルートを組んで移動時間を減らす
- 記録の効率化:タブレットなどで訪問先や移動中に記録を済ませ、事務作業の時間を減らす
- 処遇改善加算の活用:令和8年度の期中改定で訪問リハビリにも処遇改善加算(1.5%)が新設されたため、要件を確認して算定し、スタッフの処遇改善に充てる
減算・返還を防ぐための運営管理
経営を揺るがす大きな要因の一つが、運営指導による返還です。日頃から次の点を管理しておきましょう。
| 管理項目 | 確認のポイント |
|---|---|
| 医師の診療と計画 | 診療の日から3月以内に提供しているか。計画書の説明・同意・交付が提供前か |
| 体制の減算 | BCP・虐待防止の措置が整っているか(未整備はそれぞれ1%減算) |
| 同一建物減算 | 対象の建物と利用者数を毎月確認しているか |
| 加算の要件 | リハマネ加算の会議や情報提供の記録がそろっているか |
| 介護予防の12か月超 | 要件を満たさない利用者に減算を適用しているか |
安定した経営の土台は、「利用者に成果を出すこと」と「ルールどおりに運営すること」の両立です。どちらかが欠けると、紹介が減るか、返還で一気に経営が悪化します。
管理者が毎月確認したい経営の指標
経営の悪化は、ある日突然起こるわけではありません。次のような指標を毎月確認し、変化に早めに気づけるようにしておきましょう。
- 月の延べ訪問回数と、スタッフ1人あたりの訪問回数
- 新規利用者数と終了者数(終了理由も含めて)
- キャンセル率と振替の実施状況
- 加算の算定状況と、減算の発生状況
- スタッフの残業時間、有給休暇の取得状況、離職の兆し
数字の変化をスタッフとも共有し、「なぜ減ったのか」「どうすれば改善できるか」をチームで考えることが、事業所の持続性を高めます。
転職時に「続く事業所」を見分けるポイント【実践編】
- スタッフの勤続年数や、最近の退職者の数
- 紹介元の数(特定の病院やケアマネジャーに偏っていないか)
- 事業所の医師がどの程度診療に関わっているか
- リハマネ加算などの算定状況と、リハビリテーション会議の運営
- 教育体制や、新人の同行訪問の期間
- 母体法人の中での訪問部門の位置づけ(今後も続ける方針か)
よくある質問
訪問リハビリ事業所は単独で開設できますか?
介護保険の訪問リハビリテーション事業所は、病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院が指定を受けて行うもので、リハ職が単独で開設することはできません。そのため、母体の経営状況や方針が事業所の存続に影響します。
事業所が閉鎖になったら、利用者はどうなりますか?
事業所は、事業の廃止や休止の前に、利用者が引き続き必要なサービスを受けられるよう、ほかの事業所の紹介など必要な調整を行うことが求められます。ケアマネジャーと連携して、利用者の生活に影響が出ないよう引き継ぎます。
件数を増やせば経営は安定しますか?
件数は収入の基本ですが、無理な件数はスタッフの疲弊と離職につながり、かえって経営を不安定にします。移動の効率化や加算の体制づくりと組み合わせて、持続できる件数を設定しましょう。
小規模な訪問リハビリ事業所でも安定して経営できますか?
小規模でも、訪問エリアを絞って移動を効率化し、地域のケアマネジャーとの信頼関係を築いている事業所は安定しやすい傾向があります。一方、スタッフ一人の退職の影響が大きいため、定着と情報共有の仕組みが特に重要です。
まとめ|潰れない訪問リハビリ事業所は「成果」と「ルール」を両立している
訪問リハビリの平均収支差率は10.8%と、介護サービスの中では高い水準です。それでも、紹介元の偏り、スタッフの離職、移動の非効率、医師の関わりの弱さ、制度への対応の遅れ、運営指導での返還などが重なると、経営は一気に悪化します。利用者に成果を出し、ルールどおりに運営し、スタッフが長く働ける体制をつくることが、安定した経営の近道です。経営の数字は、利用者とスタッフを守るための道具として活用しましょう。
- 訪問リハビリの収支差率は令和6年度決算で10.8%(全サービス平均4.7%)
- 平均は高くても、事業所ごとの差が大きく、撤退する事業所もある
- 紹介元の分散、スタッフの定着、移動の効率化が収支を左右する
- 質に見合う加算の算定と、診療未実施減算の削減を進める
- 運営指導での返還を防ぐため、計画・記録・減算の管理を徹底する
- 訪問回数・新規と終了・加算減算などの指標を毎月確認する
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第259回)資料4「訪問リハビリテーション」
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第253回)資料1「令和8年度介護報酬改定について」
- e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)
※2026年10月時点で確認した情報です。制度は改定されるため、算定・運用の際は最新の通知・Q&Aと指定権者(都道府県・市町村)の案内をご確認ください。

