訪問リハビリの指示書は誰が書く?事業所医師の役割と書き方を解説

「訪問リハビリの指示書って、結局だれが書くのが正解?」「主治医(かかりつけ医)が書いた指示書じゃダメなの?」——訪問リハの現場で働くPT・OT・STなら、一度は引っかかったことのある疑問ではないでしょうか。新規利用者の受け入れや、主治医・ケアマネとの連携の場面で、答えに迷ったまま事務処理を進めてしまっているケースも少なくありません。
本記事では、訪問リハビリの指示書を「だれが書くのか」という結論を最初にお伝えしたうえで、根拠となる介護保険の基準、指示書と「指示の記録」の違い、訪問看護からのリハとの線引き、計画診療未実施減算の仕組みまで、現役リハ職が今日から使える形で整理しました。読み終えるころには、主治医や事務員から指示書について質問されても、自信をもって説明できるようになるはずです。
- 訪問リハビリの指示書を書くのは「だれ」か、根拠ごと整理できる
- 「指示書」という様式が必須ではない理由と、代わりに必要な記録
- 主治医(かかりつけ医)の診療情報提供書と事業所医師の指示の関係
- 訪問看護からのリハとの違い・併用ルールが整理できる
- 指示書に最低限書くべき項目と、有効期間(3か月)の考え方
結論|訪問リハビリの指示書を書くのは「事業所の医師」
結論から先にお伝えします。訪問リハビリの指示書は、指定訪問リハビリテーション事業所に所属する医師が書きます。具体的には、訪問リハを提供する病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院のいずれかに所属する医師です。主治医(かかりつけ医)ではない点に注意が必要です。
厳密には「指示書」という書類を交付するというより、事業所の医師が訪問リハの指示を出していること、そしてその指示の記録が残されていることが本質です。訪問リハビリテーションは、計画的な医学的管理を行っている医師の指示に基づいて理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が提供する、というのが介護保険上の建付けです。

えっ、主治医の先生から「指示書」もらってるのに、それじゃダメなんですか?うちの事業所、ずっとそれでやってるんですけど…。

そこ、混同しやすいんだよね。主治医からもらうのは「診療情報提供書」で、訪問リハの指示そのものではないんだ。指示は事業所の医師が、その情報を踏まえて出すという二段構えになっているんだよ。
訪問リハの指示書を書くのは「事業所の医師」。主治医からの紙は、原則として「診療情報提供書」と位置づけられ、事業所医師が指示を出すための材料になる。
そもそも訪問リハビリの「指示」とは?制度上の位置づけ
「指示書を書くのはだれか」を正しく理解するためには、訪問リハビリそのものが、どのような前提で提供されるサービスなのかを知っておく必要があります。ここを押さえておくと、加算減算の議論や、訪問看護からのリハとの違いも一気に整理できます。
訪問リハは「計画的な医学的管理」のもとで行うサービス
訪問リハビリテーションは、病状が安定期にある利用者に対して、計画的な医学的管理を行っている医師の指示に基づき、通院が困難な要介護者・要支援者の自宅で行われるリハビリです。介護保険のサービスとして提供する以上、「医師の指示の下で行うもの」という大前提が外せません。
ここでいう「計画的な医学的管理を行っている医師」とは、原則として訪問リハ事業所に所属する医師を指します。つまり、訪問リハ事業所の医師が、利用者の状態を診察し、リハビリの方針を決め、その方針に沿ってPT・OT・STに指示を出すのが基本形です。
訪問リハと「訪問看護からのリハ」は別物
同じ「在宅でPT・OT・STが行うリハ」でも、訪問看護ステーションから提供されるリハは、訪問リハビリテーション事業所のサービスとは制度上まったく別物です。指示を出す医師も、書類の名前も、回数の上限も異なります。
| 項目 | 訪問リハビリテーション | 訪問看護からのリハ |
|---|---|---|
| 提供主体 | 病院・診療所・老健・介護医療院 | 訪問看護ステーション |
| 指示を出す医師 | 事業所の医師 | 主治医(訪問看護指示書) |
| 指示の書類 | 事業所所定の指示書または計画書内の記載 | 訪問看護指示書(標準様式) |
| 1回の時間 | 20分以上を1単位 | 40〜60分を1日1回までなど制限あり |
| 主な保険 | 介護保険/医療保険 | 介護保険/医療保険 |
主治医が交付する「訪問看護指示書」は、あくまで訪問看護ステーションから出るリハを動かすための書類です。訪問リハビリテーション事業所のリハとは別ルートなので、ここを混同したまま運用すると、書類の不備で実地指導や監査の指摘につながりかねません。
「主治医から訪問看護指示書をもらっているから、訪問リハの指示書は不要」という運用は誤りです。訪問リハ事業所のサービスを提供する以上、事業所医師の指示が必要です。
訪問リハの指示書は必須?「指示の記録」があればOK
ここまで読んで、「では指示書という書類を毎回交付しないといけないのか?」と不安になった方もいるかもしれません。答えはNOです。必須なのは「指示書」という様式ではなく、「事業所の医師が指示を出した」という記録です。
厚生労働省が定める標準様式は存在しない
訪問看護指示書とは異なり、訪問リハビリの指示書には厚生労働省が定めた標準様式がありません。そのため、多くの事業所がオリジナルの書式で運用しています。書式が決まっていない代わりに、「事業所の医師の指示が記録として残っているか」という実質面が問われます。
指示の記録を残す代表的な2つの方法
事業所の医師が指示を出した記録を残す方法は、現場では大きく2通りに分かれます。どちらでも問題ありませんが、運用のしやすさや実地指導での説明のしやすさを考えて、事業所として方針を決めておきましょう。
- 独自の「訪問リハビリ指示書」様式を作成して運用事業所オリジナルの指示書をつくり、医師の診察・指示日・指示内容・署名(または記名押印)を残す方法。最も分かりやすく、外部監査や他職種への説明もしやすい。
- 訪問リハビリ計画書の中に「医師の指示」欄を設けて記載計画書と一体化させる方法。書類は減るが、「指示の事実」と「計画作成」の日付関係が分かるように工夫が必要。
「指示書」という別書類でも、「計画書内の指示欄」でも、どちらでもよい。重要なのは、事業所医師の診療日・指示日・指示内容・指示を受けたPT/OT/STが一目で分かること。
運営指導で見られるポイント
実地指導や運営指導でチェックされやすいのは、書式の体裁よりも「事業所の医師が、診察と指示を本当に行ったかどうか」が記録から読み取れるかという点です。日付の整合性、指示内容の具体性、署名や記名押印の有無は最低限おさえておきましょう。
- 事業所医師の診療日(または情報提供を受けた日)が記録されているか
- 指示日と訪問リハの提供日の前後関係に矛盾がないか
- 指示内容にリハの目的・頻度・時間・留意事項が含まれているか
- 医師の署名または記名押印があるか
- 診療日から3か月以内にリハが提供されているか
主治医の診療情報提供書と「計画診療未実施減算」
「事業所の医師がうちの利用者を診察できる機会がない」「医師の診察日から3か月以上空いてしまうことがある」——とくに無床診療所が訪問リハ事業所を持っているケースや、利用者の主治医が別の医療機関にいるケースで頻発するのが、この問題です。これに対応する仕組みが、訪問リハ計画診療未実施減算です。
事業所医師が診察できないときの「代替ルート」
本来であれば、事業所の医師がリハ計画の作成にあたり利用者を診察し、その診療をもとに指示を出すのが原則です。しかし、現実には事業所医師が直接診察できないケースもあります。そこで、主治医(別医療機関の医師)からの情報提供をもとに、事業所医師が指示を出すという代替ルートが用意されています。これが「計画診療未実施減算」での運用です。
計画診療未実施減算の主な要件
令和6年度介護報酬改定では、訪問リハの計画診療未実施減算は1回あたり50単位の減算とされました。主な要件は次の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 減算単位 | 1回あたり50単位の減算 |
| 情報提供 | 計画的な医学的管理を行っている主治医から、事業所医師に対し情報提供 |
| 提供書類 | 原則として診療情報提供書(訪問リハ指示書ではない) |
| 診療日からの期限 | 主治医の診療から3か月以内のリハ提供 |
| 事業所医師の研修 | 応用研修の合計6単位以上の取得(直近36か月以内) |
主治医から受け取る書類は「診療情報提供書」であり、訪問リハの「指示書」ではありません。指示そのものは、提供を受けた情報をもとに事業所医師が出す必要があります。書類の名称と役割を混同しないようにしましょう。
イメージで整理|誰が、どの書類で、誰に指示を伝えるか
| パターン | 主治医(別医療機関) | 事業所医師 | PT/OT/ST |
|---|---|---|---|
| 原則(減算なし) | 関与なし〜情報提供 | 直接診察+指示 | 事業所医師の指示で実施 |
| 計画診療未実施減算 | 診療情報提供書を交付 | 情報提供をもとに指示 | 事業所医師の指示で実施 |

主治医の診療情報提供書がそろっていれば、事業所医師は会わなくてもいいんですか?

「会わない」のではなく、「直接の診療を行っていない代わりに減算で運用する」という整理だよ。利用者の状態が変わったらリスクが大きいから、事業所医師の研修要件や、主治医診療から3か月という期限が設けられているんだ。
訪問リハの指示書に書くべき項目と有効期間
事業所オリジナルの指示書を作成する場合でも、最低限おさえておきたい項目があります。書式は自由でも、要素を漏らさず網羅しておけば、運営指導でも他職種連携でも困りません。
指示書に最低限載せたい項目
- 事業所名、医師氏名・記名押印(または署名)
- 利用者氏名、生年月日、要介護度・要支援度
- 主たる疾患名、現病歴・既往歴の要点
- 訪問リハの目的(生活上のゴール)と必要性
- リハの提供頻度(週○回、1回○分)と期間
- リハ実施上の留意事項・禁忌・リスク管理
- 診療日と指示日
- 指示の有効期間(原則3か月以内)
有効期間の考え方|「3か月ルール」と再診察
訪問リハの指示は、事業所医師の診療日から3か月以内に提供されたリハに対して有効と考えるのが基本です。これは、計画診療未実施減算における「主治医の診療日から3か月以内」のルールと考え方が共通しています。3か月を超える場合は、再度事業所医師の診察または情報提供を受け、指示を更新する必要があります。
3か月の起算日は「医師の診療日」であり、計画書の作成日や指示書を発行した日ではない点に注意が必要です。訪問リハビリは3か月に1回の医師受診が必要?の記事もあわせて確認しておくと、診療頻度と指示書の更新タイミングをより正確に管理できます。
「指示書を更新したから大丈夫」と思っていても、ベースとなる事業所医師の診療日が3か月を過ぎていたら算定要件を満たしません。指示書の日付ではなく、診療日を起点に管理しましょう。
記入例|訪問リハ指示書の最低限の書きぶり
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 診療日 | 令和8年5月20日 |
| 指示日 | 令和8年5月20日 |
| 有効期間 | 令和8年5月20日〜令和8年8月19日(3か月以内) |
| 疾患名・要介護度 | 脳梗塞後遺症(右片麻痺)、要介護2 |
| リハ目的 | 屋内移動の自立、トイレ動作の安定、家事動作の再獲得 |
| 提供内容・頻度 | 関節可動域訓練、立位・歩行練習、ADL訓練/週2回×20分 |
| リスク管理 | 血圧変動に留意、めまい・ふらつき出現時は中止連絡 |
| 担当職種 | 理学療法士(OT・STの介入は別途指示) |
現場で迷いやすいケースとPT・OT・ST向けの対処法
制度の建付けは分かっても、現場ではグレーに見えるケースが必ず出てきます。ここでは、PT・OT・STが実際に出会いやすいシーンを取り上げ、どう動けばよいかを整理します。
ケース1|主治医が他院で、事業所医師が利用者を診察できない
もっとも多いパターンです。この場合は、訪問リハ計画診療未実施減算を前提に運用します。主治医から診療情報提供書をもらい、事業所医師がそれを材料に指示を出す形です。減算は発生しますが、「指示書を勝手に主治医に書いてもらう」運用よりはるかに安全です。
ケース2|緊急で頻回訪問が必要になった
急性増悪などで一時的に頻回の訪問リハが必要になった場合は、事業所医師が「計画的な医学的管理の下、頻回の訪問リハを行う旨」を改めて指示する必要があります。訪問リハの2時間ルールや1日あたりの単位数とあわせて、頻度の根拠を残しておきましょう。
ケース3|訪問看護のリハと訪問リハを併用したい
訪問看護ステーションからのリハと、訪問リハ事業所からのリハは制度上併用可能ですが、それぞれ別の医師が指示を出します。書類の出元・指示の出し方を混同せず、「主治医→訪問看護指示書→訪問看護ステーション」「事業所医師→訪問リハ指示書→事業所のPT/OT/ST」と頭の中で分けて整理しておくとミスが減ります。
ケース4|利用者の希望でリハの方向性が変わった
「歩行訓練中心から、家事動作中心に切り替えたい」など、リハの内容が大きく変わるときは、PT・OT・STの判断だけで方針転換せず、必ず事業所医師に相談しましょう。指示書または計画書を更新し、変更日を記録しておくのが安全です。

方向性の変更って、毎回医師に相談するんですか?けっこう頻繁にあるんですけど…。

細かな運動内容の変更ならカルテで共有でOKだけど、「目標自体の変更」は医師の指示の見直しが必要だよ。線引きを事業所内のルールとして決めておくと迷わないよ。
PT・OT・STが現場で意識したい3つの動き
- 指示の出元を常に確認する訪問前に、誰の指示で動いているのかをカルテで確認。事業所医師の診療日・指示日が3か月以内かもチェック。
- 主治医とは「情報共有」、事業所医師とは「指示確認」同じ「先生」でも役割が違うことを意識して、連絡や依頼の言葉を使い分ける。
- 指示外の対応が必要なときは即時相談新規の症状・転倒・服薬変更などはその場で完結させず、事業所医師に確認してから判断する。
よくある質問(訪問リハの指示書FAQ)
主治医が訪問リハの指示書を書いてくれている場合、どうすればいい?
主治医からの書類は、訪問リハの「指示書」ではなく「診療情報提供書」として位置づけ、事業所医師がそれをもとに改めて指示を出すのが正しい運用です。書類のタイトル変更や、事業所医師の指示記録の追加で対応しましょう。
事業所医師が常勤でない場合でも指示は出せる?
常勤・非常勤の別を問わず、訪問リハ事業所として届け出ている医師であれば指示を出せます。ただし、診察・指示・記録の流れに無理がない体制であるかは要確認です。
指示書の有効期間が切れたまま訪問してしまった場合は?
有効期間外のリハは原則として算定要件を満たしません。すぐに事業所医師の診察または情報提供を受け、指示を更新したうえで、過去分の取り扱いは事業所内で記録を整理し、保険者に相談する必要が出る場合もあります。
計画書の中に指示を書く方法と、別に指示書を作る方法、どちらがおすすめ?
運営指導で説明しやすいのは「別に指示書を作る方法」です。一方で、書類の重複を減らしたい事業所では「計画書内記載」も実用的です。どちらを選んでも、診療日・指示日・指示内容・医師署名が明確であれば問題ありません。
パーキンソン病など特定疾患の場合、指示書のルールは変わる?
疾患によって医療保険と介護保険の使い分けが変わることはあっても、「事業所医師が指示を出す」という基本構造は同じです。パーキンソン病の訪問リハは介護保険?医療保険?もあわせて参考にしてください。
指示書の保存期間はどれくらい?
介護保険サービスの記録は、原則としてサービス提供日から2年間(自治体によっては5年など)の保存が求められます。指示書も計画書と同じ扱いで保管するのが安全です。
まとめ|「事業所医師の指示」を主役に据えれば指示書問題は解決する
訪問リハビリの指示書まわりは、書式の自由度が高いぶん、解釈が分かれて現場が混乱しがちな領域です。しかし、制度の本質は1つで、「事業所の医師が、計画的な医学的管理のもとで指示を出している」ことに尽きます。これさえブレなければ、書式の違いや、主治医とのやり取りの幅広さにも落ち着いて対応できます。
- 訪問リハビリの指示は「事業所の医師」が出す。主治医ではない
- 「指示書」という様式は必須ではないが、指示の記録は必須
- 主治医からの書類は原則「診療情報提供書」と整理する
- 計画診療未実施減算は1回50単位減算で、主治医診療日から3か月以内
- 指示の有効期間は事業所医師の診療日から3か月以内が基本
- 訪問看護からのリハとは指示ルートが異なるので混同しない
明日からは、書類の名前ではなく「誰が指示を出しているか」「その記録があるか」を物差しに運用を整えていきましょう。それだけで、運営指導も他職種連携も、ぐっとスムーズになるはずです。
