訪問リハビリは1回80分・100分・120分でも算定できる?PT/OT/STが知るべき時間ルール完全解説

「訪問リハビリって、1回40分や60分が普通だけど、80分・100分・120分みたいな長時間訪問って算定していいの?」——現場のPT・OT・STなら、外出練習や買い物練習、入浴の動作練習を計画したときに一度はぶつかる疑問ではないでしょうか。
結論からいえば、介護保険の訪問リハビリは週単位の回数制限さえ守れば、1回80分・100分・120分の長時間訪問でも算定できます。この記事ではその制度的な根拠と、ケアプラン・リハビリテーション計画書での書き方、長時間訪問が向くケースと注意点まで、現場で迷わず判断できるレベルで整理します。
- 訪問リハビリは1回80分・100分・120分でも算定できる制度的根拠
- 「20分1単位」と週6回(退院後3か月以内は週12回)のルール
- 1日に分割訪問・連続訪問する場合の算定の考え方
- 長時間訪問が向くケースとケアプランでの記載のコツ
- 介護保険と医療保険の訪問リハビリの時間ルールの違い
結論|訪問リハビリは1回80分・100分・120分でも算定できる
まず最初に結論をお伝えします。介護保険の訪問リハビリテーションは、1回あたりの訪問時間の上限が制度上定められていません。そのため、利用者の状態とリハビリ計画上の必要性があれば、1回80分・100分・120分といった長時間訪問も算定可能です。
理由はシンプルで、訪問リハビリは「1回」ではなく「20分を1単位」として算定する仕組みだからです。1日にいくつの単位を提供してもよく、上限は「1週間あたりの単位数」で管理されています。たとえば1回80分なら4単位、100分なら5単位、120分なら6単位として算定し、その合計が週の上限内に収まっていれば問題ありません。

えっ、1回の上限って決まってないんですか?てっきり「1回60分まで」みたいなルールがあると思っていました…。

多くのステーションが慣習的に40分・60分で運用しているだけで、制度として1回の上限はないんだよ。ただし「週の回数」と「ケアプラン上の位置づけ」は厳格だから、そこは押さえておこう。
訪問リハビリは「1単位=20分以上」「1日に複数単位OK」「上限は週単位で管理」。1回あたりの時間上限はそもそも存在しないのがポイント。
なぜ可能?訪問リハビリの「20分1単位」と週単位の回数ルール
長時間訪問が算定できる根拠を理解するには、訪問リハビリの単位数の数え方を押さえる必要があります。
基本は「20分以上=1単位」
介護保険の訪問リハビリは、1回の訪問が20分以上であれば1単位として算定します。40分なら2単位、60分なら3単位、80分なら4単位…と20分刻みで増えていく考え方です。これは指定居宅サービス等の人員、設備及び運営に関する基準等を定める厚生労働省告示で定められた基本構造です。
週あたりの単位数には上限がある
1日の上限はありませんが、週単位では上限が決まっています。整理すると次のとおりです。
| 対象者 | 週の上限 | 時間換算 |
|---|---|---|
| 通常の利用者 | 6単位/週 | 最大120分/週 |
| 退院・退所日から起算して3か月以内の利用者 | 12単位/週 | 最大240分/週 |
| 要支援(介護予防訪問リハビリ) | 6単位/週 ※退院・退所3か月以内は12単位/週 | 最大120分/週 (最大240分/週) |
つまり、退院・退所から3か月以内の利用者であれば、理論上は「1回240分(4時間)」の訪問1回で1週間ぶんすべてを使い切るということも制度上は可能になります。
「制度上可能」と「現実的に妥当」は別の話です。実際には利用者の体力・負担、区分支給限度基準額、ケアマネジメントの方針との整合を踏まえて、適切な分割訪問を組むのが一般的です。
1日に複数回(連続)訪問できる?厚労省Q&Aで確認
「では、1日のうちに連続して80分や120分のリハビリを提供してもよいのか?」——この疑問には、厚生労働省のQ&Aが明確に答えています。
要約すると次のような内容です。
ケアプラン上、複数回のサービス提供を連続して行うこととされていれば、各サービスが20分以上である限り、連続していてもケアプランの位置づけ通りに複数回算定して差し支えない。ただし訪問リハビリテーションは1週間に6回(退院・退所後3か月以内は12回)を限度として算定することに注意する。
(出典:WAM NET 介護サービス関係Q&A/訪問リハビリテーション)
つまり、1回の訪問で80分・100分・120分を連続して提供することも、午前と午後で40分ずつ分けることも、どちらも算定可能ということです。重要なのは「各単位が20分以上であること」と「ケアプランに必要性が明記されていること」の2点です。

じゃあ「午前40分・午後40分」みたいな分割訪問もアリってことですね。

そう。入浴前後でリハを分けたいとか、朝の起立練習と夕方のトイレ動作練習を別に見たいといった場面でも有効だよ。ただしどちらも「ケアプラン上の位置づけ」が前提だから、ケアマネとの事前すり合わせは必須。
1回80分以上の長時間訪問が向くケース
では、PT・OT・STの目線で、どんな場面で長時間訪問が有効になるのでしょうか。代表的なケースを整理します。
- 公共交通機関(バス・電車)の利用練習
- 外出練習・買い物練習・通院動作練習
- 入浴動作の評価・練習(訪問看護や訪問介護との連携場面を含む)
- 家事動作(調理・洗濯・掃除)のADL/IADL練習
- 屋外の段差・坂道・横断歩道など環境因子への対応練習
- 退院直後で集中的にリハビリ介入が必要な時期
これらは、いずれも40〜60分では「移動」「準備」「片付け」を含めると十分な評価・練習時間が確保できない場面です。とくに公共交通機関の利用練習は、行き帰りで最低でも60〜90分は見込むのが現実的でしょう。
外出練習は「活動・参加」を重視する近年のリハビリ方針とも合致するアプローチです。ただし長時間屋外活動は転倒・熱中症・低血糖などのリスクも増えるため、事前のリスク評価とご家族・主治医との情報共有を徹底しましょう。
ケアプラン・リハ計画書での「長時間訪問の必要性」の書き方
制度上は問題なくても、ケアプランと訪問リハビリテーション計画書に必要性が記載されていなければ請求は通らないと考えてください。記載のポイントは次の3つです。
- 短時間訪問では達成困難な目標を明示する「40分の訪問内では達成が難しい外出練習・公共交通機関利用などを目標とする」など、長時間が必要な理由を目標欄に書く。
- 環境因子・移動範囲を評価結果に書く自宅周辺の坂道、最寄りのバス停までの距離、通院先までの動線など、空間的・時間的な広がりを評価結果として明記する。
- 提供方法(連続/分割)と1回あたりの単位数を計画書に書く「週2回、1回80分(4単位)」「週1回、午前40分・午後40分の分割訪問」など、提供形態まで具体的に書く。
記入例:長時間訪問の必要性(リハビリテーション計画書)
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 本人・家族の意向 | 「自分でバスに乗って通院できるようになりたい」(本人)。「外出機会を増やしてあげたい」(家族)。 |
| 長期目標 | 3か月後、最寄りのバス停まで歩行し、路線バスで○○病院まで単独通院ができる。 |
| 短期目標 | 1か月後、屋外歩行500mを休憩1回で完遂できる。バス乗降の一連動作を口頭指示なしで実施できる。 |
| リハビリ内容と提供時間 | 週2回、1回80分(4単位)。屋外歩行20分→バス停までの移動と乗降練習40分→自宅帰宅後の振り返り20分の構成で実施。 |
| 長時間訪問が必要な理由 | 外出練習・公共交通機関の利用練習は移動・実動作・振り返りを含めると40分の訪問では完結しないため、80分の長時間訪問が必要。 |

運営指導(実地指導)でいちばん見られるのは「計画書の目標と提供時間がリンクしているか」。長時間訪問を入れるなら、目標欄から逆算して書くのがコツだよ。
長時間訪問の落とし穴と注意点
算定上は可能でも、現場運用ではいくつかの落とし穴があります。事前に押さえておきましょう。
利用者の体力・疲労リスク
高齢者にとって80分・120分のリハビリは想像以上に負担です。バイタル変動・血糖変動・脱水に常に注意し、休憩を計画的に組み込みましょう。とくに外出練習では、当日の体調次第で内容を縮小する判断基準をあらかじめ家族と共有しておくのが安全です。
区分支給限度基準額の圧迫
訪問リハビリの単位数は区分支給限度基準額に含まれます。長時間訪問を組むと他のサービス(訪問介護・通所介護など)の利用枠を圧迫する可能性があり、ケアマネジメントの観点でも事前調整が不可欠です。
「2時間ルール」との混同に注意
訪問介護には「同一日に概ね2時間未満の間隔で次の訪問介護を行った場合は所要時間を合算する」という「2時間ルール」が存在します。訪問リハビリにはこのルールは適用されませんが、ケアマネや他職種から誤解されることがあるため、現場で説明できるようにしておきましょう(詳細は記事末尾の関連記事を参照)。
運営指導での記録チェック
長時間訪問を行った場合、運営指導(旧・実地指導)でサービス提供記録の時刻と内容の整合性を厳しく見られます。「80分の訪問なのに記録が10行しかない」といった状態にならないよう、提供内容を時系列で残しましょう。
医療保険の訪問リハビリは時間ルールが違う
ここまで介護保険の話を中心にしてきましたが、医療保険の訪問リハビリ(在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料など)は時間ルールが異なります。混同しやすい部分なので押さえておきましょう。
| 項目 | 介護保険の訪問リハビリ | 医療保険の訪問リハビリ |
|---|---|---|
| 1単位 | 20分以上 | 20分 |
| 1日の上限 | 上限なし(週上限内) | 原則3単位(60分)まで |
| 1週の上限 | 6単位(退院・退所3か月以内は12単位) | 原則6単位/週 ※厚生労働大臣が定める疾病等・状態の場合は12単位/週まで |
| 長時間訪問の柔軟性 | 高い(最大240分/週) | 低い(1日3単位=60分が原則) |
医療保険の訪問リハビリは、介護保険に比べて1日あたりの時間がよりタイトに管理されているのが特徴です。同じ「訪問リハビリ」でも保険の種別で運用ルールが大きく違う点に注意してください。

同じ訪問リハでもこんなに違うんですね…。担当患者さんが介護保険か医療保険かで考え方を切り替えないと。

そう、ここは混同しやすいポイント。「介護保険=週単位で管理/医療保険=1日単位で管理」とざっくり覚えておくといいよ。
よくある質問(FAQ)
1回240分という長時間訪問の根拠は何ですか?
介護保険の訪問リハビリは「20分1単位」で、退院・退所後3か月以内であれば週12単位まで算定できます。週12単位=240分なので、1週間ぶんを1回でまとめて提供することも理論上は可能、というのが240分の根拠です。ただし利用者の負担を考えると現実的には分割するのが一般的です。
訪問看護ステーションから派遣されるリハ職(看護みなし)も同じ時間ルールですか?
訪問看護ステーションのPT・OT・STによる訪問は「訪問看護」として算定されるため、訪問リハビリテーションとは別の算定区分です。1単位は20分で、看護職と合算した週の上限管理など別ルールが適用されます。本記事の内容は「指定訪問リハビリテーション事業所(病院・診療所・老健・介護医療院から派遣)」のルールである点にご注意ください。
同一日に午前と午後で分割訪問すると、訪問介護の「2時間ルール」のように合算されますか?
訪問リハビリテーションには訪問介護のような「2時間ルール」は適用されません。ケアプランに位置づけられ、各回が20分以上であれば、午前と午後に分けて算定することが可能です。詳細は関連記事の「訪問リハビリには2時間ルールがあるのか?」を参照してください。
利用者の体調が悪く、計画より短く切り上げた場合はどう算定しますか?
実際に提供した時間で単位数を算定します。1単位(20分)に満たない場合は算定できません。たとえば計画では80分(4単位)の予定でも、実施が55分(2単位)で終了した場合は2単位での算定となります。記録には短縮の理由(バイタル変動・体調不良など)を必ず残しましょう。
長時間訪問を新たに始める場合、リハビリ計画書の再作成は必要ですか?
はい。訪問時間や訪問頻度を変更する場合は、訪問リハビリテーション計画書の更新と、利用者・家族への説明・同意が必要です。ケアマネジャーとの調整、ケアプランの変更も伴うため、運用面では1〜2週間の余裕をもって準備するのが安全です。
まとめ|時間ルールを正しく理解して、利用者に必要なリハビリを届けよう
訪問リハビリの「1回の時間」は、思っているよりもずっと柔軟に設計できます。重要なのは、制度の範囲内でいかに利用者の目標達成につなげる組み立てができるか、という視点です。
- 介護保険の訪問リハビリは1回80分・100分・120分でも算定可能(1日の上限なし)
- 「20分1単位」で、週6単位(退院・退所後3か月以内は週12単位)が上限
- ケアプランに位置づけられ各単位が20分以上であれば、連続訪問も分割訪問も算定OK
- 長時間訪問は外出練習・公共交通機関利用練習・入浴練習などで有効
- 体力面・支給限度額・運営指導の記録チェックには細心の注意を
- 医療保険の訪問リハビリは原則1日3単位(60分)まで。介護保険とルールが異なる
1回の訪問時間は「慣習」ではなく「目標達成に必要な時間」で設計する——これが本記事の最も伝えたいメッセージです。PT・OT・STとして、目の前の利用者にいま本当に必要な提供時間は何分なのか、計画書を開いて改めて見直してみてください。
