理学療法士は訪問リハビリを開業できる?起業の現実と5つの方法

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理学療法士として独立して訪問リハビリで開業したい」――現場で経験を積むほど、そんな思いが芽生える人は少なくありません。利用者と一対一で深く関われる訪問リハは、PTが持つ専門性を最も発揮しやすい領域のひとつだからです。

しかし結論からお伝えすると、理学療法士が単独で介護保険の「訪問リハビリテーション」を開業することは制度上できません。とはいえ、「実質的に訪問リハを提供する」「PTの強みを活かして起業する」道は複数あります。本記事では現役PT・OT・STに向けて、制度の根拠と現実的な5つの起業方法を整理しました。

この記事でわかること
  • 理学療法士が訪問リハビリ(介護保険)を単独開業できない理由
  • 厚生労働省が定める母体施設・人員基準の具体的な中身
  • PTが「実質的に訪問リハを提供」できる2つのルート
  • 医療・介護分野での起業の選択肢(通所介護・訪問介護など)
  • 開業前にリハ職が必ず押さえておきたい5つの準備ステップ
新人PT
新人PT

「訪問リハって儲かるって聞いたから、いつか独立したいんです。理学療法士でも開業できますよね?」

ベテランPT
ベテランPT

気持ちはわかるよ。でも介護保険の「訪問リハビリテーション」はPT単独では開業できないんだ。まずは制度のしくみを正しく押さえよう。そのうえで、PTが現実的に取れる起業の選択肢を一緒に見ていこうね。

目次

結論|理学療法士は介護保険の訪問リハビリを単独で開業できない

多くのPTが見落としがちですが、介護保険の「訪問リハビリテーション」は医師が在籍する施設の付帯サービスとして運営される事業です。PT・OT・STだけで事業所を立ち上げて指定を受けることはできません。

理由は、訪問リハビリの「指定基準」が母体施設を限定し、なおかつ医師の関与を必須としているからです。まずはこの仕組みを正確に押さえましょう。

訪問リハビリの母体になれる施設は3種類だけ

厚生労働省の指定基準では、介護保険の訪問リハビリテーションの母体施設は次の3つに限定されています。

母体施設必要な人員(抜粋)特徴
病院・診療所医師、PT・OT・ST医療法上の許可施設。最も多いパターン
介護老人保健施設(老健)医師、PT・OT・ST在宅復帰機能を持つ介護保険施設
介護医療院医師、PT・OT・ST長期療養+生活機能維持を担う施設

つまり訪問リハビリを開業するには、まずこの3施設のいずれかを保有・運営している必要があるということです。PT個人が事業所として指定を受ける、という入口自体が制度上存在しません。

なぜ医師が必須なのか|訪問リハ指定基準の根拠

訪問リハビリは「医師の指示」のもとで提供されるリハビリテーションサービスです。指定基準上、利用者ごとに作成する訪問リハビリテーション計画には医師の診療に基づく指示・包括的指示が必須であり、3か月ごと(原則)の医師受診も求められます。

そのため、母体施設には常勤医師が配置されている必要があり、PTが事業所オーナーになる場合も「医師を雇用するか、自身が医師として開業する」必要が出てきます。現実的には、PTが個人で医師を雇用して訪問リハビリを立ち上げるのはハードルが非常に高いと言えるでしょう。

注意

「PTで起業した知り合いがいる」という話の多くは、後述する訪問看護ステーション自費リハビリのかたちです。介護保険の訪問リハビリテーション事業所をPTが単独で立ち上げたケースではない点に注意しましょう。

理学療法士が「実質的に訪問リハ」を実現する2つの方法

介護保険の訪問リハビリそのものを開業できなくても、「自宅でリハビリを提供する」という事業形態は実現可能です。代表的なのが次の2つです。

方法1|訪問看護ステーションを開業し「訪看からのリハビリ」を提供

もっとも現実的なのが訪問看護ステーション(訪問看護STに併設するリハ提供)を立ち上げる方法です。指定基準上、訪問看護STは次の人員配置で開設できます。

人員基準のポイント

看護職員(保健師・看護師・准看護師)を常勤換算で2.5人以上配置し、そのうち1人は常勤であること。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は実情に応じた適当数を配置できる。

つまり、PTがオーナーとなって看護師を常勤換算2.5人以上雇い入れることができれば、訪問看護STとして開業可能です。事業所からPT・OT・STが利用者宅を訪問してリハビリを提供する形は、利用者・ケアマネからは「訪問看護からのリハビリ」と呼ばれます。

新人PT
新人PT

看護師さんを2.5人雇うって、結構ハードル高そう…。

ベテランPT
ベテランPT

そうだね。最低でも常勤2人+非常勤1人くらいの構成は必要だよ。ただ、PT・OT・ST中心の訪問看護STは全国的にも増えていて、リハ職主導の経営は不可能じゃない。看護師さんと信頼関係を作れるかが鍵だね。

方法2|自費(保険外)訪問リハビリ・出張整体として開業

介護保険・医療保険を一切使わない自費の訪問リハビリであれば、PT個人でもすぐに開業可能です。料金は事業者が自由に設定でき、利用者から直接対価を受け取ります。

項目自費訪問リハの特徴
開業のしやすさ指定基準・行政許可なし。個人事業主として届出のみで可能
対象保険適用外の人/回数制限を超えた人/自由度を求める人
料金相場30分5,000円〜/60分8,000〜15,000円が中心レンジ
注意点「医業類似行為」と誤解されない範囲で、リハビリの内容を明確化することが重要

保険外なので、「リハビリ」と謳う場合は医療行為と混同されないよう表現に注意が必要です。柔道整復・あん摩マッサージ等の国家資格を併せ持つと、訴求の幅が広がります。

注意

自費リハビリは集客と単価設計が経営の生命線です。介護保険でリハを受けられない層(要介護認定を受けていない人、回数制限を超えた人、スポーツ復帰目的の人など)にどう届けるか、開業前にマーケティング戦略を固めましょう。

医療・介護で起業する4つの事業形態

「訪問リハ」にこだわらず医療・介護分野で起業するなら、選択肢はさらに広がります。いずれも有資格者の雇用と人員基準を満たす必要がある点は共通です。

① 通所介護(デイサービス)を立ち上げる

機能訓練特化型デイは、PT・OT・STの専門性を打ち出しやすい代表的な事業形態です。地域密着型デイ(定員18名以下)であれば初期投資を抑えやすく、リハビリに特化した小規模デイとして開業するケースが増えています。

② 訪問介護を立ち上げる

サービス提供責任者の要件を満たす介護福祉士・実務者研修修了者・初任者研修修了者などの配置が必要です。PTが介護職員初任者研修・実務者研修を取得して経営者になるパターンもあります。生活援助・身体介護が中心になるため、リハ職としての強みは「自立支援のアセスメント」に集約されます。

③ グループホーム(認知症対応型共同生活介護)を立ち上げる

地域密着型サービスのひとつで、定員9名×最大3ユニットで運営します。PT・OT・STの配置義務はありませんが、リハ職オーナーが運営することで「機能訓練に強いグループホーム」として差別化が図れます。

④ 居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)を立ち上げる

主任介護支援専門員の資格を取得すれば、居宅介護支援事業所の管理者として開業できます。PTのアセスメント力はケアプラン作成に直結する強みです。

POINT

いずれの事業も人員基準・設備基準・運営基準を満たして都道府県/市町村の指定を受ける必要があります。指定申請には数か月かかるため、開業予定日から逆算してスケジュールを組みましょう。

医療・介護以外で活かす起業の道

PTの強みは「身体機能・運動・栄養・生活動作に関するアセスメント」です。医療介護の枠を外しても、活躍できるフィールドは広がっています。

フィットネスジム/パーソナルトレーニングジム

近年は「医療資格を持つトレーナー」への信頼が高まっており、PT・OT監修のパーソナルジムは差別化しやすい業態です。慢性腰痛・膝痛など整形外科的トラブルを抱える層に強くアプローチできます。

コンサルティング/Web制作/メディア運営

訪問リハや介護事業者向けに「採用支援」「運営指導対策」「広報・SEO・ホームページ制作」などを提供するコンサル業も選択肢のひとつです。PTで蓄えた現場知見は、事業者の課題解決に直結します。

講師業・書籍・オンライン教材

YouTube・note・Voicy・電子書籍などを使えば、PT個人がメディア発信から収益化まで一気通貫で行えます。臨床経験を発信する「セカンドキャリア」として人気が高まっています。

新人PT
新人PT

「訪問リハで開業=介護保険の訪問リハ事業所」ってイメージでしたが、選択肢ってこんなにあるんですね。

ベテランPT
ベテランPT

そうだよ。「制度上の訪問リハ」と「リハビリを提供する事業」は別物。後者の選択肢はかなり広いから、自分が何を実現したいかから逆算するのが大事だね。

開業前にリハ職が押さえる5つの準備ステップ

どのルートで起業するにしても、開業前に押さえておきたい準備があります。順番に確認していきましょう。

  1. 事業計画とコンセプトを言語化する誰に・何を・どんな価値で届けるかを1枚にまとめます。「訪問リハの代替」なのか「自費の高付加価値リハ」なのか、軸を決めることが最初の一歩です。
  2. 制度・法令・指定基準を確認する開業予定の事業類型ごとに、指定基準(人員・設備・運営)を必ず一次情報で確認しましょう。都道府県の介護保険担当課への事前相談は必須です。
  3. 資金計画と融資の準備を進める日本政策金融公庫の新規開業融資、自治体の制度融資などが定番です。3〜6か月分の運転資金+設備投資費を見込んでおきましょう。
  4. 人員確保と労務体制を整える看護師・介護福祉士・事務スタッフなど必要な人員の採用に時間を確保します。社労士と契約して労務トラブルを未然に防ぐと安心です。
  5. 営業ルートと広報を仕込む居宅介護支援事業所・地域包括支援センター・医療機関への営業、自社サイトとSNSによる情報発信を開業前から並行して進めましょう。
POINT

制度系の事業は「指定申請の受理→指定日」までに通常2〜3か月のタイムラグがあります。逆算して人材確保・物件契約・備品準備を進めないと、開業がずれ込みキャッシュフローが圧迫されます。

よくある質問(FAQ)

理学療法士が一人で訪問リハビリを開業する方法は本当にないのですか?

介護保険の訪問リハビリテーションを「PT一人だけ」で開業することは制度上できません。母体施設(病院・診療所・老健・介護医療院)と医師の関与が必須だからです。ただし、自費の訪問リハビリ・出張整体であれば、PT個人でも事業を始められます。

訪問看護ステーションを開業すれば訪問リハと同じことができますか?

制度上は「訪問看護からのリハビリ」として位置づけられ、訪問リハビリテーションとは別サービスです。ただし利用者の自宅でPT・OT・STがリハビリを提供する点は共通しています。算定単位や指示書、計画書の様式が異なるため、事前に厚労省の通知や自治体の運営の手引きで確認しましょう。

自費訪問リハビリの料金はどのくらいが相場ですか?

事業者によって幅がありますが、60分8,000〜15,000円程度が中心レンジです。地域や提供内容(理学療法/パーソナルトレーニング/在宅環境調整など)によって異なります。経費・移動時間も含めて単価設計しましょう。

開業資金はいくらくらい必要ですか?

事業形態によって大きく異なります。自費訪問リハ単独なら100万円前後から始められますが、訪問看護ステーションは500万〜1,000万円、通所介護は1,000万〜2,000万円程度が目安です。日本政策金融公庫の創業融資の活用が一般的です。

勤務しながら起業準備を進められますか?

可能です。むしろ収入を確保しながら準備するほうが資金的にも精神的にも安全です。事業計画作成、人脈づくり、副業としての自費リハ実践、SNS発信などは在職中から並行して進めるのがおすすめです。

まとめ|PTは「訪問リハ単独開業」より「実現したい姿」から逆算しよう

理学療法士が介護保険の訪問リハビリテーションを単独で開業することは、現行制度上できません。一方で「在宅でリハビリを提供したい」「自分の専門性で起業したい」という願いを叶える道は複数あります。

この記事のまとめ
  • 介護保険の訪問リハビリテーションは病院・診療所・老健・介護医療院が母体で、医師の関与が必須
  • PTが実質的に訪問リハを実現するなら「訪問看護ステーション開業」または「自費訪問リハ」が現実的
  • 医療介護分野では通所介護・訪問介護・グループホーム・居宅介護支援も選択肢になる
  • 医療介護以外でもパーソナルジム・コンサル・メディア運営などPTの強みを活かせる
  • 開業前は「事業計画→制度確認→資金→人員→営業」の5ステップを抜けなく準備する

「制度上の開業可否」だけにとらわれず、自分が何を実現したいのかを起点に進む道を選びましょう。理学療法士という資格は、想像以上にキャリアの選択肢を広げてくれます。

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