認知症ケア専門士は意味ない?リハ職が取るメリットと判断軸

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認知症ケア専門士は「意味ない」と言われることがあります。理由ははっきりしていて、民間資格のため介護報酬の加算の要件にならず、資格手当も職場しだいだからです。一方で、訪問リハ・通所リハの利用者には認知症のある人が多く、学んだ内容は毎日の関わり方にそのまま使えます。
この記事では、PT・OT・STなどのリハ職の目線で、認知症ケア専門士が「意味ない」と言われる理由と、それでも取る価値がある人・ない人の判断軸を整理します。受験資格・試験の流れ・更新の負担も、日本認知症ケア学会の公表内容をもとにまとめました。
- 認知症ケア専門士とはどんな資格か(受験資格・試験・更新)
- 「意味ない」と言われる4つの理由と実態
- リハ職が取るメリットと、現場での活かし方
- 取るべき人・見送ってよい人の判断軸
- 認知症専門ケア加算との関係(要件にならない理由)
- 認知症の理解を深めるおすすめの本
結論:認知症ケア専門士は「意味ない」資格ではないが、目的しだい
先に結論をまとめます。認知症ケア専門士は、取っただけで給料や加算が増える資格ではありません。その意味では「意味ない」と感じる人がいるのは自然です。
ただし、認知症の人への関わり方を体系的に学び直したい人、チームの中で認知症ケアの相談役になりたい人にとっては、学ぶ範囲が広く実務に直結する資格です。「何のために取るのか」を先に決められる人なら、取って後悔しにくい資格といえます。
判断の軸は「お金(手当・加算)」ではなく、①毎日の臨床で使えるか ②職場での役割が広がるか ③更新の負担を続けられるかの3つです。

認知症ケア専門士って、持っていると加算が取れるんですか?

そこがよく誤解されるところだね。介護報酬の加算の要件に入っているのは、自治体が実施・指定する研修だよ。認知症ケア専門士は学会の民間資格だから、加算の要件にはならないんだ。
認知症ケア専門士とは?資格の基本
認知症ケア専門士は、一般社団法人日本認知症ケア学会が認定する民間資格です。認知症ケアの知識・技能・倫理観を備えた人を育てることを目的としていて、5年ごとの更新制になっています。
| 項目 | 内容(第22回・2026年度の公表内容) |
|---|---|
| 認定団体 | 一般社団法人日本認知症ケア学会 |
| 受験資格 | 2016年4月1日〜2026年3月31日の間に、認知症ケアの実務経験が3年以上 |
| 職種・資格 | 問わない(認知症ケアに携わっていれば可。ボランティア・実習は実務経験に含まない) |
| 第1次試験 | Web試験。4分野×50問(五者択一)、各分野70%以上で合格。分野ごとの合格は5年間有効 |
| 第2次試験 | 事例問題に対する論述 |
| 取得後 | 倫理研修(動画視聴)と登録申請を経て認定 |
| 更新 | 5年以内に30単位以上を取得して手続き |
第1次試験の4分野は「認知症ケアの基礎」「認知症ケアの実際Ⅰ:総論」「認知症ケアの実際Ⅱ:各論」「認知症ケアにおける社会資源」です。各論にはBPSD(行動・心理症状)への対応、薬物療法の知識、リハビリテーション、ターミナルケアなどが含まれます。
学会は、受験料の値上げ(第1次試験1分野4,000円・第2次試験9,000円)と第2次試験の方式変更を2027年度に延期すると案内しています。受験料や日程は年度ごとに変わるため、申し込み前に学会の公式サイトで最新の受験の手引きを確認してください。
認知症ケア専門士が「意味ない」と言われる4つの理由
1. 介護報酬の加算の要件にならない
いちばん大きな理由がこれです。施設や訪問介護などの「認知症専門ケア加算」で求められるのは、認知症介護実践リーダー研修などの研修修了者です。厚生労働省のQ&Aでは、この研修は自治体が実施または指定する研修とされています。学会の民間資格である認知症ケア専門士は、これに当たりません。
また、訪問リハビリテーションには、もともと認知症専門ケア加算がありません。訪問リハで認知症に関係する加算は「認知症短期集中リハビリテーション実施加算(240単位/日)」で、これは医師が判断した利用者に退院・退所後などに集中的に行う加算です。資格の有無は要件ではありません。
2. 資格手当は職場しだい
国家資格ではないため、資格手当を出すかどうかは法人の判断です。手当がない職場では「取っても給料は変わらない」と感じやすくなります。
3. 更新の負担がある
5年で30単位の取得が必要です。学会の大会や講座に参加して単位を集める必要があり、費用と時間がかかります。更新しなければ資格は失効するため、取ったあとも負担が続く点は「意味ない」と言われる理由の一つです。
4. 知っている内容と重なる部分がある
PT・OT・STは養成校で認知症の基礎を学んでいます。基礎の分野は「知っている内容の確認」と感じる人もいます。ただし、社会資源やケアの倫理、家族支援などは、リハ職が手薄になりやすい分野です。

加算にならない、手当も職場しだい…。それなら取らなくていい気がしてきました。

お金だけで考えるとそうなるね。でも在宅では、認知症のある利用者さんへの関わり方しだいで、リハの効果も家族の負担も大きく変わる。そこに価値を感じるかどうかだよ。
それでもリハ職が認知症ケア専門士を取るメリット
認知症のある利用者への関わりが変わる
訪問リハや通所リハでは、認知症のある利用者を担当することが珍しくありません。拒否が強い、指示が入らない、自主トレが続かないといった場面で、BPSDの背景を考える視点や、本人の思いを引き出すコミュニケーションを持っているかどうかで、リハの進め方が変わります。
家族支援と社会資源の知識が増える
在宅では、本人だけでなく家族への助言も大事な仕事です。試験範囲の「社会資源」「家族への支援」は、ケアマネジャーや地域包括支援センターとの連携に役立ちます。認知症の相談窓口やインフォーマルな支援を知っていると、家族からの相談にも答えやすくなります。
チーム内の役割が広がる
事業所内の勉強会の講師や、認知症の利用者についての相談役を任されるきっかけになります。管理者やリーダーを目指す人にとっては、学んだ内容をチームに広げる経験がキャリアの材料になります。
転職時に学ぶ姿勢を示せる
手当につながらない職場でも、履歴書や面接で「認知症ケアを体系的に学んだ」ことは伝えられます。特に、認知症のある利用者が多い訪問リハ・通所リハ・老健などでは、関心の高さとして評価されることがあります。
認知症ケア専門士を取るべき人・見送ってよい人
| 取るべき人 | 見送ってよい人 |
|---|---|
| 担当の利用者に認知症のある人が多い | 急性期病院など、認知症の人と長く関わる機会が少ない |
| BPSDや拒否への対応に悩んでいる | 手当や加算などの収入アップが一番の目的 |
| 事業所で認知症ケアの相談役・講師を担いたい | 5年で30単位の更新を続ける余裕がない |
| ケアマネや家族と認知症の話をする機会が多い | 先に専門分野の資格(認定理学療法士など)を優先したい |
迷う場合は、まず学会のテキストや関連書籍を読んで、内容に興味が持てるかを確かめるのがおすすめです。「勉強しておもしろい」と感じられる人は、取ったあとも単位集めを続けやすいからです。
リハ職(PT・OT・ST)が現場で活かすコツ
資格を取ったあと、実際の臨床で活かすためのポイントを職種別にまとめます。
- PT:歩行・移乗の練習で、失敗体験を避ける声かけと段取りを工夫する。転倒リスクを本人の行動パターンから予測する
- OT:できるADLを見つけて役割として生活に組み込む。環境調整で混乱を減らす
- ST:理解しやすい話し方を家族や他職種に伝える。食事場面の注意・集中の問題に対応する
- 共通:リハビリテーション会議やサービス担当者会議で、行動の背景をチームに説明する
- 行動を記録する拒否や混乱が起きた時間・場所・直前の出来事を記録し、パターンを探します。
- 背景を考える痛み・便秘・睡眠不足・環境の変化など、BPSDの背景になりやすい要因を確認します。
- 関わり方を統一する家族・ヘルパー・デイの職員と声かけや手順をそろえ、混乱を減らします。
- 評価して見直す変化を記録し、うまくいった方法をチームで共有します。

資格を取ったら、まず何から始めればいいですか?

担当している認知症の利用者さん1人について、行動の記録と背景の整理をやってみるといい。それをカンファレンスで共有すると、資格で学んだことがチームの力になるよ。
よくある質問
認知症ケア専門士は国家資格ですか?
いいえ。一般社団法人日本認知症ケア学会が認定する民間資格です。5年ごとの更新制です。
理学療法士や作業療法士でも受験できますか?
受験できます。職種や保有資格は問われず、認知症ケアの実務経験が3年以上(2026年度は2016年4月1日〜2026年3月31日の期間で計算)あれば対象です。勤務先が認知症専門である必要もありません。
認知症ケア専門士があれば認知症専門ケア加算を算定できますか?
算定できません。加算の要件は、認知症介護実践リーダー研修など、自治体が実施または指定する研修の修了です。また、訪問リハビリテーションには認知症専門ケア加算自体がありません。
試験は難しいですか?
第1次試験は4分野すべてで70%以上の正答が必要です。分野ごとの合格は5年間有効なので、1年で全分野を合格しなくても計画的に受験できます。リハ職は、社会資源や家族支援の分野を重点的に勉強しておくと安心です。
更新しないとどうなりますか?
5年以内に30単位以上を取得して更新手続きをしないと、資格を失います。取る前に、学会の大会や講座に参加して単位を集められるかを考えておきましょう。
- 認知症ケア専門士は民間資格で、加算の要件にはならない
- 「意味ない」と言われる理由は、加算にならない・手当が職場しだい・更新の負担・内容の重なり
- 認知症の利用者が多い訪問・通所リハでは、関わり方や家族支援に直接役立つ
- 判断軸は「臨床で使えるか」「役割が広がるか」「更新を続けられるか」
- 受験料・日程は年度で変わるため、必ず学会の最新情報を確認する
認知症の理解を深めるおすすめの本
認知症ケア専門士を目指すかどうかに関わらず、まず認知症のある人がどんな世界を体験しているのかを知ることが、関わり方を変える第一歩です。試験の勉強を始める前の入門としても読みやすい1冊を選びました。
認知症世界の歩き方
認知症のある人が実際に見ている世界を、スケッチと旅行記の形式で紹介する本です。
- 記憶をなくす、時間や場所が分からなくなるといった体験を、ご本人の視点から理解できる
- BPSDや拒否の背景を考えるときのヒントになり、訪問リハでの声かけや環境調整に活かせる
- 家族にも読みやすく、利用者の家族に紹介しやすい。Amazonのレビューが1,000件を超える定番書
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」
- 大牟田市「認知症加算・認知症専門ケア加算の研修要件に関する質疑」
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第259回)資料4「訪問リハビリテーション」
※2026年10月時点で確認した情報です。制度は改定されるため、算定・運用の際は最新の通知・Q&Aと指定権者(都道府県・市町村)の案内をご確認ください。

