高齢者の自主トレーニングが大切な理由|続けるコツとおすすめ本

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「リハビリの日以外は、ほとんど動いていない」「自主トレを渡しても続かない」——訪問リハビリや通所リハビリで高齢の利用者を担当していると、リハビリの時間だけでは体力を保ちきれないと感じる場面が多いはずです。週1〜2回のリハビリの効果を生かすには、リハビリのない日に何をするかが大きく関わります。
この記事では、高齢者に自主トレーニングが大切な理由と、続けてもらうための指導のコツを理学療法士の目線で整理します。国の身体活動の目安、安全に行うための注意点、自主トレの指導や資料づくりに役立つ本5冊もあわせて紹介します。
- 高齢者に自主トレーニングが大切な4つの理由
- 国が示す高齢者の身体活動・運動の目安
- 自主トレーニングの種類と、続けてもらう指導のコツ
- 安全に行うための注意点
- 高齢者の自主トレーニングの指導に役立つ本5選
高齢者に自主トレーニングが大切な4つの理由
高齢者に自主トレーニングが大切な理由は、次の4つです。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 1. 身体機能を保つ | 筋力・バランス・関節の動きは、使わないと落ちやすい。リハビリのない日にも体を動かすことで維持しやすくなる |
| 2. リハビリの効果を生活につなげる | リハビリで練習した動作を、普段の生活で繰り返すことで身につく |
| 3. 気持ちの張りや自信につながる | 「今日もできた」という達成感が、意欲や生活のリズムを支える |
| 4. 外出や人との交流を続けやすくなる | 体力が保たれると、散歩や買い物、地域の集まりに出かけやすくなる |
特に大切なのは2つめです。リハビリは週に数十分〜数時間ですが、生活の時間はその何十倍もあります。リハビリの時間だけで体を変えるのは難しく、自主トレーニングと日常の活動が、効果を保つ土台になります。

リハビリの回数を増やせば、自主トレはいらないと思っていました。

介護保険のリハビリは回数に限りがあるし、利用者さんの負担もあるからね。リハビリの時間は「やり方を教えて確認する時間」、ふだんの日は「自分で続ける時間」と考えるとわかりやすいよ。
高齢者の身体活動・運動の目安(身体活動・運動ガイド2023)
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、高齢者について次のような目安が示されています。
| 項目 | 高齢者の推奨事項 |
|---|---|
| 身体活動 | 歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日40分以上(1日約6,000歩以上が目安) |
| 運動 | 有酸素運動・筋力トレーニング・バランス運動・柔軟運動など多要素な運動を週3日以上 |
| 筋力トレーニング | 週2〜3日 |
| 座位行動 | 座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように注意する(立つのが難しい人も、少しでも体を動かす) |
同じガイドでは、全体の方向性として「個人差を踏まえ、強度や量を調整し、可能なものから取り組む」ことが示されています。目安に届かない人も、今より少しでも多く体を動かすことが大切です。
訪問リハビリの利用者には、1日40分の歩行が難しい人も多くいます。その場合は、座ったままの運動や、座っている時間を区切って立つことから始めるなど、本人ができる内容に置きかえて考えましょう。
高齢者の自主トレーニングの種類
ガイドの「多要素な運動」に合わせて、自主トレーニングは次の4つを組み合わせると考えやすくなります。
| 種類 | 自主トレの例 | ねらい |
|---|---|---|
| 筋力トレーニング | 椅子からの立ち座り、かかと上げ、座って膝を伸ばす運動 | 立つ・歩く・階段を上る力を保つ |
| バランス運動 | つかまって片脚立ち、足を前後にそろえて立つ | ふらつきや転倒を防ぐ |
| 有酸素運動 | 散歩、足踏み、座って足を交互に動かす | 体力・持久力を保つ |
| 柔軟運動 | ふくらはぎや太もものストレッチ、肩回し | 関節の動きを保ち、動作を楽にする |
すべてを一度に行う必要はありません。まずは1〜3種目から始め、慣れてきたら増やすほうが続きやすくなります。自宅でできる運動器具は高齢者の運動グッズの記事で紹介しています。
自主トレーニングを続けてもらうための指導のコツ
自主トレーニングは、渡しただけでは続きません。リハ職が指導するときのコツを手順にまとめます。
- 本人の目標と結びつける「孫の結婚式に歩いて出たい」「一人でトイレに行きたい」など、本人の目標とつながる運動を選ぶ
- 種目と回数をしぼる最初は1〜3種目・数分で終わる量にする。多すぎると続かない
- 生活の流れに組み込む「朝食の後」「テレビのCMの間」など、毎日の行動とセットにする
- 絵や写真入りの資料を渡す文字だけでなく、姿勢がわかる図を使い、文字は大きくする
- 記録して、次の訪問で確認するカレンダーに丸をつけてもらい、訪問時に一緒に振り返ってほめる

毎回の訪問で確認するだけで、続けてくれるものですか?

「見てもらえる」と思うと続けやすいんだ。できた日を一緒に数えて、変化を数字で伝えると効果的だよ。家族にも内容を共有しておくと、声をかけてもらえるね。
高齢者が自主トレーニングを安全に行うための注意点
一人で行う自主トレーニングでは、リハビリ中よりも安全への配慮が必要です。
- 立って行う運動は、テーブルや手すりなど、つかまれる物のそばで行う
- 体調が悪い日、痛みが強い日は休む
- 息を止めず、声を出して数えながら行う
- めまい・胸の痛み・息切れが強いときはすぐに中止する
- 持病がある人は、運動の内容を主治医と確認しておく
心臓や血圧の病気がある人、転倒のおそれが高い人は、自主トレーニングでも無理をしないことが大切です。運動を中止する目安はアンダーソン・土肥の基準の記事も参考にしてください。
高齢者の自主トレーニングの指導に役立つ本5選
自主トレーニングの指導や資料づくりに役立つ本を紹介します。指導者向けの本と、利用者さんや家族にすすめやすい本があります。
| 本 | 向いている人 | 特徴 |
|---|---|---|
| DVD付き 高齢者の筋力トレーニング | 指導者・教室運営者 | マシンを使わない筋トレの理論と方法、DVD付き |
| リハビリテーション・ホームエクササイズ | リハ職 | 患者さんに渡せる自主トレ127種、CD-ROM付き |
| パットレ!Pro. | リハ職 | 疾患別の自主トレと、指導書を作るExcelツール |
| 長生き部屋トレ | 利用者さん・家族 | 自宅でできる脚力・バランス・柔軟性・握力の運動 |
| 70・80・90歳の“若返り”筋トレ | 利用者さん・家族 | 高齢者向けの12の筋トレ、ポスター付き |
DVD付き 高齢者の筋力トレーニング 安全に楽しく行うための指導者向け実践ガイド
介護予防の現場で使える、指導者向けの実践テキストです。マシンを使わず、安全で低コストに行える筋力トレーニングの方法を、理論とあわせて紹介しています。筋トレ教室の運営方法にもふれており、「4秒ゆっくり筋トレ」のDVD(約45分)が付いています。通いの場や教室で運動を指導する人に向いています。
リハビリテーション・ホームエクササイズ CD-ROM付
患者さんに渡せる自主トレーニング127種を、写真入りでまとめた本です。疾患に合わせたエクササイズのセットも用意されており、付属のCD-ROMで自主トレの資料を作れるのが特徴です。毎回の資料づくりの手間を減らしたいリハ職に向いています。
Excelで効率化! リハビリテーション自主トレーニング指導パットレ!Pro.
疾患・病態ごとに250種以上の自主トレの内容を学べる本です。自主トレ画像は付属のExcelツール「パットレ!Pro.」に収録されており、利用者さんに合わせて選び、印刷するだけで指導書が作れます。指導の流れやポイントも事例で学べます。
順天堂大学医学部 健康スポーツ室式 長生き部屋トレ
順天堂医院の健康スポーツ室が考案した、自宅でできるトレーニングの本です。「脚力」「バランス力」「柔軟性」「握力」の4つを、レベルに合わせて選べる運動で鍛えます。イスに座る・立つといった、取り組みやすい運動から始められるため、利用者さんや家族にもすすめやすい一冊です。
70・80・90歳の“若返り”筋トレ(別冊NHKきょうの健康)
筑波大学の久野譜也教授の指導による、高齢者が無理なく行える12の筋トレを紹介したムックです。家の中に貼れる「筋トレ」ロングポスターが付いており、毎日目に入る場所に貼って続けてもらう使い方ができます。
訪問リハビリで自主トレ指導に使える道具は訪問リハビリの便利グッズの記事でも紹介しています。
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よくある質問
高齢者の自主トレーニングは毎日行うべきですか?
1日40分も歩けない人はどうすればいいですか?
自主トレーニングが続かない利用者にはどう関わればいいですか?
寝たきりに近い人でも自主トレーニングはできますか?
自主トレーニングの資料はどう作ればいいですか?
- 自主トレーニングは、身体機能を保ち、リハビリの効果を生活につなげるために大切
- 身体活動・運動ガイド2023では、高齢者は1日40分以上の身体活動、多要素な運動を週3日以上、筋トレを週2〜3日が目安
- 目安に届かない人も、個人差に合わせて「可能なものから」取り組む
- 続けてもらうには、目標と結びつけ、種目をしぼり、生活の流れに組み込み、記録を一緒に確認する
- 一人で行うため、つかまれる場所で行う・体調が悪い日は休むなど安全に配慮する

