訪問リハビリの買い物練習|算定ルールと進め方を解説

「また自分でスーパーに行きたい」——訪問リハビリの利用者から、こうした希望を聞くことは少なくありません。買い物は、歩く・持つ・選ぶ・お金を払う・持ち帰るといった多くの動作と判断が組み合わさった活動で、生活の自立と社会とのつながりを取り戻す大きな一歩になります。
一方で、「訪問リハビリで家の外に出てよいの?」「算定はできる?」と迷う人もいるでしょう。この記事では、訪問リハビリで買い物の練習を行う意味と、計画に目的・頻度を記録するという算定上のルール、評価から段階的な進め方、安全管理、ほかのサービスとの役割分担までを解説します。
- 訪問リハビリで買い物の練習を行う意味
- 家の外での練習を算定するためのルール
- 買い物に必要な能力と評価のポイント
- 段階的な練習の進め方と安全管理
- ヘルパーや家族との役割分担
訪問リハビリで買い物の練習を行う意味
厚生労働省は、リハビリテーションについて「心身機能」「活動」「参加」にバランスよく働きかけることを求めています。買い物は、まさに活動と参加をつなぐ代表的な場面です。
| 視点 | 買い物の練習で得られること |
|---|---|
| 心身機能 | 屋外歩行の持久力、バランス、荷物を持つ力、注意力の維持・向上 |
| 活動 | 移動、商品を選ぶ、支払う、持ち帰る、しまうといった一連の動作の自立 |
| 参加 | 家族の食事を用意する役割、店員や近所の人との交流、外出の楽しみ |
審議会資料(令和7年度の調査研究)では、訪問リハビリテーション計画書でIADLの改善を目標にしている割合は、要支援者で約40%、要介護者で約20%にとどまっています。買い物のような生活の目標を立てることは、訪問リハビリの質を高めるうえでも大切な視点です。

買い物の練習って、屋内での運動より効果があるんですか?

目標が本人のやりたいことと直結しているから、意欲が違うね。それに、実際の店でしかわからない課題がたくさんある。屋内の練習とセットで考えるといいよ。
訪問リハビリの買い物練習の算定ルール
訪問リハビリは利用者の居宅で行うサービスですが、運営基準の解釈通知では、居宅からの一連のサービス行為として、買い物やバスなどの公共交通機関への乗り降りなどの訪問リハビリを提供する場合は、訪問リハビリテーション計画にその目的や頻度などを記録することとされています。
| 押さえること | 具体的には |
|---|---|
| 居宅からの一連の行為であること | 自宅を出発点に、店まで行って帰ってくる流れで行う。店で待ち合わせて練習だけ行う形は避ける |
| 計画への記録 | 目的(例:近所のスーパーで週1回の買い物ができる)と頻度を計画に書く |
| 医師の指示 | 屋外での練習を行うことを、医師の指示や計画で確認しておく |
| 本人・家族の同意 | 計画の説明と同意の中で、家の外で練習することを伝える |
| 記録 | 実施した日の記録に、行き先・内容・時間・状態を残す |
自治体によっては、家の外でのサービス提供について独自の考え方を示している場合があります。迷う場合は、事業所の指定権者(都道府県や市)の資料や窓口で確認しましょう。
買い物に必要な能力と評価のポイント
| 段階 | 必要な能力 | 評価のポイント |
|---|---|---|
| 準備 | 必要な物を考える、メモを書く、財布やかばんを用意する | 冷蔵庫の中を確認して買う物を決められるか |
| 移動 | 屋外歩行、段差・坂道・横断歩道、交通機関の利用 | 距離と時間、休憩の必要性、信号を渡りきれるか |
| 店内 | カートやかごの操作、商品を探す・取る、人混みへの対応 | 高い棚・低い棚の物を取れるか、疲れの出方 |
| 支払い | 金額の計算、小銭の扱い、キャッシュレス決済 | レジで慌てずに支払えるか |
| 持ち帰り・片付け | 荷物を持って歩く、冷蔵庫や棚にしまう | 重さの限界、片手がふさがった状態でのバランス |
訪問リハビリで買い物を練習する進め方
- 本人の希望と生活を聞くどの店に、どのくらいの頻度で、何を買いに行きたいかを具体的に聞きます。
- 家の中で基礎を練習する屋外歩行の持久力、荷物を持った歩行、立ったままの作業などを練習します。
- ルートを下見する店までの道の段差、坂、休憩できる場所、横断歩道を確認します。
- 同行して実際に買い物をする最初は少ない品数から始め、本人が自分で行う部分を少しずつ増やします。
- 一人や家族との買い物へ移行する見守りが必要な部分を家族やヘルパーと共有し、最終的には本人だけ、または家族との買い物に移行します。

練習では店の人に迷惑をかけないか心配です。

混む時間を避ける、品数を少なくするなどの工夫をすれば大丈夫。行きつけの店だと、店員さんが声をかけてくれるようになることもあるよ。それも参加の一つだね。
計画書と記録の書き方の例
家の外での練習は、計画書と日々の記録で「なぜ・どのくらい・何をしたか」がわかるようにしておくことが大切です。
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| 長期目標 | 近所のスーパー(自宅から約300m)へ、週1回、杖を使って一人で買い物に行ける |
| 短期目標 | 見守りのもと、スーパーまで休憩1回で往復できる |
| 屋外での練習の目的 | 生活範囲の拡大と、家族の食事の準備という役割の再獲得のため、買い物の一連の動作を実際の店で練習する |
| 頻度 | 週2回の訪問のうち1回(40分)を屋外での練習にあてる |
| 当日の記録 | 10:05出発、休憩1回(ベンチ)、店内でかご使用し3品購入、支払いは自力、帰宅後の血圧・脈拍に問題なし、坂道で歩幅が小さくなる |
「何がうまくいき、どこに課題が残ったか」を記録に残すと、次回の練習内容や、ヘルパー・家族への伝え方が明確になります。
実践例:80代女性「娘に頼らず買い物に行きたい」
大腿骨の骨折で入院し、退院後に訪問リハビリを始めた80代女性の例です(よくある関わりをもとにした架空の例)。
- 開始時:屋内は杖で歩けるが、屋外は娘の付き添いが必要。買い物はすべて娘が代行。
- 1か月目:家の周りで屋外歩行の練習。シルバーカーを試し、荷物を載せて歩く練習を追加。
- 2か月目:スーパーまでのルートを下見し、休憩場所を決める。同行して2〜3品の買い物を練習。
- 3か月目:見守りの距離を少しずつ広げ、最後は一人で往復。計画の見直しで、週1回は一人で、まとめ買いは娘と行く形に変更。
本人は「自分で選んで買えるのがうれしい」と話し、娘の負担も減るという家族全体の変化につながりました。
家の外で練習するときの安全管理
- 出発前にバイタルサインと体調を確認する
- 天候、気温、路面の状態を確認し、危険な日は屋内の練習に切り替える
- 休憩できる場所と、途中で引き返す判断の基準を決めておく
- 携帯電話、緊急連絡先、必要な薬を持っていく
- 交通量の多い道路や横断歩道では、立ち位置を工夫して見守る
- 熱中症や低血糖の症状に注意し、水分を持参する
ヘルパーや家族との役割分担
訪問リハビリで行うのは、本人が自分で買い物ができるようになるための練習です。日々の買い物の代行は、訪問介護の生活援助の役割になります。
| 担い手 | 役割 |
|---|---|
| 訪問リハビリ | 評価、練習、ルートや道具の工夫、見守りのポイントの整理 |
| 訪問介護 | 買い物の代行、ヘルパーが同行して本人と一緒に行う買い物の支援 |
| 家族 | 週末の買い物への同行、本人に任せる部分の見守り |
解釈通知では、リハ職がケアマネジャーを通じて、訪問介護などのほかのサービスの職員に、日常生活上の留意点や介護の工夫を伝えることも示されています。練習で見つけた方法を共有すると、リハビリの成果が日々の買い物に生きるようになります。
よくある質問
買い物の練習中に、本人の買い物の代金はどうしますか?
本人の財布から本人が支払います。リハ職が立て替えたり、お金を預かったりすることは避けましょう。支払いの練習も、大切な練習の一部です。
店までの移動に車を使ってもいいですか?
事業所の車に利用者を乗せることは、送迎のサービスにあたるおそれや事故時の補償の問題があるため、一般的には行いません。徒歩、杖・歩行器、車いす、公共交通機関など、本人が実際に使う方法で練習します。
20分や40分で買い物の練習はできますか?
近くの店であれば、40分や60分の枠で行えることもあります。距離がある場合は、ルートの一部だけを練習する日、店内の動作を練習する日など、目的を分けて計画するとよいでしょう。
ネットスーパーや宅配を使えば、練習は不要では?
宅配は生活を支える有効な手段です。一方で、本人が「自分で店に行きたい」と望むなら、外出や人との交流という参加の面で大きな意味があります。本人の希望と安全を踏まえて選びましょう。
認知症のある人の買い物の練習で気をつけることは?
同じ物を何度も買う、支払いで混乱するなどの課題が出やすいため、買い物メモの形式、財布の中身の工夫、決まった店とルートの固定などで失敗しにくい仕組みをつくります。家族と、どこまで本人に任せるかを話し合っておくことも大切です。成功体験を重ねることが、本人の自信にもつながります。
まとめ|訪問リハビリの買い物練習は計画に目的と頻度を書いて行う
訪問リハビリで買い物の練習を行うことは、心身機能・活動・参加にバランスよく働きかける実践そのものです。家の外で行う場合は、居宅からの一連の行為として、計画に目的・頻度を記録することがルールです。評価、段階的な練習、安全管理を行い、ヘルパーや家族と役割を分けて、本人の「また自分で買い物に行きたい」をかなえましょう。
- 買い物は活動と参加をつなぐ代表的な練習場面
- 居宅からの一連の行為として行い、計画に目的・頻度を記録する
- 準備・移動・店内・支払い・持ち帰りの5段階で評価する
- 家の中の練習→下見→同行→移行の順で段階的に進める
- 代行はヘルパーの役割。練習の成果を家族やヘルパーに共有する
- 大阪府「訪問リハビリテーション・介護予防訪問リハビリテーション自主点検表」
- 厚生労働省「リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について」(介護保険最新情報Vol.1217)
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第259回)資料4「訪問リハビリテーション」
※2026年10月時点で確認した情報です。制度は改定されるため、算定・運用の際は最新の通知・Q&Aと指定権者(都道府県・市町村)の案内をご確認ください。

