訪問リハビリの交通費は請求できる?実施地域外の条件と注意点

「遠方の利用者さんの訪問、ガソリン代くらいはもらえないの?」「近くにコインパーキングしかないけど、駐車場代を利用者さんに請求していい?」——訪問リハビリの事業所を運営していると、交通費の扱いに迷う場面は少なくありません。
結論からいうと、訪問リハビリの交通費は「通常の事業の実施地域」の外に住む利用者に訪問する場合に限り、利用者に請求できます。この記事では、運営基準・解釈通知・自治体の集団指導資料をもとに、交通費を請求できる条件、請求できないケース、料金設定と説明・同意の手順、消費税の扱いまで、運営指導で指摘されないためのポイントを整理します。
- 訪問リハビリで交通費を請求できる条件(運営基準第78条)
- 「通常の事業の実施地域」の決め方と運営規程への記載
- 駐車場代・ガソリン代など、請求できない費用の考え方
- 中山間地域等の加算を算定する場合に交通費を受け取れない理由
- 交通費の料金設定の例と、説明・同意・領収書の注意点
- 交通費にかかる消費税の扱い
訪問リハビリの交通費は請求できる?結論は「実施地域外のみ」
訪問リハビリの運営基準(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)第78条第3項では、利用者の選定により通常の事業の実施地域以外の地域の居宅で訪問リハビリを行う場合は、それに要した交通費の支払いを利用者から受けることができるとされています。
逆にいえば、通常の事業の実施地域内に住む利用者からは、交通費を受け取ることはできません。実施地域内の移動にかかる費用は、介護報酬(基本報酬)に含まれていると考えます。
| ケース | 交通費の請求 | ポイント |
|---|---|---|
| 通常の事業の実施地域内の利用者 | × できない | 移動費用は介護報酬に含まれる |
| 実施地域外の利用者(利用者が事業所を選んだ場合) | ○ できる | 事前に説明し、同意を得ることが必要 |
| 中山間地域等居住者加算を算定する利用者 | × できない | 加算が交通費相当の評価を含むため |

実施地域の外の利用者さんなら、自動的に交通費をもらえるんですか?

自動的ではないよ。運営基準の第78条第4項で、あらかじめ利用者や家族にサービスの内容と費用を説明して、同意を得なければならないとされている。説明と同意がなければ請求できないと考えておこう。
交通費を請求するための3条件は、①実施地域外の利用者であること、②運営規程に費用を定めていること、③事前に説明して同意を得ていることです。
「通常の事業の実施地域」とは?運営規程での決め方
運営基準第82条では、訪問リハビリ事業所ごとに運営規程を定め、その中に「通常の事業の実施地域」と「利用料及びその他の費用の額」を記載することが求められています。交通費を請求する前提として、この2つが運営規程に明記されている必要があります。
実施地域の決め方の例
通常の事業の実施地域は、事業所が無理なくサービスを提供できる範囲として、事業所自身が定めます。市町村単位で定める方法や、町名単位で定める方法があります。
- 市町村単位の例:「◯◯市、△△町」
- 町名単位の例:「◯◯市のうち、□□地区・××地区」
- 実施地域は利用申込を断る理由にもかかわるため、実際に訪問できる範囲で現実的に設定する
実施地域は、正当な理由なくサービス提供を拒んではならないというルール(提供拒否の禁止)とも関係します。実施地域外であることは、提供を断る「正当な理由」の一つになりうる一方、実施地域内の利用申込は原則として断れません。実施地域を実態より広く設定すると、受けられない依頼を断れなくなる点に注意しましょう。
訪問リハビリで請求できない交通費・費用
運営基準の解釈通知では、交通費は「移動に要する実費」とされ、保険給付の対象となっているサービスと明確に区分されない、あいまいな名目による費用の支払いを受けることは認めないとされています。次のような請求は、運営指導で指摘される可能性が高いものです。
実施地域内の駐車場代
自治体の集団指導資料では、駐車料金は交通費に含まれるため、通常の事業の実施地域内の利用者から駐車場代を受け取ることはできないと整理されています。コインパーキングを使わざるを得ない場合でも、実施地域内であれば事業所の負担になります。
「訪問料」「出張費」などのあいまいな名目
実施地域内の利用者から「訪問料」「出張費」「燃料調整費」などの名目で費用を受け取ることも、あいまいな名目の費用にあたるおそれがあります。訪問リハビリの基本報酬に含まれている移動のコストを、別の名目で利用者に転嫁することはできません。
中山間地域等居住者加算を算定する場合
訪問リハビリには、厚生労働大臣が定める中山間地域等に住む利用者に、通常の事業の実施地域を越えてサービスを提供した場合に算定できる中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算(所定単位数の5%)があります。この加算を算定する利用者からは、交通費の支払いを受けることはできません。加算と交通費の二重取りにならないよう、どちらで対応するかを利用者ごとに整理しておきましょう。

居宅療養管理指導だと、実施地域内でも交通費をもらっていると聞いたんですが……。

居宅療養管理指導は、訪問系・通所系サービスと支給限度額を一体で管理しないこともあって、交通費は利用者の実費負担とすることが適当と整理されているんだ。訪問リハビリとは扱いが違うから、同じ感覚で請求しないように気をつけよう。
訪問リハビリの交通費の料金設定と請求の手順
実施地域外の利用者から交通費を受け取る場合は、次の流れで準備・運用します。
- 運営規程と重要事項説明書に料金を定める通常の事業の実施地域と、実施地域外の交通費の算定方法を運営規程に記載し、重要事項説明書にも同じ内容を記載します。
- 契約前に説明し、同意を得る利用者または家族に、交通費がかかることと金額の算定方法を説明し、署名などで同意を得ます。
- サービス提供の記録と請求を対応させる訪問日ごとに交通費の発生がわかるようにし、請求書・領収書に介護保険の利用者負担額と区分して記載します。
- 料金を変更するときは再度説明・同意燃料費の高騰などで料金を改定する場合は、運営規程を変更し、利用者に改めて説明して同意を得ます。
料金設定の例
交通費は「移動に要する実費」が基本です。実費を合理的に計算できる方法で設定しましょう。
| 設定方法 | 運営規程への記載例 |
|---|---|
| 距離に応じた料金 | 通常の事業の実施地域を越えた地点から、片道1kmあたり◯円 |
| 区域ごとの定額 | 実施地域の境界から片道5km未満は◯円、5km以上は◯円 |
| 公共交通機関の実費 | 公共交通機関を利用した場合は、実施地域を越えた区間の運賃の実費 |
金額の水準は事業所によって異なります。実際の燃料費や車両費からかけ離れた金額にしないこと、利用者に説明できる根拠を持っておくことが大切です。
重要事項説明書の記載例
重要事項説明書には、利用者が読んで金額を理解できるよう、具体的に記載します。運営規程と同じ内容になっているかも必ず確認しましょう。
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| 通常の事業の実施地域 | ◯◯市(ただし□□地区を除く)、△△町 |
| 交通費 | 通常の事業の実施地域を越えて訪問する場合、実施地域の境界から片道1kmあたり◯円(税込)をいただきます |
| 支払方法 | 介護保険の利用者負担額とあわせて、翌月に口座振替でお支払いいただきます |
| 領収書 | 介護保険の利用者負担額と交通費を区分して記載した領収書を発行します |
訪問リハビリの交通費と消費税・医療費控除
交通費には消費税がかかる
介護保険の訪問リハビリそのものは消費税が非課税ですが、国税庁の質疑応答事例では、通常の事業の実施地域以外の地域の居宅で訪問看護・訪問リハビリテーションを行う場合の交通費は課税とされています。料金表や領収書では、税込み・税抜きのどちらで表示しているかを明確にしておきましょう。
利用者への説明で気をつけたいこと
利用者や家族からは「交通費も医療費控除の対象になるの?」と聞かれることがあります。医療費控除の対象になるかどうかは、利用しているサービスの組み合わせなどによって変わるため、事業所が断定的に答えず、国税庁の案内や税務署で確認してもらうのが安全です。
交通費以外に訪問リハビリで利用者から受け取れる費用
交通費のほかにも、訪問リハビリで利用者から受け取る費用はいくつかあります。何を受け取れて、何を受け取れないのかを一覧で整理しておくと、説明の際に迷いません。
| 費用 | 受け取り | 主な条件・注意点 |
|---|---|---|
| 介護保険の利用者負担(1〜3割) | ○ | 法定代理受領サービスの利用者負担分。加算・減算も反映する |
| 区分支給限度基準額を超えた分 | ○ | ケアプラン上、限度額を超えた部分は全額自己負担になる |
| 実施地域外の交通費 | ○ | 運営規程に定め、事前に説明・同意を得た場合 |
| キャンセル料 | △ | 運営規程・重要事項説明書に定め、事前に説明・同意を得ていることが前提。指定権者の考え方も確認する |
| 保険外(自費)のサービス料金 | ○ | 介護保険サービスと明確に区分して提供する場合に限る |
| 実施地域内の交通費・駐車場代 | × | 介護報酬に含まれる |
| あいまいな名目の費用 | × | 「訪問料」「出張費」などは認められない |
保険外サービスと区分するときの考え方
介護保険の訪問リハビリと明確に区分される保険外のサービスについては、別の料金を設定することができます。その際は、介護保険サービスとは別の事業であることを利用者に説明して理解を得ること、目的・運営方針・利用料などを運営規程とは別に定めること、会計を介護保険の事業と区分することが求められます。訪問リハビリの時間を延長して、その延長分を自費で請求するといった、保険サービスと一体化した料金の取り方は認められないと考えておきましょう。
実施地域外の依頼を受けるかどうかの判断
実施地域外の依頼は、交通費を請求できるとはいえ、移動時間が長くなる分、ほかの利用者への訪問枠が減ります。受けるかどうかは、次の点を総合的に考えて判断しましょう。
- 近隣にほかの訪問リハビリ事業所があるか:利用者にとってより近い事業所がある場合は、ケアマネジャーと相談して紹介することも選択肢
- 訪問の頻度と期間:短期集中的な関わりか、長期的な関わりかによって、事業所の負担は大きく変わる
- 同じ方面に複数の利用者がいるか:訪問ルートを組めれば、移動の負担を減らせる
- 緊急時に対応できる距離か:体調の急変や事故が起きたときの連絡・対応体制を確保できるか
実施地域外であることは、サービス提供を断る正当な理由の一つになりえますが、断る場合も、利用者が必要なサービスを受けられるよう、ほかの事業所の紹介などの対応を行うことが求められます。
交通費トラブルを防ぐ実務のポイント【実践編】
交通費は金額としては小さくても、利用者との信頼関係や運営指導に影響しやすい項目です。PT・OT・STを含めた事業所全体で、次のポイントを共有しておきましょう。
- 新規依頼の段階で住所を確認する:実施地域外であれば、ケアマネジャーにも交通費が発生することを事前に伝えておく
- 駐車場所を事前に確認する:利用者宅の駐車スペース、近隣の駐車場の有無を確認し、路上駐車による近隣トラブルや違反を避ける
- 路上駐車が避けられない場合:警察署による駐車許可の制度がある地域もあるため、管轄の警察署に要件を確認する
- 訪問スタッフが勝手に請求しない:交通費の請求は事業所のルールに従って事務部門が行い、現場で現金を受け取らない
- 運営規程・重要事項説明書・契約書の記載をそろえる:書類ごとに金額や実施地域が違うと、運営指導で指摘される
実施地域内の利用者から交通費や駐車場代を受け取っていた場合、運営指導で返金を求められることがあります。過去の請求に心当たりがある場合は、早めに指定権者に相談しましょう。
よくある質問
実施地域内でも、遠い利用者からは交通費をもらえますか?
もらえません。交通費を受け取れるのは、通常の事業の実施地域以外の地域の居宅で訪問リハビリを行う場合に限られます。実施地域内であれば、距離にかかわらず移動費用は介護報酬に含まれると考えます。
駐車場代を交通費とは別に請求できますか?
駐車料金は交通費に含まれると整理されています。実施地域内の利用者からは受け取れず、実施地域外の利用者についても、運営規程に定め、事前に説明・同意を得た交通費の範囲で扱う必要があります。
医療保険の訪問リハビリの場合、交通費はどうなりますか?
医療保険の訪問リハビリ(在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料)では、訪問に要した交通費は患家の負担とされるのが一般的です。介護保険とはルールが異なるため、医療保険で訪問する場合は医療機関の規程を確認してください。
交通費の金額に上限はありますか?
全国一律の上限額は定められていませんが、「移動に要する実費」とされているため、実費からかけ離れた金額は認められません。算定方法を運営規程に明記し、根拠を説明できるようにしておきましょう。
利用者が引っ越して実施地域外になった場合は?
引き続き訪問する場合は、交通費が発生することを改めて説明し、同意を得てから請求します。中山間地域等居住者加算の対象地域であれば、加算と交通費のどちらで対応するかもあわせて整理しましょう。
ケアマネジャーにも交通費のことを伝える必要がありますか?
交通費は介護保険の給付対象外の費用ですが、利用者の負担額に関わるため、ケアプランを作成するケアマネジャーにも事前に伝えておくと、利用者・家族への説明がスムーズになります。実施地域外であることをサービス担当者会議で共有しておくのも有効です。
まとめ|訪問リハビリの交通費は「実施地域外・運営規程・同意」がそろって請求できる
訪問リハビリの交通費は、通常の事業の実施地域外の利用者に訪問する場合に限り、運営規程に定めたうえで、事前の説明と同意を得て請求できます。実施地域内の交通費や駐車場代、あいまいな名目の費用は受け取れません。
- 交通費を請求できるのは通常の事業の実施地域以外の利用者だけ(運営基準第78条第3項)
- 運営規程に実施地域と費用を定め、事前に説明・同意を得ることが必要
- 駐車場代は交通費に含まれ、実施地域内では受け取れない
- 中山間地域等居住者加算を算定する利用者からは交通費を受け取れない
- 交通費は「移動に要する実費」が基本。実施地域外の交通費は消費税の課税対象
- 書類の記載をそろえ、現場で個別に請求しないルールをつくる
実施地域の設定や料金の扱いで迷う場合は、指定権者(都道府県・市町村)の集団指導資料やQ&Aを確認しましょう。
- e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)
- さいたま市「利用者宅の訪問時における駐車について」(令和8年度介護保険事業者集団指導)
- 三重県「中山間地域等における加算について」
- 国税庁 質疑応答事例「居宅サービスにおける利用者負担の交通費等の費用の取扱い」
※2026年10月時点で確認した情報です。制度は改定されるため、算定・運用の際は最新の通知・Q&Aと指定権者(都道府県・市町村)の案内をご確認ください。

