訪問リハビリは3か月に1回の医師受診が必要?診療の頻度と費用を解説

「訪問リハビリを利用するには、3か月に1回、事業所の医師の受診が必要なの?」「かかりつけ医が別にいるのに、また別の医師に診てもらうのは大変…」――そんな疑問や不安を持つご利用者さま・ご家族は少なくありません。担当セラピストとして、ご家族から同じ質問を受けた経験のあるPT・OT・STの方も多いはずです。
結論からお伝えすると、訪問リハビリは原則として「事業所の医師による3か月に1回の診療」が推奨されますが、かかりつけ医が別にいる場合でも、情報提供を受ければ訪問リハビリは利用できます。この記事では、最新の令和6年度介護報酬改定にもとづき、3か月に1回の受診ルールの背景・料金の違い・退院後1か月の特例まで、現役PT目線でわかりやすく整理します。
- 訪問リハビリで「3か月に1回の医師受診」が原則とされる理由
- 事業所医師の診療なしで利用できる「計画診療未実施減算」の仕組み
- 診療ありなし2パターンの料金・質・手間の違い(比較表つき)
- 令和6年度改定で追加された「退院後1か月の減算免除」など最新ルール
- 利用者・家族から質問されたときのリハ職の説明ポイント

ご家族から「3か月に1回また医師の診察に行かなきゃダメなんですか?」と聞かれて、うまく答えられませんでした…。

ここは混乱しやすいポイントだね。「原則あり/なしでも利用できる」の二段構えで覚えておけば、家族にもスッと説明できるようになるよ。
訪問リハビリは3か月に1回の医師受診が必要なのか?【結論】
結論からお伝えします。訪問リハビリテーションでは、原則として訪問リハ事業所の医師が3か月に1回以上、利用者を診療することが求められています。これは介護保険における訪問リハビリの算定要件の一つで、医師の指示のもとに理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が訪問リハビリ計画を作成・提供する仕組みになっているためです。
ただし、これは「3か月に1回かならず事業所の医師の顔を見に行かないと訪問リハが受けられない」という意味ではありません。かかりつけ医が他にいるなど事情がある場合は、別の医療機関の医師からの診療情報提供をもとに、訪問リハ事業所の医師が計画を立てて訪問リハビリを提供することができます。この場合は「訪問リハビリテーション計画診療未実施減算」が適用され、基本報酬から1回につき50単位が減算されます。
訪問リハビリは「事業所医師の診療あり(原則)」と「事業所医師の診療なし+他医療機関の情報提供」の2パターンで利用できる。後者は減算が発生するが、利用そのものは可能。
なぜ3か月に1回の医師診療が原則とされているのか
そもそも、なぜ「事業所の医師が3か月に1回診療する」ことが原則とされているのでしょうか。背景には、訪問リハビリテーションが医療職であるリハビリ専門職と医師がチームで提供するサービスとして位置付けられていることがあります。
① 医師の指示にもとづくサービスである
訪問リハビリは「医師の指示書」が必須のサービスです。PT・OT・STは医師の指示と訪問リハビリ計画にもとづいて、可動域訓練・筋力強化・歩行訓練・ADL練習などを提供します。医師がリハビリの目標・禁忌・リスクを把握していなければ、安全で質の高いリハ提供は難しいというわけです。
② 「3か月」は心身機能の変化を捉える妥当な期間
高齢者の心身機能や生活状況は、3か月もあれば大きく変化します。たとえば、骨折からの回復過程、認知機能の進行、誤嚥リスクの変化など、3か月ごとに見直す視点は臨床的にも理にかなっています。リハビリ計画書を見直すタイミングとしても、3か月という単位は管理しやすい区切りです。
③ リハマネジメント加算とも連動している
訪問リハビリには「リハビリテーションマネジメント加算」があり、医師・リハ職・ケアマネジャー等によるリハビリテーション会議で計画を共有・見直すことが求められます。この会議や計画見直しを3か月に1回以上実施することが基本とされており、事業所医師の診療も自然とこの周期に合わせて行われることが多いです。

「医療職の視点が要るから3か月」って聞くと納得です。なんとなく「面倒なルール」と思っていました。

ご家族にも「医師がしっかり関わっているからこそ、リハの質が担保される仕組みなんですよ」と説明できると印象が変わるよ。
事業所医師の診療がない場合|計画診療未実施減算の仕組み
「とはいえ、すでに別の主治医にかかっていて、訪問リハ事業所まで通院するのは現実的に難しい」というケースは少なくありません。そのような場合に使われるのが、「訪問リハビリテーション計画診療未実施減算」という仕組みです。
計画診療未実施減算とは
計画診療未実施減算は、訪問リハ事業所の医師が直接利用者を診療しない場合に適用される減算で、別の医療機関の主治医(かかりつけ医)からの診療情報提供をもとに、訪問リハ事業所の医師が訪問リハビリ計画を作成・指示する仕組みです。減算額は1回につき▲50単位です(令和6年度介護報酬改定)。
「他の医療機関の主治医に書類を書いてもらえば、減算なしで訪問リハが受けられる」と誤解されているケースがあります。かかりつけ医の情報提供のみで事業所医師の診療がない場合は、原則として50単位の減算対象になります。
外部医師に求められる「適切な研修」
計画診療未実施減算を算定して訪問リハビリを提供するには、情報提供を行う外部医師が「適切な研修の修了」等を満たしている必要があります。具体的には、日本医師会の「日医かかりつけ医機能研修制度」の応用研修修了などが該当します。外部医師は、訪問リハ事業所の求めに応じて研修修了の有無を伝達する必要があります。
事業所医師が情報をどう活かすか
外部医師からの情報提供書には、診断名・既往歴・現病歴・服薬状況・リハビリの留意点・禁忌などが記載されます。訪問リハ事業所の医師は、その情報をもとに訪問リハビリ計画を作成し、PT・OT・STに指示を出します。「事業所医師が直接診ていない」だけで、医師が関与していないわけではない点は、利用者・家族にしっかり伝えたいポイントです。
2パターンの比較|料金・質・手間の違いを早わかり
事業所医師の診療「あり/なし」で、料金や手間がどう変わるのかを表にまとめました。20分1単位として、令和6年度の介護報酬改定にもとづいた数値で示しています。
| 項目 | 事業所医師の診療あり | 事業所医師の診療なし (外部医師の情報提供) |
|---|---|---|
| 事業所医師の診察頻度 | 3か月に1回以上 | 不要 |
| 外部医師の情報提供 | 原則不要 | 3か月に1回以上 |
| 基本報酬(1回20分) | 308単位 | 308単位 − 50単位=258単位 |
| 1回あたりの自己負担 (1割負担・概算) | 約300円台前半 | 約250円前後 |
| 診察通院の手間 | 事業所医師の受診が必要 | かかりつけ医のみでOK |
| サービスの位置づけ | 本来の標準形 | 減算形(▲50単位/回) |
「料金が高い=事業所にとって儲かる」という単純な話ではなく、事業所医師が3か月に1回しっかり診療し、PT・OT・STと連携することがリハ報酬の前提になっている、と理解するのがおすすめ。連携が取れていなければ、利用者は別の事業所を選ぶことも可能。
料金は1単位あたりの地域単価で変動する
介護保険の単位は、地域区分(1級地〜7級地・その他)によって1単位あたりの金額が変わります。例えば訪問リハビリは1単位=10.45円〜11.40円程度です。1割負担で20分(1単位=308単位)の場合、おおよそ322円〜351円が目安となり、減算ありの場合はそこから50単位分(約52円〜57円)安くなります。
「安いから減算ありを選ぶ」は注意
料金だけ見ると減算ありの方が安く感じるかもしれませんが、事業所医師と直接連携できる「あり」の方が、リハ計画の精度や緊急時の判断スピードが上がる傾向があります。「料金が高くなった分、サービスの質が担保されている」と捉えて、ご家族と相談しながら選ぶのが現実的です。
令和6年度改定で追加された「退院後1か月の減算免除」
2024年(令和6年度)の介護報酬改定で、計画診療未実施減算に重要な特例が追加されました。それが「退院後1か月以内であれば、入院していた医療機関の医師の情報提供で減算が適用されない」という取り扱いです。
背景:退院後すぐにリハを切れ目なく開始するため
入院中にリハビリを受けていた患者さんが、退院後すぐに訪問リハビリを始めるケースは多くあります。しかし、退院直後はかかりつけ医・事業所医師の双方が利用者を診ていない期間が発生しやすく、減算が常に発生してしまうのが課題でした。
そこで令和6年度改定では、退院後1か月に限り、入院していた医療機関の医師からの情報提供をもとに訪問リハビリを実施した場合は、計画診療未実施減算を適用しないこととされました。退院直後の「リハ空白期間」を防ぎ、ADL低下を予防する狙いがあります。
入院中の医療機関の医師から情報提供を受け、退院から1か月以内に訪問リハビリを開始した場合 → 減算なしで算定可能。退院後1か月を過ぎたら、原則どおり事業所医師の3か月ごとの診療、もしくは外部医師からの情報提供+計画診療未実施減算で対応。
事業所として準備しておくこと
- 入院先病院の医師から「診療情報提供書」を確実に受け取れる連携ルートを確立する
- 退院前カンファレンス・退院時共同指導加算と組み合わせて、退院前から情報を得ておく
- 退院後1か月以内に事業所医師の初回診療を組めるよう、訪問リハ開始日と診察日を逆算で調整する
- 1か月を超えた場合は減算が発生することをご家族に事前説明しておく
3か月に1回受診のスケジュール例|開始から1年の流れ
「結局、いつ何をすればよいの?」を整理するために、訪問リハ開始から1年間の流れの一例を示します(事業所医師の診療ありのケース)。
- 初回(訪問リハ開始時)事業所医師が利用者を診療し、訪問リハビリ計画を作成。指示書を発行。
- 1〜3か月目PT・OT・STが指示書に基づき訪問リハを提供。状態変化やリスクは事業所内で随時共有。
- 3か月後事業所医師が再度診療し、リハ計画を見直し。リハ会議で目標達成度を多職種で確認。
- 4〜6か月目新しい計画にもとづいて訪問リハを継続。ADL改善やIADLの拡大を狙う。
- 6か月後・9か月後・12か月後3か月ごとに事業所医師が診療+計画見直し。利用者の生活ステージに合わせて目標を再設定。

毎月の訪問とは別に、3か月に1回は医師の診療日を組み込む必要があるんですね。

そう。リハ計画書の更新日と医師の診療日をリンクさせて、リハ会議とまとめてやる事業所が多いね。事務的な手間を減らすコツでもあるよ。
リハ職(PT・OT・ST)視点|利用者・家族への説明のコツ
訪問現場では、利用者・家族から「なぜ3か月ごとに医師の受診が必要なのか」「他の病院の主治医ではダメなのか」と質問されることがよくあります。セラピストが正確に答えられると、信頼関係の構築につながります。説明のときに意識したいポイントを整理しました。
① 結論ファーストで「使える/使えない」を伝える
まずは「事業所医師の診療がなくても、訪問リハは利用できます」と明確に伝えること。そのうえで、料金や減算の話を後から補足するほうが、利用者は安心しやすいです。
② 料金差は「月額イメージ」で示す
1単位あたりの違いだけでは伝わりにくいので、「週1回・20分2単位(40分)の訪問を1か月続けた場合、減算ありの方が月◯円ほど安くなります」など、月額イメージで伝えるとわかりやすくなります。
③ 「医師の関わり方の違い」もセットで説明
料金だけ見ると減算ありが得に見えますが、「事業所医師が直接診療している分、リハ計画の精度や緊急時の対応力に差が出る可能性がある」ことを率直に伝えると、利用者・家族が納得して選択しやすくなります。
計画診療未実施減算は、利用者にとっては料金が下がる一方、事業所にとっては収益減になります。事業所医師の体制づくり・かかりつけ医との連携ルート確保は、減算回避のためにも、サービスの質向上のためにも重要です。
よくある質問(FAQ)
事業所の医師の診療を毎月受ける必要はありますか?
必須ではありません。原則は「3か月に1回以上」の診療で、リハ計画の見直しと連動させる形が一般的です。月1回の診療を行っている事業所もありますが、必須ではありません。
かかりつけ医が認知症内科などで、リハに詳しくない場合は減算で利用できますか?
利用は可能ですが、外部医師が「適切な研修の修了等」の要件を満たしている必要があります(日医かかりつけ医機能研修制度応用研修などが該当)。事業所が情報提供を依頼する際に、研修修了の有無の確認も依頼してください。
退院後すぐに訪問リハを開始する場合、必ず減算になりますか?
令和6年度の介護報酬改定で、退院後1か月以内に入院していた医療機関の医師の情報提供をもとに訪問リハを実施した場合は、計画診療未実施減算が適用されない取り扱いとなりました。退院前カンファレンスから情報を受け取り、早期に開始できる体制を整えておきましょう。
事業所医師の診療は通院ですか?それとも往診ですか?
事業所によって異なります。診療所併設型の訪問リハ事業所では通院での診療が中心ですが、訪問診療・往診で対応している事業所もあります。通院が困難な利用者には、訪問診療と組み合わせている事業所を選ぶのも一つの方法です。
計画診療未実施減算が嫌な事業所が「うちは減算では受けられない」と言うのは正しいですか?
制度上は減算で算定すれば利用可能なので、「絶対に受けられない」というのは制度的に正確ではありません。ただし、減算で収益が下がる・連携の手間が増えるなどの理由で受け入れを限定する事業所はあります。複数の事業所に相談してみるのが現実的です。
3か月以内に医師の診療がなかった場合は、どうなりますか?
事業所医師の診療が3か月以内になく、外部医師からの情報提供も適切に得られていない場合、計画診療未実施減算の要件すら満たさず、訪問リハとして算定できない可能性があります。事業所は、利用者ごとに医師の診療日・情報提供日を必ず管理する必要があります。
まとめ|訪問リハビリの「3か月に1回受診」は原則であり、必須ではない
訪問リハビリの「3か月に1回の医師受診」は、安全で質の高いリハビリを提供するために設けられた仕組みです。とはいえ、現実にはかかりつけ医との二重受診が難しいケースも多く、その場合には「計画診療未実施減算」を活用して訪問リハを利用することができます。
- 訪問リハビリは、原則「事業所医師の診療を3か月に1回以上」が前提のサービス
- かかりつけ医からの情報提供があれば、事業所医師の診療なしでも利用可能(計画診療未実施減算▲50単位/回)
- 外部医師は「適切な研修の修了等」が要件(日医かかりつけ医機能研修制度応用研修など)
- 令和6年度改定で、退院後1か月以内は入院先医師の情報提供で減算免除に
- 料金だけでなく「医師の関わり方の違い」も含めて、利用者・家族と相談して選ぶことが大切
制度を正しく理解しておくと、利用者・ご家族からの質問にも自信を持って答えられ、訪問リハの満足度向上にもつながります。事業所運営者の方は、外部医師との連携ルートと退院後1か月特例の活用フローを整備しておきましょう。
