言語聴覚士の目標設定の例文|新人・中堅・管理職と臨床目標

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「人事考課の個人目標に何を書けばいいかわからない」「患者さんの目標を、どう具体的に書けばいいの?」——言語聴覚士は、コミュニケーションや嚥下など、成果が数字にしにくい領域を扱うことが多く、目標設定に悩む人が少なくありません。
この記事では、言語聴覚士の目標設定の例文を、職員としての個人目標(新人・中堅・管理職)と、患者さん・利用者さんの臨床目標の2つに分けて紹介します。STならではの数値化のコツ、振り返りの方法と注意点もまとめました。
- 目標設定の基本(SMARTの考え方)
- 新人・中堅・管理職の個人目標の例文
- 疾患・領域別の臨床目標の例文
- STの目標を数値化するコツ
- 目標の振り返り方と注意点
- 目標達成に役立つおすすめの本
言語聴覚士の目標設定の基本
目標は、SMART(具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限)の考え方で書くと、評価や振り返りがしやすくなります。
| 要素 | 意味 | STの目標での例 |
|---|---|---|
| Specific(具体的) | 何をするかがはっきりしている | 「嚥下評価の手順を覚える」→「VF・VEの評価項目を説明できる」 |
| Measurable(測定可能) | 達成したかを判断できる | 件数、回数、正答率、摂取量など |
| Achievable(達成可能) | 努力すれば届く | 経験年数や業務量に合った水準 |
| Relevant(関連性) | 職場や本人の目標とつながる | 部署の方針、患者さんの生活目標 |
| Time-bound(期限) | いつまでに達成するか | 「3か月後までに」「年度末までに」 |
【新人向け】言語聴覚士の目標設定の例文
- 4月から6月までに、失語症の標準的な検査を指導者の確認のもとで実施し、結果を報告書にまとめられるようになる。
- 上半期中に、嚥下の簡易スクリーニングを一人で実施し、食形態の提案の根拠を説明できるようになる。
- 毎月1回、担当症例を指導者と振り返り、年度末までに院内の症例検討会で1例を発表する。
- 記録を当日中に完成させる日の割合を、3か月で9割以上にする。
- 構音障害の評価を、年度内に10例以上担当し、評価の手順書を自分用に作成する。
- 多職種カンファレンスで、担当患者さんの状態と方針を1分以内で報告できるようになる。

新人のうちは、何を目標にすればいいのか迷います。

まずは「一人でできることを一つずつ増やす」目標がいいよ。検査、記録、報告など、基本の業務を期限つきで書くと、振り返りもしやすいんだ。
【中堅向け】言語聴覚士の目標設定の例文
- 年度内に、摂食嚥下障害に関する認定資格の取得に向けた研修を修了する。
- 病棟の看護職員向けに、食事介助の勉強会を年2回企画・実施する。
- 新人STのプリセプターとして、6月までに新人が嚥下スクリーニングを一人で実施できるよう指導する。
- 失語症の方の家族向けに、コミュニケーションの工夫をまとめた資料を作成し、上半期中に運用を始める。
- 年度内に学会または院外の研究会で、担当症例の経過を1回発表する。
- 口腔ケアの手順を歯科衛生士と共同で見直し、病棟での実施率を半年で向上させる。
【管理職・主任向け】言語聴覚士の目標設定の例文
- ST部門の記録様式を見直し、年度内に1件あたりの記録時間を平均5分短縮する。
- 多職種による嚥下カンファレンスを月1回定例化し、食形態の見直しの件数を記録する。
- 部門内の研修計画を作成し、年度内に全スタッフが年2回以上の院内研修を受講できるようにする。
- 地域の介護事業所向けに、嚥下と口腔機能に関する研修を年1回開催する。
- スタッフ全員と半期ごとに面談し、個人目標の設定と振り返りを支援する。
働く場所別の言語聴覚士の個人目標の例文
| 働く場所 | 個人目標の例文 |
|---|---|
| 急性期病院 | 入院から48時間以内に嚥下スクリーニングを実施する割合を、上半期中に8割以上にする |
| 回復期病院 | 退院前に家族向けの食事・コミュニケーション指導を行う割合を、年度内に全例にする |
| 介護老人保健施設 | 入所者の食形態の見直しを3か月ごとに行い、介護職員と共有する仕組みを年度内につくる |
| 訪問リハビリ | 担当利用者の家族に、食事介助のポイントを記したシートを上半期中に配布する |
| 小児・療育 | 保護者向けのことばの発達の講座を年2回開催し、参加者アンケートで満足度8割以上を目指す |
目標設定シートの記入例
人事考課などで使う目標設定シートは、目標・達成基準・行動計画・期限をセットで書くと、上司と共有しやすくなります。
| 項目 | 記入例(中堅ST) |
|---|---|
| 目標 | 病棟の食事介助の質を高める |
| 達成基準 | 看護職員・介護職員向けの勉強会を年2回実施し、参加者の8割以上が「実践に役立つ」と回答する |
| 行動計画 | 5月に病棟の困りごとを聞き取り、7月と11月に勉強会を実施。資料は病棟に掲示する |
| 期限 | 年度末 |
| 振り返り | 参加者アンケートの結果と、むせの報告件数の変化を確認する |
疾患・領域別の言語聴覚士の臨床目標の例文
| 領域 | 短期目標の例(1か月程度) | 長期目標の例(3〜6か月) |
|---|---|---|
| 失語症 | はい・いいえの応答が確実にでき、ジェスチャーと合わせて要望を伝えられる | 家族との日常会話で、コミュニケーションノートを使って用件を伝えられる |
| 構音障害 | 単語レベルで、相手が聞き返さずに理解できる発話が8割以上になる | 電話で家族と短い会話ができる |
| 嚥下障害 | ゼリーを、むせずに1食分摂取できる | やわらかい食事を3食、見守りで経口摂取できる |
| 高次脳機能障害 | 予定表を見て、1日のスケジュールを確認できる | メモと声かけを活用し、服薬を自分で管理できる |
| 小児(言語発達) | 要求を2語文で伝えられる場面が増える | 保育所で友だちとのやり取りに参加できる |
臨床目標は、厚生労働省が示す「心身機能・活動・参加」の考え方に沿って、機能の改善だけでなく、生活や社会参加の場面まで書くと、本人・家族・多職種と共有しやすくなります。
臨床目標の悪い例と良い例
| 悪い例 | 良い例 |
|---|---|
| 嚥下機能を改善する | 2週間後までに、ペースト食を見守りで1食分、むせずに摂取できる |
| コミュニケーション能力を高める | 1か月後までに、家族との会話で、指さしとカードを使って3つの要望を伝えられる |
| 発話明瞭度を上げる | 3か月後までに、電話で家族と2〜3分の会話ができる |
STの目標を数値化するコツ
- 回数や割合で書く(「10回中8回」「8割以上」)
- 量で書く(「1食分」「主食を半分以上」)
- 場面で書く(「家族との会話で」「電話で」)
- 支援の量で書く(「声かけなしで」「見守りで」)
- 標準化された検査や評価スケールの結果を使う

コミュニケーションの目標は、どうしても曖昧になってしまいます。

「どんな場面で、誰と、どのくらいの支援で」を入れるとぐっと具体的になるよ。「伝えられる」を「家族に、コミュニケーションノートを使って、用件を伝えられる」にするイメージだね。
目標を立てて振り返るまでの流れ
- 現状を評価する個人目標なら自分の業務の振り返り、臨床目標なら評価の結果を整理します。
- 目標を立てるSMARTの要素を確認しながら、短期と長期の目標を立てます。
- 途中で確認する個人目標は上司との中間面談、臨床目標は定期的な評価で進み具合を確認します。
- 振り返って次へつなげる達成できた理由・できなかった理由を整理し、次の目標に生かします。
言語聴覚士が目標設定で注意すべきこと
臨床目標は、言語聴覚士だけで決めず、本人・家族の希望と、医師や多職種の方針を踏まえて設定しましょう。特に嚥下の目標は、誤嚥のリスクを考え、医師の指示や評価の結果にもとづいて段階的に進めることが大切です。
- 目標を多く立てすぎない(個人目標は3〜4つ程度)
- 「頑張る」「意識する」など、達成を判断できない言葉を避ける
- 本人にとって意味のある目標になっているかを確認する
よくある質問
個人目標が達成できなかったら評価は下がりますか?
職場の評価制度によりますが、達成度だけでなく、取り組みの過程や振り返りの内容を評価する職場も多くあります。達成できなかった理由と、次にどうするかを具体的に説明できるようにしておきましょう。
訪問や介護分野のSTの目標はどう書けばいいですか?
自宅や施設での生活場面を目標にします。「家族と一緒に食卓で食事ができる」「デイサービスで職員に要望を伝えられる」など、生活の中での具体的な場面を入れましょう。
本人が目標を言えない場合は、どう臨床目標を立てますか?
失語症などで本人が言葉で伝えにくい場合は、選択肢を示す、写真や絵を使う、家族からこれまでの生活や好きなことを聞くなどの方法で手がかりを集めます。小さな目標から始め、反応を見ながら広げていきましょう。
目標は年度の途中で変更してもいいですか?
異動や業務の変化、患者さんの状態の変化があれば、上司や多職種と相談して見直してかまいません。変更した理由を記録しておくと、振り返りのときに説明しやすくなります。無理に続けるより、現実に合わせることが大切です。
言語聴覚士の目標達成に役立つおすすめの本4選
目標は立てて終わりではなく、達成までの行動が大切です。ここでは、この記事の新人・中堅・管理職の例文に合わせて、目標の達成を後押しする本を選びました。自分の立場と目標に合うものから選んでください。
| 立場 | おすすめ |
|---|---|
| 新人 | ①ST評価ポケット手帳 第2版 |
| 新人〜中堅(嚥下) | ②摂食嚥下リハビリテーションQ&A |
| 新人〜中堅(リスク管理・連携) | ③言語聴覚士リスク管理ハンドブック |
| 管理職・主任 | ④リハビリテーション管理・運営実践ガイドブック |
① ST評価ポケット手帳 第2版(新人向け)
「評価を一人で正確に実施できるようになる」という新人STの目標に向く1冊です。
- よく出会う疾患を想定して選んだ評価200項目を、ポイントとコツ付きでまとめている
- 言語聴覚療法の評価に加え、検査データ・運動中止基準・離床開始基準なども載っている
- 約350ページで厚さ約1cm。ポケットに入れて持ち歩ける
② 言語聴覚士のための 摂食嚥下リハビリテーションQ&A(新人〜中堅向け)
「嚥下評価を自立して行う」「食形態の提案ができる」といった臨床目標を立てた人に向く本です。
- 経験豊富な言語聴覚士が、摂食嚥下リハビリに必要な知識・技術・理論の根拠をまとめている
- 問診・検査・評価・訓練のポイントを50のトピックスに絞って解説している
- 180ページほどで、必要なトピックから読み進められる
③ 言語聴覚士リスク管理ハンドブック―養成校では学べない臨床の知恵(新人〜中堅向け)
目標に「多職種への報告・情報共有」や「安全な訓練」を入れる人に向く本です。
- 急性期・回復期の場面ごとに、医療的リスクと情報管理の方法を解説している
- 病棟への連絡、カンファレンスでの発言の仕方、報告書の書き方など、臨床ですぐ使えるコツを載せている
- 摂食嚥下の評価・訓練の開始基準や連携についても章を設けている
④ リハビリテーション管理・運営実践ガイドブック(管理職・主任向け)
管理職・主任の目標に「スタッフ育成」「部門運営」を入れる人向けの1冊です。目次には言語聴覚士の協会活動の活用も含まれています。
- リハ室の安全管理、スタッフ教育、多職種連携、診療報酬算定など、リハ部門の管理職に必要な知識を1冊にまとめている
- 目次に「人事考課と面談」「年間計画に基づく個人目標の管理」「キャリアパスの構築」があり、部下の目標設定を支える立場で読める
- 一般のビジネス書と違い、急性期・回復期・訪問・通所など、リハの現場ごとの業務管理を扱っている
まとめ|言語聴覚士の目標設定は「場面」と「数値」で具体的に
言語聴覚士の目標設定は、職員としての個人目標と、患者さん・利用者さんの臨床目標に分けて考えます。どちらもSMARTの考え方で、具体的な場面、回数や割合、支援の量、期限を入れると、評価と振り返りがしやすくなります。臨床目標は本人・家族の希望と多職種の方針を踏まえ、生活や社会参加の場面まで書くようにしましょう。
- 目標はSMART(具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限)で書く
- 新人は基本業務の自立、中堅は専門性と教育、管理職は仕組みづくりを目標に
- 臨床目標は失語・構音・嚥下・高次脳・小児など領域ごとに場面を入れる
- 回数・量・場面・支援の量で数値化する
- 嚥下の目標はリスクを踏まえ、医師や多職種と段階的に進める
※2026年10月時点で確認した情報です。制度は改定されるため、算定・運用の際は最新の通知・Q&Aと指定権者(都道府県・市町村)の案内をご確認ください。

