訪問リハビリで行う呼吸リハビリテーションとは?対象者・内容・効果を解説
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高齢化が進む中で、在宅医療や介護の現場では呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)の重要性が高まっています。
特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)や心不全、長期臥床による廃用症候群などで呼吸機能が低下している利用者にとって、訪問リハビリでの呼吸リハは生活の質(QOL)を維持するために欠かせません。
本記事では、訪問リハビリにおける呼吸リハビリの対象者や実施内容、効果、注意点を詳しく解説します。
呼吸リハを導入したい利用者や家族、そしてケアマネジャーに役立つ内容です。
目次
訪問リハビリで呼吸リハを行う対象者
訪問リハビリで呼吸リハが適応となるのは、以下のような疾患や状態を抱える方です。
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
喫煙歴がある高齢者に多く、息切れや呼吸困難が日常生活に大きく影響します。 - 間質性肺炎・肺線維症
進行性の呼吸障害を伴うため、呼吸効率を高める指導が必要です。 - 心不全や心疾患
呼吸困難や運動耐容能の低下がある場合に、呼吸リハが効果的です。 - 廃用症候群
長期臥床により呼吸筋が弱まり、痰が出しにくくなるなどの症状が見られます。 - 神経難病(ALSなど)
呼吸筋の機能低下を補うため、早期から呼吸リハを導入するケースもあります。
訪問リハビリで行う呼吸リハの内容
1. 呼吸方法の指導
- 腹式呼吸:横隔膜を意識して息を吸うことで効率的に換気を行う。
- 口すぼめ呼吸:息を吐くときに口をすぼめて行い、呼吸困難の軽減に有効。
2. 呼吸筋トレーニング
- インセンティブスパイロメーターなどの器具を使った呼吸筋訓練
- 吸気筋トレーニング(IMT)による筋力強化
3. 排痰法の指導
- 有効な咳嗽法
- 体位ドレナージ(痰を出しやすい体位を取る)
- 補助的排痰手技(セラピストが胸郭を圧迫して痰の排出を促す)
4. 運動療法
- 下肢筋力トレーニング(スクワット、椅子からの立ち上がり練習)
- 歩行訓練(息切れを防ぐペース配分の指導)
- 有酸素運動(軽い自転車漕ぎや歩行など)
5. 日常生活動作(ADL)の工夫
- 息切れしにくい動作方法(洗面・入浴・着替えの際の呼吸法)
- 動作中に休憩を挟む「ペーシング」の習慣化
- 在宅環境の調整(段差解消、椅子の配置など)
訪問リハビリで呼吸リハを行うメリット
1. 呼吸困難の軽減
正しい呼吸法を習得することで、日常生活での息切れが減り、活動量を維持できます。
2. 排痰の促進
痰を出しやすくすることで、呼吸器感染症の予防につながります。
3. 運動耐容能の改善
呼吸筋や下肢筋を強化することで、歩行や家事などの活動がしやすくなります。
4. 精神的安心感
「苦しくなったらどうしよう」という不安を軽減でき、生活意欲の向上につながります。
5. 在宅療養の継続
呼吸状態が安定することで、入院を防ぎ、在宅生活を長く続けられる可能性が高まります。
訪問リハビリで呼吸リハを行う際の注意点
- 酸素療法を行っている場合は、流量や使用時間を確認する
- バイタルサイン(SpO₂、脈拍、血圧)を常にチェックする
- 無理な負荷をかけないよう運動強度を調整する
- 急な呼吸困難や咳の増加があれば、医師や看護師に速やかに報告する
訪問リハは単独ではなく、主治医・訪問看護師・ケアマネジャーとの連携が不可欠です。
呼吸リハを導入した事例
- COPD患者(70代男性)
訪問リハで腹式呼吸と口すぼめ呼吸を習得。階段昇降が楽になり、外出頻度が増えた。 - 心不全患者(80代女性)
歩行訓練と呼吸筋トレーニングを継続。息切れで中断していた買い物に再び行けるようになった。 - 廃用症候群の利用者(90代男性)
体位ドレナージと咳嗽法の指導により、痰が出やすくなり誤嚥性肺炎を予防できた。
訪問リハビリで呼吸リハを受けたいときの流れ
- 主治医に相談し、訪問リハビリの指示書を発行してもらう
- ケアマネジャーに相談してケアプランに組み込む
- 理学療法士や作業療法士が訪問し、呼吸リハの評価と指導を行う
- 状態に応じて週1〜2回などの頻度で継続する
まとめ
訪問リハビリでの呼吸リハビリテーションは、
- 呼吸困難や痰の排出困難を改善
- 運動耐容能や日常生活動作を向上
- 精神的安心感を高め、在宅生活を支える
といった大きなメリットがあります。
対象はCOPDや心不全、廃用症候群、神経難病など呼吸機能が低下している方で、腹式呼吸・呼吸筋トレーニング・排痰法・運動療法・ADL指導などが行われます。
訪問リハビリを利用する際は、医師・看護師・ケアマネジャーと連携し、安心して呼吸リハを取り入れましょう。