訪問リハビリで多い指定難病は何がある?勉強におすすめの本も紹介!

訪問リハビリは、通院が困難な利用者に対して理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が自宅に訪問し、機能回復や生活の質(QOL)向上を目的に行うリハビリテーションです。利用者には脳卒中後遺症や骨折後のリハビリが必要な人だけでなく、厚生労働省が定める指定難病を持つ人も多く含まれています。
本記事では、訪問リハビリで対応することが多い指定難病について解説し、それぞれの疾患の特徴やリハビリで重要なポイントについて説明します。訪問リハビリに関わるセラピストにとって、難病についての知識は非常に重要ですので、ぜひ参考にしてください。
訪問リハビリは様々な疾患の利用者がいる
訪問リハビリの対象者には、加齢に伴う身体機能の低下、脳血管疾患後の後遺症、整形外科的疾患など、さまざまな疾患を抱える方がいます。その中には、進行性の神経疾患や希少疾患に分類される指定難病の方も少なくありません。
厚生労働省の指定難病は現在300種類以上あり、難病患者の生活の質を維持・向上させるために医療・介護・福祉が連携して支援することが求められています。訪問リハビリでは、運動機能の維持や日常生活動作(ADL)の改善、介助者への指導などが重要な役割となります。
また、指定難病の多くは進行性の疾患であるため、患者の状態変化に応じたリハビリプランの見直しや、医療・介護チームとの情報共有が欠かせません。特に以下の指定難病は、訪問リハビリの利用者の中でも比較的多くみられます。
訪問リハビリで多い指定難病と疾患の概要
訪問リハビリで多い指定難病と疾患の概要を紹介します。
パーキンソン病
パーキンソン病は、中脳の黒質という部位の神経細胞が変性・脱落し、ドーパミンの分泌が減少することで発症する神経変性疾患です。主な症状には、**振戦(手足のふるえ)、筋固縮(筋肉のこわばり)、寡動(動作が遅くなる)、姿勢反射障害(転倒しやすくなる)**などがあります。
訪問リハビリのポイント
- 運動機能の維持:ストレッチや歩行訓練を行い、関節の可動域を保つ
- 転倒予防:バランス訓練を取り入れ、安全な移動方法を指導
- 日常生活動作のサポート:ボタンを留める、スプーンを使うなどの作業訓練
パーキンソン病は進行性の疾患ですが、リハビリを継続することで日常生活の自立度を保つことが可能です。
進行性核上性麻痺(PSP)
**進行性核上性麻痺(PSP)**は、脳幹や大脳基底核の変性によって起こる疾患で、眼球運動障害、歩行障害、認知機能の低下が特徴です。パーキンソン病と似た症状を示すことがありますが、早期から転倒しやすくなる点が特徴です。
訪問リハビリのポイント
- 歩行補助具の活用:歩行器や手すりの設置を検討し、安全な移動を支援
- 飲み込みのリハビリ:嚥下障害が進行するため、適切な食形態や食事姿勢を指導
- 介助者への指導:転倒リスクが高いため、介助方法のアドバイスを行う
ALS(筋萎縮性側索硬化症)
**ALS(筋萎縮性側索硬化症)**は、運動ニューロンが変性・脱落することで筋力が低下し、全身の運動機能が徐々に失われていく疾患です。最終的には自発呼吸が困難となり、人工呼吸器が必要になることもあります。
訪問リハビリのポイント
- 関節拘縮の予防:ストレッチや他動運動を行い、関節の可動域を維持
- 呼吸リハビリ:呼吸筋が低下するため、呼吸法の指導や咳介助を実施
- コミュニケーション支援:発話が困難になるため、文字盤やタブレットの活用を促す
後縦靱帯骨化症(OPLL)
後縦靱帯骨化症は、脊柱の後縦靱帯が骨化し、脊髄を圧迫することで神経症状を引き起こす疾患です。手足のしびれ、歩行障害、筋力低下が主な症状です。
訪問リハビリのポイント
- 疼痛管理と姿勢指導:痛みが強い場合は、負担の少ない姿勢を指導
- 筋力トレーニング:歩行能力を維持するために筋力強化を図る
- 生活動作の適応:福祉用具の導入を提案し、生活の自立を支援
脊髄小脳変性症
脊髄小脳変性症は、小脳や脊髄の神経細胞が変性し、歩行失調、協調運動障害、言語障害などを引き起こします。
訪問リハビリのポイント
- バランス訓練:転倒しやすいため、安全な移動方法を指導
- 構音訓練:話しにくさが進行するため、発話練習を行う
- 嚥下訓練:飲み込みの力を維持するためのリハビリを実施
全身性エリテマトーデス(SLE)
**全身性エリテマトーデス(SLE)**は、自己免疫疾患の一種で、関節炎や腎炎、皮膚症状など多彩な症状を示します。
訪問リハビリのポイント
- 関節可動域訓練:関節炎による拘縮を予防する
- 筋力トレーニング:体力低下を防ぐため、適度な運動を継続
- 疲労管理:無理のないリハビリ計画を立てる
訪問リハビリで働く人におすすめの難病の本
訪問リハビリで働く人におすすめの難病の本を紹介します。
神経難病リハビリテーション 100の叡智
疾患別のリハビリテーションを中心に、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が遭遇する神経難病リハビリテーションの場面や臨床疑問を100以上提示されています。
神経難病領域のリハビリテーション実践アプローチ
神経難病領域のリハビリテーション実践アプローチが網羅されています。
【目次】
I 神経難病リハビリテーションの概要
II 神経難病の障害像
III 疾患別リハビリテーションの実際
IV 神経難病患者の在宅リハビリテーション
神経難病の病態・ケア・支援がトータルにわかる

療養生活課題(困りごと)にどう対応し、個々の生活歴や価値観などをふまえた「その患者さんにとって最善のケア」をどう提供するか、実践に基づいて具体的にわかりやすくまとまっている本です。
図解でわかる障害児・難病児サービス
障害児・難病児をとりまく問題から、障害や疾患の知識、関連制度の知識や使い方まで解説されている本です。