高齢者が階段を登るのが大変なときの補助グッズと介護保険の使い方

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「最近、2階の寝室に上がるのがつらそう」「階段で足を踏み外しそうになってヒヤッとした」——高齢の家族や利用者さんの階段の昇り降りに、不安を感じたことはありませんか。
階段の昇り降りが大変になった高齢者には、「手すり」「滑り止め」「杖」などの補助グッズで安全を確保しながら、足腰の筋力を保つ運動を続けることが大切です。手すりの取り付けや杖は、介護保険の住宅改修や福祉用具の制度を使える場合もあります。この記事では、理学療法士の視点から、階段が大変になる理由、おすすめの補助グッズ、介護保険の活用方法、安全な昇り降りのコツまでを解説します。
- 高齢者が階段の昇り降りを大変に感じる3つの理由
- 階段の負担を減らすおすすめの補助グッズ
- 手すりの取り付けや杖に使える介護保険の制度
- 理学療法士が教える安全な階段の昇り降りのコツ
- 階段の生活を続けるか、1階で暮らすかの考え方
高齢者が階段の昇り降りを大変に感じる3つの理由
階段の昇り降りは、平らな道を歩くよりも体に大きな負担がかかる動作です。高齢になると、次のような理由で階段が大変になります。
| 理由 | 起こりやすいこと | 対策の方向性 |
|---|---|---|
| 下半身の筋力低下 | 太ももやお尻の筋肉が弱くなり、一段上がるのに力が足りない | 手すりで腕の力を借りる。筋力を保つ運動を続ける |
| バランス能力の低下 | 片足で立つ時間にふらつき、踏み外しやすい | 両側の手すり、滑り止め、足元を明るくする |
| 関節の痛み・動きの制限 | 膝や股関節が痛い、足が十分に上がらずつまずく | 杖や手すりで関節の負担を減らす。昇り降りの順番を工夫する |
階段を避けすぎると、さらに筋力が落ちることも
階段が大変だからといって、まったく使わない生活にすると、足腰を使う機会が減り、さらに筋力が落ちて生活の範囲が狭くなる悪循環につながることがあります。安全を確保したうえで、使える範囲で階段を使い続けることも大切です。ただし、転倒のリスクが高い場合は無理をせず、専門職に相談しましょう。

階段で転ぶのが怖いから使わない、という利用者さんも多いです。

その気持ちは大切にしたいね。まずは手すりや滑り止めで「怖くない環境」をつくること。そのうえで、昇り降りのコツと筋力を保つ運動を一緒に練習すると、自信を取り戻してくれる人も多いよ。
階段を登るのが大変な高齢者におすすめの補助グッズ
補助グッズは、本人の体の状態と、家の階段の形(幅・段差の高さ・手すりの有無)に合わせて選ぶことが大切です。迷ったときは、ケアマネジャーや理学療法士・作業療法士に相談しましょう。
階段用の手すり|最も効果の大きい補助具
階段の補助具で最も効果が大きいのが手すりです。手すりがあると、腕の力で体を支えながら昇り降りできるため、足腰の負担が減り、ふらついたときにもつかまれます。片側にしか手すりがない場合は、両側に付けると、昇りと降りのどちらでも利き手側で使えます。
壁にしっかり固定する手すりは、壁の下地の確認が欠かせません。体重を預ける手すりは、取り付けの専門業者に依頼するのが安全です。介護保険の住宅改修を使う場合は、工事の前に申請が必要です(くわしくは後述)。
滑り止めシート・テープ|靴下やスリッパでの滑りを防ぐ
木の階段は、靴下やスリッパで滑りやすくなります。段の先端に滑り止めのシートやテープを貼ると、足が滑るのを防げます。段の先端が見えやすい色を選ぶと、踏み外しの予防にもなります。
貼るときは、はがれやめくれがないように、しっかり固定しましょう。めくれた滑り止めは、かえってつまずきの原因になります。定期的にはがれていないかを確認してください。
多点杖(4点杖)|安定感のある杖で支える
平らな場所での歩行が不安定な人には、接地面が広い多点杖(4点杖)が使われることがあります。多点杖は自立しやすく、体重を支えたときの安定感が高いのが特徴です。一方で、階段では段の奥行きによって杖の脚がはみ出し、かえって不安定になることもあります。
階段で杖を使うかどうか、どの杖が合うかは、理学療法士などに実際の階段で確認してもらうのが安心です。杖の高さを体に合わせて調整することも大切です。
踏み台昇降のステップ台|足腰の筋力を保つ運動に
階段を昇る力を保つためには、日ごろの運動も大切です。踏み台昇降のステップ台は、家の中で階段の昇り降りに近い運動ができる運動器具です。高さを調整できるものなら、低い高さから始められます。
これは階段に置いて段差を小さくするための道具ではなく、運動用の台です。階段の上には置かず、平らな床で、手すりや壁、安定した家具につかまれる場所で使いましょう。ふらつきがある人は、家族や専門職がそばにいるときに行ってください。
階段昇降機・ホームエレベーター|大きな工事を伴う選択肢
手すりや杖を使っても階段の昇り降りが難しい場合は、階段昇降機(いす式の昇降機)やホームエレベーターを検討する家庭もあります。座ったまま昇り降りできる一方で、費用や工事の規模が大きく、階段の形によっては設置できないこともあります。介護保険の住宅改修の対象となる工事は限られているため、費用の補助については、ケアマネジャーや市町村の窓口に相談しましょう。
補助グッズは「手すり→滑り止め→足元の明るさ」の順に整えると、少ない費用で大きな効果が得られます。足元灯を付けるだけでも、夜間のトイレのときの踏み外しを防げます。
手すりや杖に使える介護保険の制度
要介護・要支援の認定を受けている人は、手すりの取り付けや杖などに介護保険の制度を使える場合があります。
| 制度 | 対象の例 | ポイント |
|---|---|---|
| 住宅改修 | 手すりの取り付け、段差の解消、滑り防止のための床材の変更など | 支給限度基準額は原則20万円(自己負担1〜3割)。工事の前に市町村への申請が必要 |
| 福祉用具貸与 | 工事を伴わない手すり、歩行器、歩行補助つえ など | レンタルで利用。状態の変化に合わせて交換しやすい |
| 貸与と販売の選択制 | 固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)、多点杖 | 令和6年度から、貸与と購入を選べるようになった |
住宅改修は、工事の前に申請しないと給付を受けられないのが原則です。また、介護保険の福祉用具は、指定を受けた事業者から利用・購入する必要があり、通信販売で自分で買ったものは対象になりません。介護保険を使いたい場合は、購入や工事の前にケアマネジャーに相談しましょう。
理学療法士が教える安全な階段の昇り降りのコツ
補助グッズに加えて、体の使い方を工夫するだけでも、階段の負担は減らせます。膝や股関節に痛みや左右差がある人は、次の順番を覚えておきましょう。
- 昇るときは「よいほうの足から」力の入りやすい足、痛みの少ない足を先に上の段に乗せ、手すりを引きながら体を持ち上げます。
- 降りるときは「悪いほうの足から」痛みのある足、力の弱い足を先に下の段に下ろし、よいほうの足で体を支えながら降ります。
- 杖を使うときは杖と悪いほうの足を一緒に動かす昇りは「よい足→杖と悪い足」、降りは「杖と悪い足→よい足」の順が基本です。
- 1段ずつ足をそろえる不安なときは、交互に足を出さず、1段ごとに両足をそろえてから次の段に進みます。

「昇りはよい足から、降りは悪い足から」って、どう覚えればいいですか?

「よい足は天国へ、悪い足は地獄へ」なんて覚え方を聞いたことがあるかもしれないね。言い方が気になる人には、「昇りは元気な足、降りは痛い足から」と伝えると覚えやすいよ。
環境の工夫も忘れずに
- 階段に物を置かない(荷物は手すりを使えなくなる原因になる)
- 足元灯を付け、夜間でも段差が見えるようにする
- 靴下で階段を使う場合は、滑り止めつきの靴下を選ぶ
- スリッパは脱げやすく、つまずきやすいため、階段では使わない
- 疲れているとき、急いでいるときほど、1段ずつゆっくり昇り降りする
階段の生活を続けるか、1階で暮らすかの考え方
補助グッズや運動で工夫しても、階段の昇り降りが危ない状態になることもあります。その場合は、寝室やトイレなど、毎日使う場所を1階にまとめることも選択肢です。2階に行く回数が減るだけでも、転倒のリスクは大きく下がります。
どちらがよいかは、本人の希望、体の状態、家族の介護力、家の間取りによって変わります。訪問リハビリでは、実際の家の階段で動作を確認し、「今の家でどう暮らすか」を本人・家族と一緒に考えることができます。ケアマネジャーを通じて相談してみましょう。
よくある質問
階段の手すりは片側だけでも大丈夫ですか?
片側だけでも効果はありますが、昇りと降りで使える手が逆になります。片麻痺がある人や、片方の手に力が入りにくい人は、両側に手すりがあると、昇りも降りも使いやすい側の手でつかまれます。
介護保険で階段の手すりを付けるにはどうすればよいですか?
要介護・要支援の認定を受けている人は、ケアマネジャー(要支援の人は地域包括支援センターなど)に相談し、工事の前に市町村へ申請します。支給限度基準額は原則20万円で、自己負担は所得に応じて1〜3割です。
階段の昇り降りを練習すれば、また楽に使えるようになりますか?
筋力やバランスの低下が主な原因であれば、運動や動作の練習で楽になることもあります。ただし、病気や痛みの状態によって変わるため、主治医や理学療法士などに相談し、安全な方法で取り組みましょう。
杖は階段でも使ったほうがよいですか?
手すりがしっかりしている階段では、手すりのほうが安定することも多くあります。杖を使う場合は、段の奥行きに杖の先が収まるかどうかも含めて、実際の階段で専門職に確認してもらいましょう。
まとめ|高齢者の階段は補助グッズと運動の両方で支えよう
高齢者が階段の昇り降りを大変に感じる理由には、筋力の低下、バランス能力の低下、関節の痛みがあります。手すり・滑り止め・杖などの補助グッズで安全を確保しながら、足腰の筋力を保つ運動を続けることが大切です。手すりの取り付けや杖には介護保険の制度を使える場合があるため、購入や工事の前にケアマネジャーに相談しましょう。
- 階段が大変になる理由は筋力・バランス・関節の痛みの3つ
- 最も効果が大きい補助具は手すり。できれば両側に付ける
- 滑り止めは、めくれがないようにしっかり固定する
- 踏み台昇降のステップ台は運動用。階段の上には置かない
- 住宅改修は原則20万円まで。工事の前に申請が必要
- 昇りは「よい足から」、降りは「悪い足から」が基本
※2026年10月時点で確認した情報です。制度は改定されるため、算定・運用の際は最新の通知・Q&Aと指定権者(都道府県・市町村)の案内をご確認ください。

