立ち上がれない高齢者の補助グッズ5選|選び方と介護保険・コツ

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「椅子から立ち上がるのに、何度も勢いをつけないと立てない」「床に座ると、一人では立ち上がれなくなってしまった」——立ち上がりは、トイレ・食事・外出など、生活のあらゆる動作の出発点です。立ち上がりがつらくなると、動くこと自体がおっくうになり、さらに足腰が弱るという悪循環に陥りやすくなります。
立ち上がれない高齢者には、「座面の高さ」「つかまる場所」「足元の安全」の3つを整える補助グッズが役立ちます。この記事では、理学療法士の視点から、立ち上がれなくなる理由、場所別のおすすめ補助グッズ、介護保険で借りられる用具、立ち上がりやすくなるコツと運動までを解説します。
- 高齢者が立ち上がれなくなる3つの理由
- 補助グッズを選ぶときの3つのポイント
- 立ち上がりを助けるおすすめ補助グッズ5選
- 介護保険で借りられる・購入できる立ち上がりの用具
- 立ち上がりやすくなる動き方のコツと運動
高齢者が立ち上がれなくなる3つの理由
立ち上がりがつらくなる原因は、筋力の低下だけではありません。いくつかの原因が重なっていることが多いため、まずは原因を知ることが大切です。
| 理由 | 起きていること | 対策の方向性 |
|---|---|---|
| 下半身の筋力の低下 | 太ももの前(大腿四頭筋)やお尻(殿筋)の力が弱まり、体を持ち上げられない | 座面を高くする、手すりで腕の力を借りる、筋力を保つ運動 |
| 関節の痛み・動きの制限 | 膝や股関節の痛み、こわばりで、足を引いたり体を前に倒したりできない | 高めの座面で膝の曲がりを浅くする、痛みの治療を受ける |
| バランスの低下・転倒への不安 | 立った瞬間にふらつく。転んだ経験から立つこと自体が怖くなる | つかまる場所をつくる、足元の滑りを防ぐ、安心できる環境で練習 |
特に、低いソファや床からの立ち上がりは、膝や股関節を大きく曲げた姿勢から体を持ち上げるため、筋力と関節の両方に大きな負担がかかります。同じ人でも、座面が数センチ高くなるだけで立ち上がりやすくなることがよくあります。

立ち上がれないなら、まずは筋トレをしてもらえばいいんでしょうか?

運動はもちろん大切だけど、筋力がつくまでには時間がかかるよね。その間に転んでしまったら意味がない。まずは補助グッズで「今の力でも安全に立てる環境」をつくって、そのうえで運動を続けるのが基本だよ。
立ち上がり補助グッズを選ぶ3つのポイント
- 座面の高さを合わせる椅子やソファは、座ったときに膝が股関節と同じくらいか少し低い高さになるものが立ち上がりやすい目安です。足の裏が床にしっかりつく高さにしましょう。
- つかまる場所をつくる肘掛けや手すりがあると、腕の力で体を持ち上げられます。体重をかけてもぐらつかないことを必ず確認しましょう。
- 足元の滑りを防ぐ立ち上がるときは、足で床を押す力が必要です。床や浴槽が滑ると、力を入れた瞬間に足が滑って転倒する原因になります。
どのグッズが合うかは、体の状態や家の環境で変わります。迷ったときは、ケアマネジャーや理学療法士・作業療法士、福祉用具専門相談員に相談しましょう。
立ち上がれない高齢者におすすめの補助グッズ5選
立ち上がり補助機能付きソファ
リビングで長く座って過ごす人には、座面が高めで、しっかりした肘掛けのあるソファがおすすめです。立ち上がりを補助する機能が付いたソファなら、座面から体が持ち上がりやすく、低いソファに沈み込んで立てなくなるのを防げます。座ったときに足の裏が床につくか、肘掛けに体重をかけてもぐらつかないかを確認して選びましょう。
高座椅子(脚付きの座椅子)
和室や床に座る生活を続けたい人には、座面の高い座椅子が向いています。床に直接座るよりも膝や股関節の曲がりが浅くなるため、立ち上がりの負担が軽くなります。肘掛けがあれば、立ち上がるときの支えにもなります。折りたたみ式なら、使わないときは片づけられます。
置くだけの立ち上がり補助手すり
ベッドの横、ソファの横、玄関の上がり框など、「ここに手すりがあれば」という場所に置ける、工事不要の手すりです。壁に穴を開けずに設置できるため、賃貸住宅でも使いやすいのが特徴です。体重をかけたときに台座が浮かないか、床が滑りやすくないかを確認して設置しましょう。工事不要の手すりは、介護保険の福祉用具貸与(レンタル)の対象にもなります。
浴槽のすべり止めマット
浴槽の中は、立ち上がりで特に転倒しやすい場所です。浴槽の底は濡れて滑りやすく、浮力で体も不安定になります。浴槽に敷くすべり止めマットがあると、足を踏ん張って立ち上がりやすくなります。浴槽内の立ち上がりが不安な人は、浴槽用の手すりや浴槽内いすも合わせて検討しましょう(介護保険の特定福祉用具購入の対象です)。
電動昇降座椅子
座面がボタン操作でゆっくり上下する座椅子です。座面ごと体を持ち上げてくれるため、自分の力だけでは立ち上がりが難しい人でも、立ち上がりやすい高さまで上げてから立てます。価格は高めですが、床に座る生活を続けたい人や、介助者の負担を減らしたい家庭には心強いアイテムです。
電動で持ち上げる用具は、立ち上がった直後にふらつきやすいことがあります。持ち上がったら一度姿勢を整え、足元が安定してから歩き出しましょう。立ちくらみが出やすい人は、ゆっくり動くことを習慣にしてください。
介護保険で使える立ち上がりの用具
要介護・要支援の認定を受けている人は、介護保険で立ち上がりを助ける用具を借りたり、購入したりできる場合があります。費用の自己負担を抑えられるため、購入の前にケアマネジャーに相談しましょう。
| 制度 | 立ち上がりに関わる主な用具 | ポイント |
|---|---|---|
| 福祉用具貸与(レンタル) | 手すり(取付工事不要のもの)、特殊寝台(介護ベッド)、移動用リフト(立ち上がり用いすなど) | 手すりは要支援1から利用可。特殊寝台・移動用リフトは、要支援1・2と要介護1の人は原則対象外(条件により例外あり) |
| 特定福祉用具販売(購入) | 腰掛便座(便座の立ち上がり補助など)、入浴補助用具(浴槽用手すり・浴槽内いす・入浴用いすなど) | 年間10万円が上限。都道府県等の指定を受けた事業者から購入したものが対象 |
| 住宅改修 | 壁に固定する手すりの取り付け、床材の変更(滑り防止)など | 支給限度額は原則20万円。工事の前に申請が必要 |
介護保険のレンタルでは、介護ベッドの背上げや高さ調整の機能を使うと、ベッドからの立ち上がりが楽になります。通信販売やネット通販で購入した用具は、特定福祉用具販売の対象にならないため、介護保険を使う予定がある場合は購入の前に必ず確認しましょう。
立ち上がりやすくなる動き方のコツ
補助グッズに加えて、立ち上がり方を少し工夫するだけで、楽に立てるようになることがあります。
- 浅く座り直すお尻を椅子の前のほうに移動させます。深く座ったままでは、体を前に移すのが難しくなります。
- 足を引く両足を肩幅に開き、膝より少し後ろに引きます。足が前に出ていると、重心を足の上に移せません。
- おじぎをする胸を前に倒し、頭を膝より前に出すつもりで体を前に傾けます。お尻が自然に浮いてきます。
- 手で押して立つ肘掛けや手すり、膝を手で押しながら、ゆっくり膝を伸ばして立ち上がります。
- 立ったら一呼吸おく立ち上がったらすぐに歩き出さず、ふらつきがないか確認してから動き出します。

「おじぎをする」が大事なんですね。

そうなんだ。立ち上がれない人の多くは、体を前に倒さずに、真上に立とうとしているんだよ。おじぎで重心を足の上に乗せるだけで、驚くほど楽に立てる人もいるよ。
立ち上がりの力を保つための運動
立ち上がりに必要な太ももやお尻の筋力は、毎日の運動で保つことができます。痛みや持病がある人は、始める前に主治医や担当のリハ職に相談しましょう。
- 椅子からの立ち座り:肘掛けのある安定した椅子で、ゆっくり立って、ゆっくり座る。5回から始め、できる範囲で回数を増やす
- 座ったままの膝伸ばし:椅子に座り、片方の膝をゆっくり伸ばして数秒止め、ゆっくり下ろす。左右交互に行う
- かかと上げ:テーブルや手すりにつかまって立ち、かかとをゆっくり上げ下げする
- お尻上げ(ブリッジ):仰向けで膝を立て、お尻をゆっくり持ち上げて下ろす
運動は、「少しきつい」くらいの量を、毎日続けることが大切です。訪問リハビリでは、家の椅子や手すりの位置に合わせて、安全にできる運動を一緒に考えることもできます。
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よくある質問
立ち上がりやすい椅子の高さの目安は?
座ったときに足の裏が床にしっかりつき、膝が股関節と同じくらいか少し低い高さが目安です。低すぎると立ち上がりにくく、高すぎると足が浮いて不安定になります。実際に座って、立ち上がりやすさを確かめて選びましょう。
介護保険で立ち上がり補助の椅子は借りられますか?
立ち上がり用いすは、福祉用具貸与の「移動用リフト」に含まれ、レンタルの対象になります。ただし、要支援1・2と要介護1の人は原則として対象外で、一定の条件を満たす場合に例外的に認められます。ケアマネジャーに相談してください。
床から立ち上がれなくなったときはどうすればよいですか?
無理に一気に立とうとせず、横向きから四つ這いになり、椅子や台に手をついて片膝立ちになってから、ゆっくり立ち上がります。痛みが強い、頭を打った、力が入らないといった場合は、無理に動かず救急要請も検討しましょう。日頃から、床からの立ち上がり方を練習しておくと安心です。
立ち上がり補助グッズを使うと、足腰が弱りませんか?
補助グッズを使って安全に動ける機会が増えれば、かえって活動量を保てます。立ち上がりがつらくて座ったままの時間が長くなるほうが、足腰は弱りやすくなります。グッズで安全を確保しながら、運動も続けましょう。
まとめ|立ち上がれない高齢者は補助グッズと運動の両方で支える
高齢者が立ち上がれなくなる理由は、筋力の低下、関節の痛み、バランスの低下と転倒への不安などが重なっていることが多くあります。座面の高さ、つかまる場所、足元の安全の3つを補助グッズで整え、浅く座る・足を引く・おじぎをするといった動き方のコツと、筋力を保つ運動を組み合わせましょう。介護保険で借りられる用具や購入できる用具もあるため、購入前にケアマネジャーへの相談がおすすめです。
- 立ち上がれない理由は、筋力・関節・バランスの3つが重なることが多い
- 補助グッズは「座面の高さ」「つかまる場所」「足元の安全」で選ぶ
- 工事不要の手すりは、要支援1から介護保険でレンタルできる
- 浴槽用手すりや浴槽内いすは、特定福祉用具購入(年10万円まで)の対象
- ネット通販で買った用具は、特定福祉用具販売の対象外
- 立ち上がりは「浅く座る→足を引く→おじぎ→手で押す」の順で
※2026年10月時点で確認した情報です。制度は改定されるため、算定・運用の際は最新の通知・Q&Aと指定権者(都道府県・市町村)の案内をご確認ください。

