理学療法士と作業療法士の違い|仕事内容・対象・年収・資格を徹底比較

「理学療法士と作業療法士って何が違うの?」「家族のリハビリを依頼するならどちらに頼めばいい?」――医療・介護の現場でよく耳にする2つの専門職ですが、実際の役割の差や得意分野はイメージしづらいものです。学生や転職を考えるリハビリ職、ご家族にとっても、両者の違いを正しく理解しておくことは進路選択や安心したサービス利用に直結します。
この記事では、理学療法士(PT)と作業療法士(OT)の違いを仕事内容・対象・働く場所・資格・年収の5つの軸で徹底比較します。最新の厚生労働省データや、訪問リハビリ・訪問看護ステーションでの実際の役割まで踏み込んで解説するので、読み終わるころには「自分に合う選び方」「依頼するときの判断軸」がはっきりイメージできるはずです。
- 理学療法士と作業療法士の役割・対象・リハビリ内容の違い
- 両職種の働く場所と国家資格・養成課程の違い
- 令和6年最新データに基づく平均年収・初任給の比較
- 訪問リハビリ・訪問看護ステーションでのPT/OTの位置づけ
- 進路選択や依頼先選びで失敗しない判断ポイント

PTとOTって、同じ「リハビリの先生」に見えるんですが、実際は何が違うんですか?

ざっくり言うと、PTは「動ける体をつくる人」、OTは「生活を取り戻す人」なんだ。順番に見ていこう。
理学療法士と作業療法士はどちらも国家資格のリハビリ専門職
まず押さえておきたいのは、理学療法士(PT)と作業療法士(OT)はどちらも国家資格を持つ「リハビリテーション専門職」だということです。病気・ケガ・加齢などで心身の機能が低下した人に対し、再び日常生活や社会活動へ戻れるよう支援する役割を担います。
理学療法士(PT:Physical Therapist)とは
理学療法士は、立つ・座る・歩く・寝返るといった「基本動作」の回復を担う専門職です。運動療法、徒手療法、物理療法(温熱・電気・水治など)を組み合わせて、筋力・関節可動域・バランス能力・耐久性などの身体機能を高めます。脳卒中・骨折・心疾患・呼吸器疾患・スポーツ障害まで幅広く対応します。
作業療法士(OT:Occupational Therapist)とは
作業療法士は、食事・着替え・入浴・家事・仕事・趣味といった「人が生きるために行うあらゆる活動(=作業)」の再獲得を支援する専門職です。身体機能はもちろん、認知機能・精神面・社会参加まで含めて働きかけるのが特徴で、「その人らしい生活を取り戻すこと」がゴールになります。
言語聴覚士(ST)との関係も押さえておこう
リハビリ職にはもう一つ、言語聴覚士(ST:Speech-Language-Hearing Therapist)という国家資格があります。STは「話す・聞く・食べる」を支援する専門職で、PT・OT・STの3職種でリハビリチームを構成するのが一般的です。本記事ではPTとOTの違いを中心に解説しますが、現場ではこの3職種が連携して利用者を支えています。
PTは「動作」、OTは「生活行為」、STは「コミュニケーションと嚥下」を主に担当する、と覚えると整理しやすいです。
理学療法士と作業療法士の違いを5つの軸で徹底比較
まずは一覧表でPTとOTの違いを俯瞰しましょう。そのあと各軸について詳しく解説します。
| 比較軸 | 理学療法士(PT) | 作業療法士(OT) |
|---|---|---|
| 主な役割 | 基本動作(立つ・歩く)の回復 | 応用動作・生活行為の再獲得 |
| 対象 | 身体疾患全般(整形・脳血管・循環器など) | 身体+精神疾患・発達障害・認知症 |
| 主な手法 | 運動療法・物理療法・徒手療法 | ADL訓練・手工芸・心理的アプローチ |
| 働く場所 | 急性期病院・整形外科・スポーツ現場・訪問リハ | 回復期・精神科・児童発達支援・訪問リハ |
| 養成校 | PT養成課程(3年制専門学校・4年制大学) | OT養成課程(3年制専門学校・4年制大学) |
役割の違い|「動作」を回復するPTと「生活」を取り戻すOT
もっとも大きな違いは、扱う「動き」のレイヤーです。PTは寝返る・起き上がる・立つ・歩くといった基本動作を扱い、OTは食事をする・服を着る・トイレに行く・料理をするといった応用動作(生活行為)を扱います。
たとえば脳卒中後の利用者では、まずPTが立位・歩行を安定させ、続いてOTが「片手で台所に立てるか」「自分で着替えられるか」といった生活場面に落とし込んでいく、という連携が典型的です。
対象の違い|身体中心のPT、心と社会も診るOT
PTの対象は主に身体疾患です。骨折・変形性関節症・腰椎椎間板ヘルニアなどの整形外科疾患、脳卒中・脊髄損傷などの神経疾患、心筋梗塞や慢性閉塞性肺疾患などの内部障害まで幅広く担当します。
一方OTは、身体疾患に加えて精神疾患・発達障害・認知症へのアプローチも担います。統合失調症やうつ病、自閉スペクトラム症の子ども、認知症高齢者など、「心や認知機能の側面」を含めて支援できるのはOTならではの強みです。
リハビリ内容の違い|運動メインのPT、生活活動メインのOT
| 項目 | PTのリハビリ内容 | OTのリハビリ内容 |
|---|---|---|
| 主な訓練 | 歩行訓練・筋力トレーニング・関節可動域訓練 | 食事・更衣・入浴・調理動作の練習 |
| 使う道具 | 平行棒・トレッドミル・電気刺激装置 | 箸・洋服・調理器具・手工芸用具 |
| 専門領域 | 呼吸リハ・心臓リハ・スポーツリハ | 高次脳機能訓練・精神科作業療法・福祉用具選定 |
働く場所の違い|活躍するフィールドが少しズレる
PTもOTも病院・介護施設・在宅と幅広く活躍しますが、それぞれ得意なフィールドがあります。
- PTが多い:急性期病院・整形外科クリニック・スポーツ現場・心臓リハ施設
- OTが多い:精神科病院・回復期リハ病棟・児童発達支援センター・特別支援学校
- 共通:訪問リハビリ・訪問看護ステーション・通所リハ・老人保健施設
資格・養成課程の違い|学ぶ内容に「色」がある
どちらも国家資格で、3年制の専門学校または4年制の大学・短大で養成課程を修了し、国家試験に合格することで取得できます。ただし学ぶ内容には明確な「色」があります。
- PTの学び:運動学・解剖学・生理学・運動療法学・物理療法学など「動きと身体」の科学
- OTの学び:作業科学・精神医学・発達学・心理学・福祉用具学など「生活と人」の科学
第60回(令和7年)国家試験の合格率は、PTが約9割、OTが約8割台と、毎年ほぼ同水準で推移しています。
理学療法士と作業療法士の年収・給料の違い【令和6年最新データ】
「PTとOTで給料に差はあるの?」というのは多くの人が気になるポイントです。結論から言うと平均年収はほぼ同水準で、勤務先・経験年数・役職のほうが影響は大きいです。
| 項目 | 金額の目安(令和6年) | 備考 |
|---|---|---|
| 平均年収 | 約444万円 | PT・OT・ST等のリハ職統合データ(厚労省「賃金構造基本統計調査」) |
| 男性平均 | 約452万円 | 女性は約410万円 |
| 初任給(月給) | 約24.6万円 | 賞与含む初年度推計年収は約298万円 |
| 事業所規模別 | 10〜99人:約430万円/100〜999人:約459万円/1,000人以上:約466万円 | 規模が大きいほど高くなる傾向 |
厚生労働省の統計ではPTとOTは「理学療法士、作業療法士、視能訓練士及び言語聴覚士」として合算で集計されているため、両者の平均年収はほぼ同額になります。実際の手取り額は、勤務先(病院・訪問リハ・介護施設)、夜勤・オンコールの有無、役職、地域によって大きく変動します。
勤務先による年収差|訪問リハは比較的高水準
同じPT・OTでも、病院勤務より訪問リハビリ・訪問看護ステーションのほうが年収が高くなる傾向があります。訪問リハは1件あたりの単価が高く、件数次第でインセンティブが付くケースもあるためです。さらに管理者・主任になると年収500〜600万円台も狙えます。

PTとOTで給料はほぼ同じなんですね。だったら「どちらが自分に合うか」で選んだほうがよさそう。

そう。給料よりも「自分が何にやりがいを感じるか」で選んだほうが、長く続けられるよ。
訪問リハビリ・訪問看護ステーションでの理学療法士と作業療法士の役割
訪問リハ・訪問看護の現場ではPTもOTも同じ「リハビリ職員」として位置づけられ、同じ単価で訪問することも多いですが、アセスメントの視点とリハ内容には明確な違いがあります。
訪問でのPTの主な役割
- 歩行能力・移乗能力の維持・改善
- 転倒予防のための筋力・バランス訓練
- 関節拘縮・浮腫の管理
- 呼吸リハ・心臓リハによる在宅療養支援
- 福祉用具・住環境(手すり・段差解消)の提案
訪問でのOTの主な役割
- 食事・入浴・トイレ・更衣などADL動作の再獲得
- 調理・洗濯・買い物などIADLの再構築
- 認知症高齢者へのアクティビティ・回想法
- 精神疾患を抱える在宅利用者への作業活動
- 手指の巧緻動作訓練・自助具の選定
訪問看護ステーションからのリハ職訪問は「看護業務の一環」として位置づけられ、訪問リハビリ事業所からの訪問とは制度上の根拠が異なります。利用する側からは似て見えますが、提供事業所によって料金・指示書・利用上限などが変わります。
実際の現場でのPTとOTの連携|疾患別シナリオ
ここまで違いを強調してきましたが、現場ではPTとOTが連携してこそ、利用者の生活が本当に良くなります。代表的な3パターンを見てみましょう。
脳卒中で右片麻痺になった60代男性のケース
- PT:歩行を取り戻す立位バランス→平行棒内歩行→四点杖歩行と段階的に進め、屋内歩行の自立を目指す。
- OT:生活を取り戻す左手だけで衣服のボタンが留められるよう自助具を選び、片手調理・片手書字を練習する。
- 連携:屋外への一歩PTが屋外歩行能力を高め、OTが「買い物に出かける」シナリオで持ち物・経路を再構築する。
認知症が進行した80代女性のケース
- PT:転ばない体をつくる下肢筋力訓練と歩行訓練で、トイレへの移動を自立で行えるよう支援する。
- OT:認知機能と生活を支える回想法・手芸・園芸活動を取り入れ、見当識や情緒の安定を図る。家事への参加を促す。
- 連携:在宅生活の継続家族・ケアマネと情報共有しながら、住環境調整と1日の生活リズムを整える。
大腿骨頸部骨折後の70代女性(整形外科疾患)のケース
- PT:荷重と歩行術後の荷重制限に合わせて筋力・歩行訓練を進め、屋内独歩を目指す。
- OT:屋内動作の自立トイレ・浴室・キッチンでの動作を実環境で練習し、福祉用具・手すりを提案する。
- 連携:再転倒の予防PTがバランス能力、OTが生活動線をチェックし、住環境改修を共同で提案する。
理学療法士と作業療法士の共通点|目指すゴールは同じ
違いばかりに目が行きがちですが、PTとOTには大切な共通点があります。
- どちらも国家資格を持つリハビリテーション専門職である
- 医師の指示のもとでリハビリを提供する
- 医療・介護・福祉領域で活躍する
- 医師・看護師・ST・薬剤師・ケアマネと連携するチーム医療の一員
- 利用者のQOL(生活の質)向上を最終ゴールとする
つまり、違うアプローチで同じゴールへ向かう「二人三脚」。これがPTとOTの本質的な関係です。
自分に向いているのはどっち?PT・OT適性チェック
進路に迷っている人のために、ざっくりとした適性チェックを用意しました。あくまで目安として参考にしてください。
理学療法士(PT)に向いている人
- スポーツや人体の動きが好き、運動学・解剖学に興味がある
- 筋力・関節・歩行など、数値や評価に基づく介入が得意
- 急性期病院やスポーツ現場でバリバリ働きたい
- 結果が動作の改善として目に見える仕事にやりがいを感じる
作業療法士(OT)に向いている人
- 料理・手芸・絵画・園芸など「作業」が好き
- 心の動きや人の生活背景に興味がある
- 精神科や児童発達など幅広い領域でキャリアを描きたい
- 「その人らしい暮らし」を支える仕事に魅力を感じる
あくまで傾向です。PTでも認知症ケアに強い人、OTでも整形外科リハに強い人はたくさんいます。最終的には「現場で何をしている時間が一番楽しいか」を基準に選びましょう。
理学療法士と作業療法士の違いに関するよくある質問
理学療法士と作業療法士、どちらの方が将来性がありますか?
どちらも需要は安定しています。高齢化と在宅医療の拡大により、訪問リハ・地域包括ケアの分野でPT・OTともに求人は増加傾向です。一方、養成校の数も増えているため、専門性を高める努力は両職種に共通して必要です。
理学療法士と作業療法士のダブルライセンスは可能ですか?
制度上は両方の国家資格を取得することが可能ですが、それぞれ養成課程を修了する必要があり、最低でも6年程度かかります。実際には「片方を取得して経験を積み、必要に応じて+α資格(ケアマネ・福祉用具専門相談員など)でカバーする」キャリアが現実的です。
訪問リハビリは理学療法士と作業療法士のどちらに依頼すべきですか?
身体機能や歩行に課題があればPT、生活動作や認知機能、精神面に課題があればOTが適しています。ただし訪問リハ事業所では本人の状態を評価したうえで担当を決めるため、まずは主治医・ケアマネ・事業所に相談しましょう。
理学療法士と作業療法士の国家試験の難易度は違いますか?
合格率はPT・OTともに概ね80〜90%台で推移しており、難易度に大きな差はありません。試験範囲は職種ごとに異なりますが、養成校での学びと実習をきちんとこなせば合格できるレベルです。
PTとOTで実習や養成校の年数は違いますか?
養成校の年数(3年制または4年制)はどちらも同じです。臨床実習の総時間も国家資格の指定規則により概ね同等で、実習先の種類(病院・施設)が職種特性に応じて少し変わる程度です。
言語聴覚士(ST)はPT・OTとどう違いますか?
STは「話す・聞く・食べる」のリハビリを担当します。失語症・構音障害・嚥下障害・聴覚障害・小児の言語発達などが専門領域で、PT・OTとは別の国家資格です。回復期病棟や訪問リハの現場では、PT・OT・STの3職種が連携して関わるケースが一般的です。
まとめ|理学療法士と作業療法士は「役割の違うパートナー」
理学療法士と作業療法士は、どちらもリハビリの国家資格を持つ専門職ですが、得意分野とアプローチは明確に違います。両者の強みを正しく理解しておくことが、進路選びにも、ご家族のサービス選びにも役立ちます。
- PTは「立つ・歩く」など基本動作、OTは「食事・着替え・趣味」など生活行為を担当する
- 対象はPTが身体疾患中心、OTは身体に加え精神・認知・発達領域も含む
- 平均年収は両者ほぼ同水準で、令和6年データで約444万円。勤務先や役職で差がつく
- 訪問リハ・訪問看護ステーションでも、PTとOTは視点を変えて連携している
- 進路や依頼先は「何にやりがいを感じるか/どの課題に困っているか」で選ぶのがベスト
PTとOTは違うアプローチで、同じ「その人らしい生活」というゴールへ向かう存在です。本記事が、進路に悩むリハビリ職を目指す方や、ご家族のリハビリを検討している方の判断材料になれば幸いです。
