理学療法士はオワコン?将来性・需要と供給の実態をデータで解説

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「理学療法士はオワコン」「将来性がない」——SNSや転職サイトの口コミで、こんな言葉を目にして不安になっていませんか。理学療法士の資格取得者は年々増え続けており、「数が増えすぎて自分の価値が下がるのでは」と感じている現役PTや、これから目指す学生も少なくありません。

結論からいうと、理学療法士という職業そのものがなくなるわけではなく、需要と供給のバランスが変化しているだけです。本記事では、理学療法士の需要と供給の現状をデータで整理したうえで、「オワコン」「将来性がない」と言われる理由を一つずつ検証し、これからも安定して活躍し続けるための具体的な方法まで解説します。

この記事でわかること
  • 理学療法士が「オワコン」「将来性がない」と言われる本当の理由
  • 需要と供給の現状・将来予測をデータで見た実態
  • 都市部と地方で異なる就職・転職のしやすさ
  • 後悔しやすいポイントと、それでも将来性があると言える理由
  • これからの理学療法士が生き残るための具体的な戦略
目次

理学療法士が「オワコン」「将来性がない」と言われる理由

まずは、なぜ理学療法士に対してネガティブな評価がされるようになったのか、その背景を整理します。

供給過多で就職・転職の競争が激化している

理学療法士の養成校は2000年代に急増しました。日本理学療法士協会の統計によると、国家試験合格者の累計は24万7,546人(令和8年度時点)、厚生労働省の統計データでは実際の就業者数は20万2,540人(令和2年国勢調査)とされています。「30万人を超えている」という情報がSNSやブログで広まっていますが、公的統計をもとに見る限りは正確ではなく、現時点では約20万〜25万人規模というのが実態に近い数字です。とはいえ、毎年1万1,000人前後の新規合格者が誕生し続けているのは事実で、資格を持っているだけでは希少性を発揮しにくい状況になりつつあります。特に都市部では求人1件に対して応募が集中しやすく、「就職先が見つかりにくい」「思うような条件で転職できない」という声につながっています。

診療報酬・介護報酬の引き下げで昇給が鈍化している

理学療法士の給与の多くは、診療報酬・介護報酬という公定価格に依存しています。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、理学療法士の平均年収は443.6万円(全国・平均年齢36.2歳)となっており、全産業平均と比べると高い水準とは言えません。医療費・介護費の抑制方針が続くなかで、報酬の引き下げや算定要件の見直しが行われると、医療機関や介護施設の経営が厳しくなり、結果として職員の昇給ペースが鈍りやすい構造があります。病院・施設勤務では年間の昇給額が数千円程度にとどまるケースも珍しくなく、「長く働いても年収が大きく伸びない」という不満が「将来性がない」という言葉につながっています。

AI・ロボット技術の台頭による将来への不安

VRを活用したリハビリプログラムや、ロボットアシストによる運動療法など、リハビリ領域でもテクノロジーの活用が進んでいます。こうした技術革新を見て「将来的に理学療法士の仕事が代替されるのでは」と不安を感じる人もいます。ただし、評価・治療方針の決定・対人コミュニケーションを伴うリハビリの中核部分は、現時点でもテクノロジーだけで完結するものではありません。

新人PT
新人PT

養成校が増えて理学療法士がこんなに多いなんて知りませんでした…。もう遅いんでしょうか?

ベテランPT
ベテランPT

数が増えたのは事実だよ。でも「数が多い=将来性がない」とは限らないんだ。需要と供給、それぞれの動きを分けて見ていくことが大事だよ。

データで見る理学療法士の需要と供給の現状

高齢化と地域包括ケアの推進で需要は年々拡大

日本は世界有数の高齢化社会であり、転倒・骨折・脳卒中・慢性疾患などでリハビリを必要とする高齢者は増加を続けています。厚生労働省が推進する「地域包括ケアシステム」の下では、住み慣れた地域で暮らし続けるための在宅医療・在宅介護が重視されており、訪問リハビリ・通所リハビリはその中心的な役割を担うため、理学療法士の活躍の場は広がり続けています。

養成校の増加で供給も拡大。ただし近年は定員の伸びが鈍化

一方の供給サイドは、養成校の増加によって長らく右肩上がりが続いてきました。もっとも、日本理学療法士協会の統計では、養成校数は令和7年度時点で278校・入学定員14,989人となっており、令和3年度(279校・定員14,574人)と比べるとほぼ横ばいで推移しています。「供給が際限なく増え続ける」わけではなく、養成校の拡大ペース自体は近年落ち着きつつあるという点は見落とされがちなポイントです。

都市部は飽和、地方は人材不足という二極化

ただし、需要と供給のバランスは全国一律ではありません。都市部では理学療法士が飽和状態にある一方、地方や離島では依然として人材不足が深刻です。「どこで働くか」によって、就職・転職のしやすさは大きく変わります。

比較項目都市部地方・郊外
供給の状況飽和傾向・求人競争が激しい人材不足が続く地域が多い
就職・転職のしやすさ選考のハードルが上がりやすい比較的採用されやすい
給与・処遇の傾向横並びで上がりにくい処遇改善で好条件のケースもある
訪問リハビリの需要事業所間の競争が激しい担い手不足でニーズが強い

現在の有効求人倍率は4.53倍|「今はまだ人手不足」という現実

POINT

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)によると、理学療法士の有効求人倍率は4.53倍(令和6年度・全国)となっています。倍率が1を大きく上回っているのは、求職者1人に対して求人が4件以上あるということであり、少なくとも現時点では「働き口がない」状態ではなく、むしろ人手不足の側面が強いのが実態です。同サイトの解説でも「理学療法士の数も増加傾向にあるが、依然として人材が不足している」と明記されています。ただし、有効求人倍率は2021年頃をピークに緩やかな低下傾向にあるとの指摘もあり、今後の動向は注視が必要です。

将来予測|需要と供給のバランスはどうなる?

需要は今後も高水準で推移する見込み

高齢者人口の増加により、リハビリの需要は今後も確実に伸びると予測されています。とりわけ訪問リハビリ・通所リハビリの需要は高まり続けると見られます。

厚生労働省の推計|2040年には供給が需要の約1.5倍に

「オワコン」論の根拠としてよく引用されるのが、厚生労働省「理学療法士・作業療法士需給分科会」による推計です。この分科会が示した資料では、理学療法士・作業療法士の供給数は2040年頃に需要数の約1.5倍になるとの推計が示されています(2019年公表、2022年の医療従事者の需給に関する検討会でも改めて言及)。つまり「今すぐオワコン」なのではなく、2040年前後を境に需給バランスが逆転していく可能性が高い、という将来予測の話だと理解すると実態を把握しやすくなります。

時期需給バランスの状況
現在(令和6年度時点)有効求人倍率4.53倍。全国平均では依然として人手不足の側面が強い
2040年頃(厚労省推計)供給数が需要数の約1.5倍に達し、供給過多へ転じる見込み

供給の増加スピードが需要を上回る可能性

養成校の定員自体はここ数年横ばいですが、これまでの累計合格者数の積み上がりと、地域包括ケアの進展にともなう需要拡大のペースを比べると、長期的には供給の伸びが需要の伸びを上回っていく可能性が高いと見られています。都市部を中心に、今後さらに競争が激しくなることが予想されます。

専門性・差別化がこれまで以上に重要になる

POINT

理学療法士の数が増えるなかで、一般的なスキルだけでは差別化が難しくなっています。特定の専門分野に強みを持つ理学療法士や、管理職・教育職・研究職などのキャリアに進む人材が、今後より高く評価される傾向にあります。

需要と供給のアンバランスが生む課題

就職難や給与の伸び悩み

理学療法士が増えすぎることで、都市部を中心に就職難が起きる可能性があります。また供給過多によって給与水準が上がりにくくなる懸念も指摘されています。

地域格差の拡大

都市部と地方では需要と供給のバランスが異なり、地方の人材不足が深刻化するおそれがあります。都市部での競争が厳しい一方、地方では比較的就職しやすく、処遇が改善されるケースもあります。

職域拡大の必要性

注意

需要の高まりに応えるためには、従来の病院・施設にとどまらず、企業や地域活動、学校教育など新しいフィールドでの活躍が求められます。「病院・施設だけがキャリアの選択肢」という考え方のままでは、将来の選択肢が狭まってしまう点には注意が必要です。

「オワコン」と感じやすい人の特徴|後悔ポイントから見る課題

実際に理学療法士として働くなかで「思っていたのと違った」「こんなはずじゃなかった」と感じる人には、共通するポイントがあります。

  • 初任給はそこそこでも、その後の昇給がほとんど期待できない
  • 職場によっては勤務時間外の勉強会・研修が半強制的にある
  • 患者・多職種とのコミュニケーションに強いストレスを感じる
  • 資格保有者が増えすぎて、資格だけでは希少性を発揮しにくい
  • 役職ポストが少なく、長年働いても昇進のチャンスが巡ってこない

これらはいずれも、業界全体の構造的な課題によるものです。「自分の努力不足」と捉えすぎず、まずは業界の傾向として理解しておくことが大切です。

それでも理学療法士に将来性があると言える理由

課題がある一方で、理学療法士という仕事には他の職業にはない魅力もあります。

患者さんから直接感謝される、やりがいの大きい仕事

リハビリを通じて患者さんの身体機能が回復し、「歩けるようになった」「日常生活が楽になった」と喜ぶ姿を間近で見られるのは、理学療法士ならではの魅力です。

国家資格として全国どこでも働ける

理学療法士の資格は国家資格であり、日本全国どこでも通用します。結婚や引っ越しで居住地が変わっても、病院・介護施設・訪問リハビリなど働き口を見つけやすく、地方では医療従事者不足を背景に歓迎されるケースも多くあります。

働き方次第で年収を伸ばせる余地がある

病院・施設勤務では昇給が緩やかでも、訪問リハビリへの転職や自費リハビリへの展開など、働き方を工夫することで年収を伸ばす余地は十分にあります。「理学療法士=将来性がない」と一括りにするのではなく、需要が伸びている分野に自ら動いていく姿勢が今後ますます重要になります。

新人PT
新人PT

供給過多って聞くと不安になりますが、悲観しなくていいんですね。

ベテランPT
ベテランPT

そうだね。「数が増えているから厳しい」ではなく、「需要が高い分野で専門性を活かす」という前向きな戦略を立てることが大切なんだ。

理学療法士が将来生き残るために必要なこと

専門分野のスキルを磨く

脳卒中、運動器、呼吸器、スポーツリハなど、自分の専門分野を深め「この領域なら強い」と言える強みを持つことが重要です。

訪問リハ・在宅分野での経験を積む

今後需要が伸びる分野は在宅医療・地域リハビリです。訪問リハビリや通所リハビリの経験は、キャリア形成における大きな武器になります。

マネジメント能力を身につける

理学療法士の数が増えるなかで、チームをまとめるリーダーシップやマネジメントスキルを持つ人材が重宝されます。

ダブルライセンスで希少価値を高める

理学療法士の資格だけでは競争が激しくなっているため、他の専門資格と組み合わせて希少価値を高めるのも有効です。

資格組み合わせるメリット
鍼灸師(はり師・きゅう師)自費施術が可能になり、保険制度に縛られない収入源を作れる
パーソナルトレーナースポーツリハビリ・コンディショニング分野へ進出しやすくなる
ケアマネージャー(介護支援専門員)介護施設の管理職や訪問リハビリの管理者を目指しやすくなる
医療経営士病院・介護施設の経営側に回り、収入アップを狙える

収入源を複線化する|副業・資産形成・自費リハビリ

本業だけで収入を伸ばしにくい構造だからこそ、複数の収入源を持つ発想が大切です。

  1. 訪問リハビリの副業・アルバイト本業と並行してスポットで働けるため、月数万円の副収入につながりやすい。
  2. ストレッチ指導・パーソナルトレーナー業スポーツ経験を活かし、単価の高いサービスを提供できる。
  3. YouTube・ブログ・SNSでの情報発信リハビリ・健康分野の情報発信は、長期的な収益化につながる可能性がある。
  4. NISA・iDeCoによる資産形成税制優遇を受けながら長期的に資産を積み立て、将来の経済的不安を減らす。
  5. 自費リハビリ分野への進出保険診療の制約を受けず、自由な料金設定で高単価サービスを提供できる。

また、理学療法士としての知識や経験を活かしながら、施設運営・医療機器メーカーの営業職・医療系ライター・訪問リハビリ事業所の開業など、リハビリ職以外のキャリアに広げる選択肢もあります。

よくある質問

理学療法士は本当にオワコンですか?

職業自体がなくなるわけではありません。供給が増えて競争が激しくなっているのは事実ですが、高齢化や在宅医療の推進により需要も引き続き高い水準にあります。「オワコン」というより「専門性や働き方が問われる時代になった」と捉えるのが実態に近いといえます。

理学療法士の将来性はどのくらいありますか?

高齢者人口の増加が続く限り、リハビリ需要そのものはなくなりません。特に訪問リハビリ・通所リハビリなど在宅分野の需要は高まる見込みです。一方で供給も増え続けるため、専門性を高めたり働き方を工夫したりする人ほど、将来性を実感しやすくなります。

これから理学療法士を目指しても遅くないですか?

遅くはありません。国家資格として全国どこでも働けること、患者さんから直接感謝される仕事であることは変わらない魅力です。ただし「資格を取ればそれで安泰」という時代ではないため、在学中から専門分野や将来のキャリアプランを意識しておくと安心です。

供給過多の状態はいつまで続きますか?

現時点(令和6年度)の有効求人倍率は4.53倍で、全国平均では依然として人手不足の側面が強い状況です。一方、厚生労働省の需給分科会は2040年頃に供給数が需要数の約1.5倍になると推計しており、長期的には供給過多に転じる可能性が高いとされています。都市部では当面から競争が続く地域もあり、地域差が大きい点を踏まえて就職・転職先を検討することが重要です。

給料が上がらない理学療法士はどうすればいいですか?

訪問リハビリへの転職、自費リハビリへの展開、ダブルライセンスの取得、副業や資産形成による収入源の複線化など、複数の対策を組み合わせることが有効です。本業の給与だけに頼らない働き方を検討してみましょう。

まとめ|理学療法士はオワコンではなく「戦略が問われる時代」

理学療法士の需要と供給を整理すると、次のようになります。

この記事のまとめ
  • 有効求人倍率は4.53倍(令和6年度)と、現時点では人手不足の側面が強い
  • 厚労省の推計では2040年頃に供給が需要の約1.5倍となり、長期的には供給過多に転じる見込み
  • 養成校の定員はここ数年横ばいで、「無限に増え続ける」わけではない
  • 地域格差が大きく、都市部は競争が激しい一方、地方・在宅分野では人材不足が続いている
  • 「オワコン」「将来性がない」は業界構造・時間軸の問題であり、個人の努力不足ではない
  • 専門性・マネジメント力・複線化した収入源を持つことが、これからの生き残り戦略になる

「数が増えているから厳しい」というネガティブな視点だけでなく、「需要が高い分野で専門性を活かす」という前向きな戦略を立てることが大切です。需要と供給のバランスを正しく理解し、これからのキャリア形成に役立ててください。

出典:日本理学療法士協会「統計情報」(都道府県別会員数・国家試験合格者の推移・養成校数の推移)/厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「理学療法士(PT)」(就業者数・有効求人倍率・賃金構造基本統計調査データ)/厚生労働省「理学療法士・作業療法士需給分科会」資料(2019年)・医療従事者の需給に関する検討会資料(2022年)

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