有料老人ホームに訪問リハビリは行ける?住宅型・介護付きの違い

「有料老人ホームに入居している人に、訪問リハビリって行けるんですか?」——ケアマネジャーや施設職員、ご家族からよく受ける質問です。答えは「有料老人ホームの種類と、使う保険によって変わる」です。同じ有料老人ホームでも、住宅型と介護付きでは扱いがまったく違います。
この記事では、有料老人ホームへの訪問リハビリについて、介護保険・医療保険・自費(保険外)の3つのパターンごとに、厚生労働省の通知をもとに整理します。訪問できない場合の代わりの方法や、住宅型有料老人ホームに訪問するときの減算・連携の注意点まで、訪問リハビリの事業所が実務で迷わない内容にしています。
- 有料老人ホームに訪問リハビリが行けるかどうかの結論(種類別の早見表)
- 介護付き有料老人ホームで介護保険の訪問リハビリが使えない理由
- 住宅型有料老人ホームに訪問するときの減算と連携のポイント
- 医療保険の訪問リハビリが使えるケース(急性増悪時の14日間など)
- 自費(保険外)の訪問リハビリと、施設負担で外部リハを入れる方法
有料老人ホームに訪問リハビリは行ける?結論は「種類と保険で決まる」
有料老人ホームは、大きく介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームに分かれます(このほか、介護が必要になったら退去が前提の健康型もあります)。訪問リハビリが行けるかどうかを分けるのは、名前ではなく、入居者が介護保険の「特定施設入居者生活介護」を受けているかどうかです。
| ホームの種類 | 介護保険の訪問リハ | 医療保険の訪問リハ | 自費の訪問リハ |
|---|---|---|---|
| 住宅型有料老人ホーム | ○ 自宅と同じく利用できる | 要介護認定者は原則×(急性増悪時のみ○) 認定のない人は○ | ○ ホームの了承を得て可能 |
| 介護付き有料老人ホーム (特定施設入居者生活介護を利用) | × 算定できない (施設の費用負担による利用は可) | 原則×(急性増悪時のみ○) | ○ ホームの了承を得て可能 |

介護付きでも住宅型でも、どちらも「自宅扱い」だと思っていました。

住まいとしてはどちらも居宅扱いなんだけど、介護付きの入居者は、ホームから特定施設入居者生活介護という「包括的な介護サービス」を受けている。その間はほかの居宅サービスを介護保険で重ねて使えない、というルールがあるんだ。
まず確認するのは「その入居者は特定施設入居者生活介護を受けているか」。受けていれば介護保険の訪問リハビリは算定不可、受けていなければ自宅と同じと覚えておくと判断が早くなります。
介護付き有料老人ホームとは
介護付き有料老人ホームは、都道府県などから特定施設入居者生活介護の指定を受けたホームです。入居者は、ホームの職員から食事・入浴・排せつなどの介護や機能訓練を受け、介護保険からは特定施設入居者生活介護費として包括的に報酬が支払われます。
住宅型有料老人ホームとは
住宅型有料老人ホームは、食事や生活支援などのサービスがついた高齢者向けの住まいです。介護が必要になった場合は、入居者が自宅で暮らす人と同じように、外部の訪問介護・訪問看護・訪問リハビリ・デイサービスなどと個別に契約して利用します。
介護付き有料老人ホームに介護保険の訪問リハビリは行けない理由
介護報酬の算定ルールを定めた留意事項通知(いわゆる老企第36号)では、特定施設入居者生活介護や認知症対応型共同生活介護(グループホーム)などを受けている間は、その他の居宅サービス・地域密着型サービスの介護給付費(居宅療養管理指導費を除く)は算定しないとされています。
つまり、介護付き有料老人ホームの入居者に訪問リハビリを提供しても、訪問リハビリ費を介護保険に請求することはできません。特定施設入居者生活介護の報酬の中に、介護や機能訓練が含まれていると考えるとわかりやすいでしょう。
例外:ホームの費用負担で外部の訪問リハビリを入れる
同じ通知では、特定施設入居者生活介護の提供に必要がある場合に、その事業者(ホーム)の費用負担で、入居者にほかの居宅サービスを利用させることは差し支えないとされています。たとえば、ホームが訪問リハビリ事業所と委託契約を結び、ホームが費用を支払って、入居者に専門的なリハビリを提供するという形です。
- 費用はホームが負担し、介護保険への請求や利用者への1〜3割負担の請求は発生しない
- 契約はホームと事業所の間で結び、委託内容・料金・記録の扱いを決めておく
- リハビリの内容は、ホームの特定施設サービス計画(ケアプラン)と整合させる
外部サービス利用型の特定施設もある
特定施設には、ホームの職員が介護を行う「一般型」のほかに、ケアプランの作成などはホームが行い、介護サービスは外部の事業者に委託する「外部サービス利用型」もあります。外部サービス利用型の場合も、利用者が訪問リハビリ事業所と直接契約して介護保険で使う形ではなく、ホームからの委託として提供される点に注意が必要です。契約の形は個別に確認しましょう。

退去して住宅型に移った月はどうなりますか?

特定施設入居者生活介護を受けている「間」は算定できない、という考え方だから、退去後に自宅や住宅型で暮らし始めた日からは、ケアプランに位置づければ訪問リハビリを算定できるよ。月の途中で切り替わるときは、入退居の日付と算定日が重ならないように確認しておこう。
住宅型有料老人ホームなら介護保険の訪問リハビリが利用できる
住宅型有料老人ホームの入居者は、特定施設入居者生活介護を受けていないため、自宅で暮らす人と同じ条件で介護保険の訪問リハビリを利用できます。利用までの流れも基本的に同じです。
- ケアマネジャーに相談する住宅型の入居者は、居宅介護支援事業所のケアマネジャーがケアプランを作成します。ホームの併設事業所のケアマネジャーであることも多いです。
- 医師の診療と指示を受ける原則として訪問リハビリ事業所の医師が診療し、指示を出します。事業所の医師が診療せず、事業所外の医師から情報提供を受けて行う場合は、診療未実施減算(1回50単位)の対象になります。
- リハビリ計画を作成して開始入居者の居室や共用部分の環境を評価し、目標を決めてリハビリを始めます。
同一建物減算に注意する
住宅型有料老人ホームへの訪問で特に注意したいのが、いわゆる同一建物減算です。訪問リハビリでは、事業所と同一の敷地内や隣接する敷地内の建物に住む利用者、または利用者が20人以上住む建物の利用者にサービスを提供した場合、所定単位数の10%が減算されます。さらに、同一敷地内建物等に住む利用者が50人以上の場合は15%の減算です。
ホームと訪問リハビリ事業所が同じ法人・同じ敷地にあるケースは少なくありません。対象となる建物と利用者数を毎月確認し、減算の適用漏れがないようにしておきましょう。適用漏れは運営指導で返還の対象になります。
ホームの職員との連携が成果を左右する
住宅型のホームには、生活相談員や介護職員がいることが多く、入居者の日中の様子をよく知っています。訪問リハビリで練習した動作を、ホームの生活の中でどう続けてもらうかが成果を左右します。
- 居室からトイレ・食堂までの移動手段(歩行器・車いすなど)と介助方法を共有する
- ベッドの高さ、手すりの位置、家具の配置など、居室の環境調整を提案する
- 転倒リスクの高い時間帯(夜間のトイレなど)の注意点を伝える
- ホームの介護職員や訪問介護のヘルパーに、自立を促す声かけの方法を伝える
有料老人ホームで医療保険の訪問リハビリは使える?
医療保険の訪問リハビリ(在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料)は、要介護・要支援の認定を受けているかどうかで扱いが大きく変わります。
要介護認定を受けている人は原則として介護保険が優先
医療保険と介護保険の給付調整に関する通知では、在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料は、要介護被保険者等である患者については原則として算定できないとされています。ただし、急性増悪などで一時的に頻回の訪問リハビリが必要な場合は、6月に1回、14日間に限り医療保険で算定できます。
この扱いは、自宅で暮らす人だけでなく、グループホームや特定施設(介護付き有料老人ホームなど)の入居者でも同様に整理されています。つまり、介護付き有料老人ホームの入居者であっても、急性増悪時の14日間に限っては、医療保険の訪問リハビリの対象になりえます。
要介護認定を受けていない人は医療保険で利用できる
住宅型有料老人ホームには、要介護認定を受けていない入居者もいます。こうした人が通院困難で、医師が訪問リハビリが必要と判断した場合は、医療保険の訪問リハビリを利用できます。
| 入居者の状態 | 医療保険の訪問リハ |
|---|---|
| 要介護・要支援の認定なし | 通院困難で医師が必要と認めれば利用可 |
| 要介護・要支援の認定あり(通常時) | 原則不可(介護保険の訪問リハビリを利用) |
| 要介護・要支援の認定あり(急性増悪時) | 6月に1回、14日間に限り利用可 |

介護付きの入居者さんでも、肺炎の後などは医療保険で入れることがあるんですね。

そう。ただし要件を満たすかどうかは主治医の判断と診療報酬のルール次第だから、「入れるはず」と思い込まずに、医療機関の事務や主治医と事前に確認しておくことが大切だよ。
自費(保険外)の訪問リハビリは有料老人ホームでも可能
介護保険・医療保険の制約を受けない自費(保険外)の訪問リハビリであれば、住宅型・介護付きのどちらの有料老人ホームにも訪問できます。保険のリハビリでは回数や時間が足りない人や、特定の目標(旅行に行きたい、趣味を再開したいなど)に向けて集中的に取り組みたい人に向いています。
自費の訪問リハビリで確認しておきたいこと
- ホームの了承:外部の事業者が出入りするため、事前にホームの管理者の了承を得て、訪問日時や連絡方法を決めておく
- ケアプランとの関係:ホームのケアマネジャーやケアプランの内容と矛盾しないよう、目標や実施内容を共有する
- 医師との連携:リハビリの内容によっては医師の指示が必要になるため、主治医との連携体制を確認しておく
- 料金と契約:料金・キャンセル規定・事故時の対応を契約書で明確にしておく
介護保険の訪問リハビリと自費のサービスを組み合わせて提供する場合は、保険のサービスと保険外のサービスを明確に区分し、利用者に料金や内容を説明して同意を得る必要があります。区分があいまいだと、保険給付の対象を自費で請求したと受け取られるおそれがあります。
有料老人ホームへの訪問リハビリでPT・OT・STができること【実践編】
有料老人ホームは、自宅と比べて生活環境が整っている一方で、「やってもらえる環境」になりやすく、活動量が落ちやすいという特徴があります。訪問リハビリのリハ職には、ホームでの生活全体を見た支援が求められます。
ホームの生活に合わせた目標設定
ホームでは食事・入浴・行事などのスケジュールが決まっています。「食堂まで歩いて行ける」「レクリエーションに参加できる」「居室のトイレを一人で使える」など、ホームの生活の中で意味のある目標を立てると、本人の意欲もホーム職員の協力も得やすくなります。
記録の書き方の例
ホームの職員と情報を共有するときは、専門用語を避け、誰が読んでもわかる言葉で書くことが大切です。
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| 移動 | 居室から食堂まで歩行器で見守り歩行が可能。方向転換時のみ後方から声かけを |
| トイレ | 夜間は居室のポータブルトイレを使用。立ち上がり時はベッド柵を把持 |
| お願いしたいこと | 食事の前後に、食堂の椅子からの立ち上がりを1回ずつ自分で行うよう促してください |
訪問できないケースでも関われる方法
介護付き有料老人ホームの入居者で、介護保険の訪問リハビリが使えない場合でも、ホームの費用負担による委託や、急性増悪時の医療保険の訪問リハビリ、自費のリハビリといった選択肢があります。「行けません」で終わらせず、使える方法をケアマネジャーやホームと一緒に整理することが、利用者にとっての最善につながります。
よくある質問
介護付き有料老人ホームの入居者に、介護保険で訪問リハビリを提供するとどうなりますか?
特定施設入居者生活介護を受けている間は、訪問リハビリ費を算定できません。請求した場合は返還の対象になります。必要な場合は、ホームの費用負担による委託など、別の方法を検討します。
住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅は同じ扱いですか?
どちらも、特定施設入居者生活介護の指定を受けていなければ、入居者は自宅と同じように外部の訪問リハビリを介護保険で利用できます。サービス付き高齢者向け住宅の中にも特定施設の指定を受けているものがあるため、名称ではなく指定の有無で確認しましょう。
住宅型有料老人ホームでは、必ず同一建物減算がかかりますか?
必ずではありません。事業所と同一の敷地内・隣接する敷地内の建物に住む利用者、または利用者が20人以上住む建物の利用者にサービスを提供した場合に10%(同一敷地内建物等で50人以上なら15%)が減算されます。ホームと事業所の位置関係と、その建物の利用者数で判断します。
医療保険の訪問リハビリを使える「急性増悪」とはどんな状態ですか?
肺炎や骨折、病状の悪化などで、一時的に頻回の訪問リハビリが必要になった状態が想定されています。該当するかどうかは主治医が判断し、算定は6月に1回、14日間が限度です。
ホームの機能訓練と訪問リハビリは何が違いますか?
介護付き有料老人ホームの機能訓練は、特定施設入居者生活介護のサービスの一部として、ホームの機能訓練指導員などが行います。訪問リハビリは、医師の指示に基づき、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が個別に行う専門的なリハビリです。どちらが適しているかは、目標と状態によって異なります。
まとめ|有料老人ホームへの訪問リハビリは「特定施設かどうか」で判断する
有料老人ホームに訪問リハビリが行けるかどうかは、ホームの種類と、入居者が特定施設入居者生活介護を受けているかどうかで決まります。介護保険で行けない場合でも、ホームの費用負担による委託、急性増悪時の医療保険、自費といった選択肢があります。
- 住宅型有料老人ホームは自宅と同じく介護保険の訪問リハビリを利用できる
- 介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)の入居者には、訪問リハビリ費を算定できない
- ただし、ホームの費用負担で外部の訪問リハビリを利用させることは可能
- 医療保険の訪問リハビリは、要介護認定者は原則不可。急性増悪時は6月に1回・14日間まで可
- 自費の訪問リハビリは、ホームの了承を得ればどちらの種類にも訪問できる
- 住宅型への訪問では、同一建物減算(10%・15%)の適用を毎月確認する
契約や算定の扱いで迷う場合は、ケアマネジャー、ホームの管理者、指定権者(都道府県・市町村)に確認してから進めましょう。
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準…の制定に伴う実施上の留意事項について」(老企第36号)改正(介護保険最新情報Vol.1213)
- 厚生労働省「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正(令和8年3月27日)
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第259回)資料4「訪問リハビリテーション」
※2026年10月時点で確認した情報です。制度は改定されるため、算定・運用の際は最新の通知・Q&Aと指定権者(都道府県・市町村)の案内をご確認ください。

