利用者から物をもらう時の上手な断り方とは?

介護サービスでは利用者から物を渡される場面がある
訪問リハビリや訪問看護、訪問介護、そしてケアマネージャーとして働く中で、利用者さんから物を渡される場面は少なくありません。このような状況は、利用者さんが感謝や親しみを表すために自然に起こり得ることです。特に、長期間にわたる関係性の中で信頼関係が深まると、何かしらの形で「お礼をしたい」という気持ちが利用者やそのご家族に芽生えることがあります。
具体的には、自宅で採れた野菜や果物、小さなお菓子、手作りの品などが挙げられます。また、特別な行事や季節のイベント、例えばバレンタインデーやホワイトデーなどの機会にも、感謝の気持ちを込めて何かを渡そうとするケースもあります。しかし、専門職としてこうした贈り物をどのように対応すべきかは、非常に重要な課題です。
贈り物を受け取ることが一見無害に思える場合でも、職業上の倫理や法律、施設の規定に抵触する可能性があります。そのため、この問題を適切に対処することは、サービス提供者として信頼関係を維持しながら、誤解を避けるために非常に重要です。
利用者さんから渡される物の具体例
利用者さんから渡される物は多岐にわたります。
以下にその代表例を挙げてみます。
- お茶や飲み物
訪問の際に、冷たいお茶やコーヒーなどを提供されることがあります。特に暑い夏や寒い冬には、温かい飲み物や冷たい飲み物を勧められることが多いです。 - 家でとれた野菜や果物
利用者さんの中には家庭菜園や農作業を趣味としている方も多く、自分で育てた野菜や果物をお裾分けしたいという気持ちから渡してくることがあります。 - 菓子や手作りの品
小さなお菓子や、時には手作りのお惣菜、工芸品などを渡してくれるケースも見られます。こうした品は利用者さん自身の時間と労力が込められており、気持ちの表れです。 - バレンタインデーやホワイトデーのギフト
季節行事として、チョコレートやクッキーなどのギフトを渡してくる方もいます。こうした贈り物は、特別な行事を共有したいという思いから来るものです。 - 看取り後の挨拶やお礼の品
サービス終了後、特に看取りを経た場合には、ご家族からお礼として品物を渡されることもあります。
これらの贈り物には悪意は一切なく、むしろ善意や感謝が込められています。
ただし、受け取ることによって不適切な印象を与える可能性もあるため、適切な対応が求められます。
利用者から物をもらう時の上手な断り方
利用者から物をもらう時の上手な断り方をいくつか紹介します。
なかなか断ることが難しいかもしれませんが、ぜひ、使い分けて活用してみてください。
一度もらうとNG!最初の説明が肝心
利用者さんから物をもらうことを避けるためには、初回訪問の際にきちんと説明しておくことが重要です。例えば、「会社の規則で、物を受け取ることができない決まりになっています」と明確に伝えることで、後々の誤解や期待を防ぐことができます。一度受け取ってしまうと、それが前例となり、次回以降も期待される可能性があります。そのため、最初の段階での説明が肝心です。
感謝の気持ちをしっかり伝えた上で断る
贈り物を断る際は、まず相手の気持ちに感謝を示すことが大切です。「お気持ちが本当に嬉しいです。ありがとうございます」といった言葉を最初に述べることで、相手が拒否されたと感じることを防げます。その上で、「規則で受け取れないんです」と丁寧に理由を伝えましょう。
施設や会社の方針を理由にする
個人の理由ではなく、施設や会社の規則を理由にすることで、断る際の負担を減らすことができます。「弊社では、全てのスタッフが贈り物を受け取らないという方針を取っています」と伝えることで、利用者さんも納得しやすくなります。このように、規則を盾にすることは、プロフェッショナルな姿勢を示す手段でもあります。
相手の善意を肯定的に捉える
贈り物を渡そうとする行為自体には、相手の善意や感謝の気持ちが込められています。そのため、断る際には「そのお気持ちが本当に嬉しいです」と言葉で善意をしっかりと認めることが重要です。これにより、相手の気持ちを無下にすることなく、断ることができます。
利用者や家族に役立つ別の提案をする
断るだけでなく、代替案を提案することで、相手の気持ちを受け止めつつも物を受け取らずに済む方法があります。例えば、「そのお気持ちを、他の方々のために寄付されるのはいかがでしょうか?」や「地域のイベントで皆さんと共有されては?」などの案を出すことで、前向きな方向に話を進められます。
まとめ
訪問リハビリや訪問看護の現場で、利用者から物を渡される場面は避けられないことがあります。
しかし、専門職としての立場を守るためには、最初の説明を徹底し、感謝を示しつつも規則に従って断ることが求められます。
また、相手の気持ちを大切にしながら、代替案を提案することで、円満な関係を維持することができます。
利用者やご家族との信頼関係を保ちながら、プロとして適切な行動を心がけましょう。