サ高住に訪問リハビリは行ける?介護型の例外と同一建物減算

「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に、訪問リハビリって行けるんですか?」——訪問リハビリを始めると、必ずといっていいほど出てくる疑問です。結論からいうと、多くのサ高住は「自宅(居宅)」扱いのため、介護保険の訪問リハビリを利用できます。ただし、特定施設の指定を受けた「介護型」のサ高住は例外です。
この記事では、サ高住に訪問リハビリが行けるかどうかの判断方法を、高齢者住まい法や介護報酬のルールをもとに整理します。さらに、同一建物減算・事業所選択の自由・サ高住スタッフとの連携・感染対策など、訪問リハビリの事業所が実際にサ高住へ訪問するときの注意点を、現場目線で解説します。
- サ高住に訪問リハビリが行けるかどうかの結論と判断のポイント
- 一般型サ高住と介護型サ高住(特定施設)の違い
- サ高住への訪問で注意したい同一建物減算の考え方
- 医療保険の訪問リハビリが使えるケース
- サ高住スタッフとの連携、感染対策、訪問時のマナー
- サ高住でのリハビリで成果を出すためのPT・OT・STの工夫
サ高住に訪問リハビリは行ける?結論は「一般型なら利用できる」
サ高住は、「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」にもとづいて都道府県知事などの登録を受けた、高齢者向けの賃貸住宅(または有料老人ホーム)です。登録を受けるサ高住では、状況把握サービス(安否確認)と生活相談サービスが提供されます。
サ高住は施設ではなく「住まい」なので、入居者は自宅で暮らす人と同じように、外部の訪問リハビリ・訪問看護・訪問介護・デイサービスなどを介護保険で利用できます。
| サ高住のタイプ | 介護サービスの受け方 | 介護保険の訪問リハ |
|---|---|---|
| 一般型(特定施設の指定なし) | 入居者が外部の事業所と個別に契約し、使った分だけ利用料を支払う | ○ 利用できる |
| 介護型(特定施設入居者生活介護の指定あり) | サ高住の職員が介護を行い、介護費用は要介護度に応じた定額 | × 算定できない(事業者の費用負担による利用は可) |

サ高住って全部「自宅扱い」だと思っていました。介護型もあるんですね。

数としては一般型が多いけど、特定施設入居者生活介護の指定を受けているサ高住もあるんだ。その場合は介護付き有料老人ホームと同じで、入居中は訪問リハビリ費を算定できない。名前ではなく「特定施設の指定があるか」で判断しよう。
サ高住への訪問依頼を受けたら、まず「特定施設入居者生活介護の指定を受けているか」をケアマネジャーやサ高住に確認しましょう。指定がなければ自宅と同じ扱い、指定があれば介護保険の訪問リハビリは使えません。
介護型サ高住(特定施設)に訪問リハビリが行けない理由
介護報酬の留意事項通知(いわゆる老企第36号)では、特定施設入居者生活介護を受けている間は、その他の居宅サービス・地域密着型サービスの介護給付費(居宅療養管理指導費を除く)は算定しないとされています。介護型サ高住の入居者は、サ高住から包括的に介護サービスを受けているため、訪問リハビリを重ねて介護保険で算定することはできません。
ただし同じ通知で、特定施設入居者生活介護の提供に必要がある場合に、事業者(サ高住)の費用負担で、入居者にほかの居宅サービスを利用させることは差し支えないとされています。サ高住と訪問リハビリ事業所が委託契約を結び、サ高住が費用を支払う形であれば、専門的なリハビリを提供することは可能です。
サ高住で医療保険の訪問リハビリは使える?
医療保険の訪問リハビリ(在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料)は、要介護・要支援の認定を受けている人については原則として算定できません。介護保険の訪問リハビリが優先されるためです。
- 要介護・要支援の認定がある人:原則は介護保険の訪問リハビリ。急性増悪などで一時的に頻回の訪問リハビリが必要な場合に限り、6月に1回・14日間を限度に医療保険で算定できる
- 認定を受けていない人:通院が困難で、医師が訪問リハビリを必要と判断した場合は、医療保険で利用できる
サ高住には、自立や要支援の入居者も多く暮らしています。認定の有無によって使える保険が変わるため、依頼を受けた時点で確認しておきましょう。
なお、医療保険の訪問リハビリを利用する場合も、サ高住への訪問であることに変わりはありません。急性増悪で一時的に医療保険へ切り替わる期間は、介護保険の訪問リハビリ費は算定しないため、切り替えの開始日と終了日をケアマネジャー・主治医と共有し、請求が重複しないように管理しましょう。
サ高住に訪問リハビリで行くときの注意点①同一建物減算
サ高住への訪問で最も注意したいのが、いわゆる同一建物減算です。訪問リハビリでは、次の場合に所定単位数が減算されます。
| パターン | 対象となる利用者 | 減算 |
|---|---|---|
| ① | 事業所と同一の敷地内・隣接する敷地内の建物(同一敷地内建物等)に住む利用者(②に当たる場合を除く) | 10% |
| ② | 同一敷地内建物等に住む利用者が1月あたり50人以上の場合の、その建物の利用者 | 15% |
| ③ | ①以外の建物で、その建物に住む利用者が1月あたり20人以上の場合の、その建物の利用者 | 10% |
サ高住で減算になりやすいケース
サ高住は、同じ法人が訪問介護・訪問看護・訪問リハビリなどの事業所を併設・隣接させているケースが少なくありません。併設・隣接の事業所から訪問する場合はパターン①(50人以上なら②)、離れた事業所から訪問する場合でも、そのサ高住の利用者が月20人以上になればパターン③の対象です。
利用者数は月ごとに変動します。建物ごとの利用者数を毎月集計し、減算の要否を確認する仕組みを作っておきましょう。減算の適用漏れは、運営指導で過去にさかのぼって返還を求められる原因になります。
サ高住に訪問リハビリで行くときの注意点②事業所は利用者が選ぶ
サ高住では、運営法人の併設事業所を利用する入居者が多くなりがちです。しかし、介護保険のサービスは利用者が自分で選ぶものです。居宅介護支援の運営基準では、ケアマネジャーは、ケアプランが利用者の希望に基づいて作られることや、利用者は複数の事業者の紹介を求めることができることを説明しなければならないとされています。
「併設事業所を使わないと入居できない」「必要以上のサービスを組み込まれる」といった、いわゆる囲い込みは、利用者の選択を狭めるものとして問題視されています。訪問リハビリの事業所としても、本当にその利用者に訪問リハビリが必要かを医師の診療とアセスメントで判断し、必要性を記録で説明できるようにしておきましょう。

併設のサ高住だと、依頼がどんどん来ることもありますよね。

そうだね。だからこそ「通院やデイケアでは足りない理由」や「自宅での生活動作に課題がある理由」を、計画書や記録で明確にしておくことが大切。訪問リハビリは通院が困難な利用者が対象のサービスだからね。
サ高住に訪問リハビリで行くときの注意点③スタッフとの連携と感染対策
サ高住スタッフとの連携
サ高住のスタッフは、入居者の日々の様子をよく知る存在です。一人暮らしの入居者にとっては、家族に近い役割を担うこともあります。訪問リハビリの効果を生活に定着させるには、スタッフとの連携が欠かせません。
- 訪問日時と入館方法(受付・鍵の管理・入館記録)を事前に確認する
- 転倒歴、夜間の様子、食事量など、日常の変化をスタッフから聞き取る
- 練習した動作や注意点を、連絡ノートや電話でスタッフ・訪問介護と共有する
- 緊急時の連絡先と連絡手順(ケアマネジャー・家族・主治医)を確認しておく
感染対策
サ高住は住まいとしては居宅扱いですが、多くの高齢者が一つの建物で暮らしています。感染症が広がると影響が大きいため、訪問するスタッフも、建物単位での感染対策を意識する必要があります。
- サ高住内の感染症の発生状況を、訪問前に確認できる体制をつくる
- 複数の入居者を続けて訪問する場合は、手指衛生と物品の消毒を徹底する
- 流行時は訪問順序(体調不良者を最後にするなど)を調整する
- サ高住が定める面会・入館ルールに従う
共用部分でのリハビリ
サ高住の廊下・食堂・エレベーターなどの共用部分は、歩行練習や生活動作の練習に役立ちます。ただし、ほかの入居者の生活の場でもあるため、使用してよい場所や時間帯をサ高住と事前に確認し、ほかの入居者のプライバシーに配慮して行いましょう。
サ高住で訪問リハビリを始めるまでの流れと費用
一般型のサ高住の入居者が訪問リハビリを利用する流れは、自宅で暮らす人とほぼ同じです。ただし、サ高住ならではの確認事項がいくつかあります。
- ケアマネジャーに相談する入居者本人・家族、またはサ高住のスタッフからケアマネジャーに相談します。要介護・要支援の認定がまだの場合は、市町村への申請から始めます。
- サ高住のタイプと減算の有無を確認する特定施設の指定の有無、事業所との位置関係、その建物の利用者数を確認し、介護保険で算定できるか、同一建物減算がかかるかを整理します。
- 医師の診療を受ける訪問リハビリ事業所の医師が診療し、リハビリの必要性と内容を判断します。主治医からの情報提供も受けておくとスムーズです。
- 計画書を作成し、説明・同意を得て開始する居室や共用部分の環境を評価し、目標と内容を記載した計画書を作成します。説明・同意・交付を済ませてからサービスを開始します。
- サ高住スタッフと情報を共有する訪問日時、入館方法、生活上の注意点を共有し、日常生活での練習につなげます。
一般型と介護型で費用の払い方が違う
一般型のサ高住では、家賃・共益費・生活支援サービス費などの住まいの費用とは別に、利用した介護サービスの分だけ自己負担(原則1割、所得に応じて2割・3割)を支払います。訪問リハビリも、利用回数や加算・減算に応じて費用が決まります。ケアプランで利用する介護サービスの合計が、要介護度ごとの区分支給限度基準額を超えた分は全額自己負担になる点にも注意が必要です。
一方、介護型(特定施設)のサ高住では、介護サービスの費用は要介護度に応じた定額です。介護をたくさん受けても費用は大きく変わりませんが、外部の訪問リハビリを介護保険で追加することはできません。どちらのタイプが合うかは、必要な介護の量と、外部のリハビリを使い続けたいかどうかで考えるとわかりやすいでしょう。
サ高住での訪問リハビリでPT・OT・STができること【実践編】
サ高住の居室は、一般の住宅よりバリアフリー化されていることが多い一方で、「部屋にこもりがちになり、活動量が落ちる」という課題を抱えやすい環境です。訪問リハビリでは、居室の中だけでなく、建物全体での生活を見すえた支援が効果的です。
| 課題 | 訪問リハビリでの支援例 |
|---|---|
| 食堂まで歩けなくなってきた | 居室から食堂までの実際の動線で歩行練習。休憩できる場所や歩行補助具を提案 |
| 夜間のトイレで転倒しそう | ベッドの高さ、手すり、足元灯の位置を調整。夜間の動作を想定した練習 |
| 居室にこもりがち | サ高住のイベントや共用スペースの利用を目標に設定し、スタッフと参加を後押し |
| 入浴に不安がある | 居室の浴室または共用浴室での動作評価。福祉用具の選定と介助方法の共有 |
| 買い物や外出をしたい | エレベーターや玄関の出入り、近隣のスーパーまでの屋外歩行練習 |
介護型サ高住に移る場合も見すえる
状態が重くなると、介護型のサ高住や介護付き有料老人ホームへの住み替えを検討することもあります。その場合、介護保険の訪問リハビリは継続できなくなるため、住み替え前に、移行先での生活に必要な動作や介助方法を整理し、引き継ぎの情報を準備しておくと、本人の生活機能を守りやすくなります。
よくある質問
サ高住は「在宅」として扱われますか?
特定施設の指定を受けていない一般型のサ高住は、自宅と同じ居宅として扱われ、外部の介護サービスを介護保険で利用できます。特定施設の指定を受けた介護型のサ高住では、入居中は訪問リハビリなどの居宅サービス費を算定できません。
サ高住に住んでいれば、必ず同一建物減算がかかりますか?
必ずではありません。事業所と同一敷地内・隣接敷地内の建物に住む利用者か、それ以外の建物で利用者が月20人以上いる場合に10%(同一敷地内建物等で50人以上の場合は15%)が減算されます。事業所の位置とその建物の利用者数で判断します。
サ高住に併設の事業所以外の訪問リハビリを使えますか?
使えます。介護保険のサービスは利用者の希望に基づいて選ぶもので、利用者は複数の事業者を紹介するようケアマネジャーに求めることができます。
サ高住のスタッフに、リハビリの内容を伝えてもよいですか?
生活の中で練習を続けてもらうために共有は有効です。ただし個人情報の扱いになるため、利用者や家族の同意を得たうえで、必要な範囲で共有しましょう。
サ高住の入居者が通院できる場合でも、訪問リハビリを使えますか?
訪問リハビリは、通院が困難な利用者が対象のサービスです。通院や通所リハビリなどで同様のサービスが受けられる場合は、そちらが優先されると考えるのが基本です。自宅環境での動作に課題があるなど、訪問が必要な理由を医師の判断とともに記録しておきましょう。
サ高住の入居者が訪問リハビリとデイケアを併用できますか?
一般型のサ高住であれば、自宅で暮らす人と同様に、ケアプランに位置づけて併用することは可能です。ただし、通所リハビリで同様のサービスが受けられる場合は通所系が優先されるという考え方があるため、訪問リハビリが必要な理由(居室での動作の課題など)を明確にしておきましょう。
まとめ|サ高住への訪問リハビリは「特定施設の指定」と「減算」を確認
サ高住は多くの場合自宅と同じ扱いで、介護保険の訪問リハビリを利用できます。ただし、介護型(特定施設)のサ高住では算定できないこと、同一建物減算の対象になりやすいことに注意が必要です。サ高住スタッフと連携し、建物全体での生活を見すえたリハビリを提供しましょう。
- 一般型のサ高住は自宅と同じ扱いで、介護保険の訪問リハビリを利用できる
- 特定施設の指定を受けた介護型サ高住では、入居中は訪問リハビリ費を算定できない
- 医療保険の訪問リハビリは、要介護認定者は急性増悪時の14日間などに限られる
- 同一建物減算(10%・15%)の対象になりやすいため、毎月確認する
- 事業所は利用者が選ぶもの。訪問の必要性を記録で説明できるようにする
- スタッフとの連携と建物単位の感染対策が、サ高住訪問の成否を分ける
サ高住の契約形態や算定の扱いで迷う場合は、ケアマネジャー、サ高住の運営者、指定権者(都道府県・市町村)に確認しましょう。
- e-Gov法令検索「高齢者の居住の安定確保に関する法律」
- e-Gov法令検索「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第38号)
- 厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1213(令和6年度介護報酬改定に伴う留意事項通知の改正)
- 厚生労働省「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正(令和8年3月27日)
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第259回)資料4「訪問リハビリテーション」
- 浜松市「令和7年度介護サービス事業者説明会 サービス個別D(介護予防)訪問リハビリテーション」
※2026年10月時点で確認した情報です。制度は改定されるため、算定・運用の際は最新の通知・Q&Aと指定権者(都道府県・市町村)の案内をご確認ください。

