訪問リハビリの記録の書き方|SOAP例と運営基準のルール

訪問リハビリでは、リハビリ内容を記録として残すことが運営基準で義務づけられています。とはいえ、忙しい現場で迅速かつ正確に書くのは簡単ではありません。「どう書けばいいか分からない」「記録に時間がかかりすぎる」と悩む方も多いはずです。この記事では、訪問リハビリの記録を効率よく・分かりやすく書くための基本とコツを解説します。
- 訪問リハビリの記録の基本「SOAP形式」の書き方
- 記録を短時間で書くためのコツ
- 記録に必ず記載すべき項目
- 電子カルテや音声入力で記録を快適にする工夫
訪問リハビリの記録の書き方の基本
記録は「書いて終わり」ではなく、利用者の経過を多職種で共有し、ケアの質を高めるためのツールです。まずは基本となる3つのポイントを押さえましょう。
SOAP形式で記載する
訪問リハビリの記録では、「SOAP(ソープ)」形式が一般的です。次の4要素を順番に書く方法で、情報が整理され、ほかの職員が見ても理解しやすくなります。
| 項目 | 意味 | 記載内容 |
|---|---|---|
| S(Subjective) | 主観的情報 | 利用者本人の訴え・感想 |
| O(Objective) | 客観的情報 | 実施したリハビリ内容・観察結果 |
| A(Assessment) | 評価 | リハビリの効果・状態の変化 |
| P(Plan) | 計画 | 次回の課題・目標 |
SOAPで書くと、リハビリの評価と次回計画が明確になり、利用者の経過を一貫して把握しやすくなります。
簡潔に短時間で書く(1件5分が目安)
記録に時間をかけすぎると業務が滞り、残業の原因にもなります。1人分の訪問記録は、おおよそ5分以内を目安にしましょう。SOAPで要点を絞り、冗長な表現は避けます。
△「膝関節の屈曲が困難」
◎「膝屈曲30度で疼痛の訴えあり」
このように数値や事実で書くと、短くても内容が伝わります。テンプレートや定型文を活用すると、さらに効率化できます。
他の職員が見て分かるように書く
記録は自分以外の職員も確認します。専門用語ばかりにせず、新人職員や他職種が読んでも理解できるよう工夫しましょう。たとえば「ROM(関節可動域)」「ADL(日常生活動作)」などの略語は、初出時に注釈を添えると親切です。記録の目的は情報共有である、と意識することが大切です。

つい専門用語で細かく書いてしまって、時間もかかってしまいます…。

「読む人が次に何をすべきか分かるか?」を基準にすると、書く量が自然と絞れますよ。詳しさより伝わりやすさを優先しましょう。
訪問リハビリの記録で記載すべきこと
訪問リハビリの記録には、次の項目を必ず記載します。これらを正確に書くことで、利用者の経過を一貫して管理でき、介護保険請求にも対応できる記録になります。
① 訪問日と提供時間
例:4/20 13:00〜13:42(実際の開始・終了時刻をそのまま記載。訪問リハビリは20分以上を1回として算定)
② 訪問リハビリの提供者
フルネームと職種を明記し、責任の所在を明確にする
③ 実施したリハビリ内容
例:立位バランス訓練10分、歩行訓練20分、下肢筋力強化10分
提供時間の記載は、算定の根拠になる重要な情報です。実際の開始・終了時刻を正確に記録し、後から書き換えないようにしましょう。
運営基準で整備・保存が求められる訪問リハビリの記録
訪問リハビリの事業者は、指定居宅サービス等の運営基準で、次の記録を整備し、その完結の日から2年間保存することが義務づけられています。
| 記録 | 内容 |
|---|---|
| 訪問リハビリテーション計画 | 利用者ごとの計画書 |
| 提供したサービスの記録 | 提供した具体的なサービスの内容等 |
| 身体的拘束等の記録 | やむを得ず行った場合の態様・時間、心身の状況、緊急やむを得ない理由 |
| 市町村への通知の記録 | 不正な受給などを市町村に通知した場合の記録 |
| 苦情の記録 | 苦情の内容等 |
| 事故の記録 | 事故の状況と、事故に際してとった処置 |
なお、保存期間は国の基準では2年ですが、自治体の条例で5年などに延ばしている場合があります。介護報酬の返還請求に備える意味もあるため、指定権者(都道府県・市町村)の定めを必ず確認しましょう。運営指導では、これらの記録がそろっているかが確認されます。日ごろから整理しておくと安心できます。
SOAPで書く訪問リハビリの記録例
実際の記録のイメージをつかむために、訪問リハビリでのSOAPの記載例を紹介します。
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| S | 「昨日は娘と近所のスーパーまで歩けた。帰りは少し疲れた」 |
| O | 血圧128/76、脈拍72。屋外歩行訓練20分(T字杖・見守り)、往復約300m。休憩1回。段差昇降練習10分 |
| A | 屋外の連続歩行距離が前回より延長。帰路に疲労があり、休憩場所の確保が必要 |
| P | 次回はベンチの位置を確認し、休憩を入れた歩行ルートを本人・家族と決める。ケアマネジャーに経過を報告 |
バイタルの数値や距離、介助量を入れておくと、変化が数字で追える記録になります。計画書の目標とつながる内容を書くことも意識しましょう。目標の達成度を評価するときの大切な根拠にもなります。
訪問リハビリの記録を快適に行う工夫
記録の負担は、ツールや書き方の工夫で大きく減らせます。代表的な方法を2つ紹介します。
電子カルテを導入する
紙の記録は紛失リスクや管理の煩雑さがあります。電子カルテなら入力補助機能やテンプレートを活用でき、記録作成が効率化されます。データベース化されているため過去の記録も検索しやすく、クラウド管理であれば職員がどこからでもアクセスでき、情報共有がスムーズです。導入時はアクセス権限を適切に設定し、セキュリティにも配慮しましょう。
iPadなどで音声入力する
タブレットやスマートフォンの音声入力を使えば、キーボード操作が苦手な職員でも短時間で記録できます。訪問先からの移動中に音声で記録を残せば、帰社後の作業が減り効率的です。音声認識の精度は年々向上しており、誤字脱字のリスクも抑えられます。導入コストはかかりますが、長期的な業務効率の向上を見込めます。
記録と個人情報の取り扱いで気をつけること
訪問リハビリの記録には、利用者さんの病状や家族の状況など、たくさんの個人情報が含まれます。運営基準では、従業者が業務上知り得た利用者や家族の秘密を漏らしてはならないこと(秘密保持)が定められており、退職後も同様の措置を講じることが事業者に求められています。
- 紙の記録やメモを車内や訪問先に置き忘れない
- タブレットやスマートフォンには画面ロックをかける
- 個人のSNSやメッセージアプリで利用者の情報をやりとりしない
- 移動中の音声入力は、周りに人がいない場所で行う
効率化のためにツールを使うときほど、情報の持ち出しと共有のルールを事業所で決めておくことが大切です。
記録をスムーズに書くための流れ
記録を「型」にしておくと、毎回の作業が安定します。次の流れを習慣にしてみましょう。
- 訪問中にメモを取る利用者の訴えや数値を、その場で簡単に控えておきます。
- 移動中にSOAPで下書き記憶が新しいうちに、音声入力などで要点を整理します。
- 提供時間と内容を確定日時・提供者・実施内容を正確に記載します。
- 次回計画(P)を明記次の担当者が迷わないよう、課題と目標を残します。
記録でやりがちなNG例と改善のポイント
記録に慣れていないうちは、知らず知らずのうちに「伝わりにくい記録」になっていることがあります。よくあるNG例と、その改善方法を見てみましょう。
| NG例 | 改善後 |
|---|---|
| 「リハビリ実施。良好。」 | 「歩行訓練20分実施。連続歩行距離が前回30m→45mに延長。」 |
| 「本人、調子が悪そう。」 | 「本人より『朝から膝が痛い』と訴えあり。歩行時に右膝のかばい動作あり。」 |
| 「次回も同じ内容で。」 | 「次回は階段昇降訓練を追加予定。手すり使用下で評価する。」 |
共通するのは、「事実」と「数値」と「次にすること」を具体的に書くという点です。抽象的な表現を、誰が読んでも同じイメージを持てる言葉に置き換えるだけで、記録の質は大きく上がります。
また、利用者の発言は「」を使って、誰の言葉かを明確にすると、主観的情報(S)と客観的情報(O)の区別がつきやすくなります。小さな工夫の積み重ねが、多職種連携のしやすい記録につながります。
よくある質問
記録はどのくらいの期間、保存する必要がありますか?
国の運営基準では、訪問リハビリ計画や提供したサービスの記録などを、その完結の日から2年間保存することとされています。自治体の条例で5年などに延ばしている場合があるため、指定権者の基準を確認しておきましょう。
記録を後から修正してもよいですか?
誤りに気づいた場合の訂正は可能ですが、元の記載が分かる形で修正し、訂正日や訂正者を残すのが原則です。記録は算定やケアの根拠になるため、書き換えではなく「訂正履歴を残す」対応が基本です。
SOAPのどの項目を重視すればよいですか?
どれも重要ですが、特にA(評価)とP(計画)は次回の支援に直結します。「今日どうだったか」だけでなく「次に何をするか」まで書くことを意識すると、質の高い記録になります。
記録を書く時間は、勤務時間に含まれますか?
記録の作成は業務なので、労働時間にあたります。勤務時間内に終わらない場合は、残業として扱う必要があります。毎日記録が終わらないときは、訪問件数や記録の方法を上司と見直しましょう。
記録は法的な義務であると同時に、利用者のケアを支える大切な情報です。効率化を図りながら、誰が読んでも理解できる記録を心がけ、日々のスキルアップにつなげていきましょう。
※2026年10月時点で確認した情報です。制度は改定されるため、算定・運用の際は最新の通知・Q&Aと指定権者(都道府県・市町村)の案内をご確認ください。

