訪問リハビリは大雨警報の時どうする?中止基準とBCPの考え方

「大雨警報が出ているけど、今日の訪問はどうする?」「利用者さんから『来てほしい』と言われたら行くべき?」——台風や線状降水帯による大雨が増えるなか、訪問リハビリの事業所では、天候による訪問の判断に迷う場面が多くなっています。
結論からいうと、大雨警報が出たときの訪問の可否は、国が一律に決めているわけではなく、事業所が事前に定めた基準にもとづいて判断するものです。この記事では、気象庁の警戒レベルを目安にした訪問中止の基準の決め方、訪問を中止したときの利用者への対応、業務継続計画(BCP)との関係を整理します。「迷ったら命を優先する」ための仕組みを、事業所でつくっておきましょう。
- 大雨警報のときに訪問リハビリを行うかどうかの考え方
- 気象庁の警戒レベルと、訪問の判断の目安
- 事業所で決めておきたい訪問中止の基準と連絡の流れ
- 訪問を中止した利用者への安否確認と振替の考え方
- 業務継続計画(BCP)との関係
大雨警報のときの訪問リハビリはどうすべきか
大雨警報は、重大な災害が起こるおそれがあるときに気象庁が発表する情報です。訪問リハビリは車やバイク、自転車で移動しながら利用者宅を回るため、冠水した道路や土砂災害の危険がある地域を通ることは、スタッフの命に関わる危険があります。
一方で、一人暮らしの利用者や、医療的な管理が必要な利用者にとっては、訪問が安否確認の機会になっていることもあります。だからこそ、その場の判断に任せるのではなく、事業所としての基準を事前に決め、利用者・家族・ケアマネジャーと共有しておくことが大切です。

利用者さんに「雨でも来てほしい」と言われると、断りにくいです。

気持ちはわかるけど、スタッフが事故に遭ったら、その後の訪問もできなくなってしまう。だからこそ「警戒レベルがここまで上がったら中止します」と事前に説明しておくんだ。そうすれば、その日に断るのではなく、決めたルールにもとづいて判断できるよ。
気象庁の警戒レベルと訪問の判断の目安
気象庁は、災害の危険度を5段階の警戒レベルで示しています。訪問の判断は、このレベルを目安にすると、スタッフ・利用者の双方にとってわかりやすくなります。
| 警戒レベル | 主な気象情報 | 住民がとるべき行動 | 訪問の判断の目安(例) |
|---|---|---|---|
| レベル1 | 早期注意情報 | 災害への心構えを高める | 通常どおり。翌日以降の予定を確認 |
| レベル2 | 注意報 | 避難場所や経路を確認 | 訪問ルートの危険箇所を確認し、慎重に訪問 |
| レベル3 | 警報 | 高齢者等は避難開始 | 危険な地域への訪問は中止・延期を検討。訪問先の利用者の避難の必要性も確認 |
| レベル4 | 危険警報 | 危険な場所から全員避難 | 原則として訪問を中止し、電話で安否確認 |
| レベル5 | 特別警報 | 直ちに身の安全を確保 | 訪問中止。スタッフ自身の安全確保を最優先 |
※「訪問の判断の目安」は事業所で基準を決める際の一例です。実際の基準は、地域の地形や訪問エリアのハザードマップを踏まえて決めてください。
警戒レベル3(警報)は、高齢者等が避難を始めるタイミングです。訪問するかどうかだけでなく、「担当の利用者が避難すべき地域にいないか」を確認する視点も持ちましょう。
事業所で決めておきたい訪問中止の基準と流れ
- 判断の基準を決める警戒レベル、警報の種類、事業所や訪問エリアのハザードマップをもとに、「中止」「延期」「管理者判断」の基準を決めます。
- 判断する人と時間を決める前日の夕方と当日の朝など、誰がいつ判断するかを決めます。訪問中に状況が悪化したときの連絡方法も決めておきます。
- 利用者・家族・ケアマネジャーに伝える契約時や雨の多い季節の前に、中止の基準と連絡の流れを説明しておきます。
- 中止の連絡と安否確認中止を決めたら、利用者に連絡し、あわせて体調や避難の状況を確認します。
- 記録と振替中止の理由と安否確認の結果を記録し、ケアマネジャーに報告して振替を調整します。
訪問中に天候が急変したとき
- 冠水した道路には絶対に車で入らない
- 安全な場所に待機し、事業所に連絡して指示を受ける
- 利用者宅にいるときは、無理に移動せず、利用者と一緒に安全を確保する
- 次の訪問先には事業所から連絡してもらう
訪問を中止した利用者への対応
優先して安否確認する利用者を決めておく
中止の日は、すべての利用者に連絡するのが基本ですが、特に一人暮らしの人、寝たきりの人、医療機器を使っている人、土砂災害や浸水の危険がある地域に住む人は、優先して安否確認できるよう、あらかじめリストにしておきましょう。必要に応じて、ケアマネジャーや家族、地域の関係者と連携します。
振替の考え方
振替は、利用者の予定、ケアプラン、週の算定回数の上限などを確認して調整します。天候による中止は利用者の都合ではないため、キャンセル料の対象にはしないのが一般的です。運営規程や重要事項説明書の記載も確認しておきましょう。
業務継続計画(BCP)との関係
介護サービス事業所には、感染症や非常災害の発生時にもサービスを継続し、早期に再開するための業務継続計画(BCP)の策定が義務づけられています。BCPに従った研修や訓練も定期的に実施する必要があり、策定していない場合は業務継続計画未策定減算(所定単位数の1%)の対象になります。
大雨のときの訪問中止の基準や、安否確認の優先順位、連絡の流れは、自然災害BCPの中に具体的に書き込んでおくと、いざというときに迷わず動けます。年に一度は、雨の多い季節の前に見直しましょう。
| BCPに書いておきたい項目 | 記載例 |
|---|---|
| 訪問中止の基準 | 訪問エリアに警戒レベル4相当の情報が出た場合は原則中止。レベル3は管理者が判断 |
| 判断と連絡 | 前日17時と当日7時に管理者が判断し、グループ連絡で全スタッフに共有 |
| 安否確認の優先順位 | 一人暮らし・医療機器使用・浸水想定区域の利用者を優先リスト化 |
| スタッフの安全 | 訪問中の急変時は安全な場所で待機し、事業所の指示を待つ |
雨の日の訪問で気をつけたい安全対策【実践編】
警報が出ていない雨の日でも、訪問には危険が伴います。日常的に次のような対策をとっておきましょう。
- 移動時間に余裕を持つ:雨の日は渋滞や視界不良で時間がかかるため、予定を詰め込みすぎない
- アンダーパスや低い道を避ける:冠水しやすい場所を事業所内で共有し、雨の日の迂回ルートを決めておく
- 利用者宅の玄関で転ばない:濡れた靴や床で利用者・スタッフが滑らないよう、タオルやマットを用意する
- 書類や機器を濡らさない:タブレットや書類は防水のケースに入れて持ち運ぶ
- バイク・自転車での訪問:雨天時は車への切り替えや訪問順序の変更を検討する
日頃から準備しておきたいこと
大雨のときに慌てないためには、平常時の準備が欠かせません。
| 準備 | 内容 |
|---|---|
| ハザードマップの確認 | 訪問エリアの浸水想定区域や土砂災害警戒区域を確認し、該当する利用者を把握する |
| 利用者の避難先の把握 | 避難が必要になったときの避難先や、避難を手伝う人(家族・近隣)をケアマネジャーと共有する |
| 連絡手段の確保 | 電話がつながりにくいときの連絡手段(メッセージアプリなど)を決めておく |
| 訓練 | BCPにもとづき、大雨を想定した連絡や安否確認の訓練を行う |
訪問リハビリのスタッフは、利用者の自宅の構造や、歩行・移動の能力を最もよく知る立場にあります。「この人は2階に移動できるか」「避難所まで歩けるか」といった情報を、ケアマネジャーや家族と共有しておくことも、利用者の命を守ることにつながります。
よくある質問
大雨警報が出たら、必ず訪問を中止しないといけませんか?
国が一律に中止を義務づけているわけではありません。警報が出ていても、訪問エリアや移動ルートの危険度は地域によって異なります。事業所が定めた基準にもとづいて判断し、迷う場合はスタッフの安全を優先しましょう。
天候で訪問を中止した日の記録は必要ですか?
必要です。中止の理由、利用者への連絡と安否確認の結果、振替の予定を記録し、ケアマネジャーにも報告しましょう。
台風が近づいているときは前日に中止を決めてもよいですか?
進路や時間が予測できる台風の場合、前日に中止や時間変更を決めて利用者に伝えるほうが、利用者も予定を立てやすくなります。早めの判断と連絡を基準に入れておきましょう。
大雨で訪問を中止した場合、介護報酬はどうなりますか?
訪問していない日は訪問リハビリ費を算定できません。電話での安否確認だけでは訪問リハビリとして算定できないため、記録を残したうえで、可能であれば別の日に振り替えて提供します。
スタッフの判断で途中から訪問を中止してもよいですか?
移動中に危険を感じた場合は、安全を最優先にしてください。そのうえで、すぐに事業所に連絡し、以降の訪問について管理者の判断を仰ぐ流れを決めておくとよいでしょう。
まとめ|大雨のときは「事前の基準」で命を優先する
大雨警報のときの訪問リハビリは、事業所が事前に定めた基準で判断します。気象庁の警戒レベルを目安に中止の基準を決め、利用者・家族・ケアマネジャーと共有し、中止の日は安否確認を優先しましょう。こうした基準はBCPに具体的に書き込み、毎年見直すことが大切です。
- 訪問の可否は事業所が事前に定めた基準で判断する
- 気象庁の警戒レベル(3=警報、4=危険警報、5=特別警報)を目安にする
- 中止の基準と連絡の流れは、利用者・家族・ケアマネジャーと事前に共有する
- 中止の日は、一人暮らしや医療機器使用の利用者などを優先して安否確認する
- 大雨時の対応は自然災害BCPに具体的に書き込み、毎年見直す
- ハザードマップと利用者の避難先を、平常時から確認しておく
- 気象庁「警戒レベルと防災気象情報」
- e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第259回)資料4「訪問リハビリテーション」
※2026年10月時点で確認した情報です。制度は改定されるため、算定・運用の際は最新の通知・Q&Aと指定権者(都道府県・市町村)の案内をご確認ください。

