医療保険の訪問リハビリを徹底解説!(条件・料金・回数・対象疾患など)

「医療保険の訪問リハビリって、そもそも何?」「介護保険の訪問リハとどう違うの?」——訪問リハビリには医療保険と介護保険の2つの制度があり、なかでも医療保険のほうは対象者が限られていて、現場のPT・OT・STでも説明に迷うことが少なくありません。
この記事では、医療保険の訪問リハビリ(C006 在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料)について、受けられる条件・料金(点数)・回数・対象疾患から、介護保険との違い、利用開始までの流れまで一つひとつ整理します。令和8年度診療報酬改定(2026年6月1日施行)の内容も確認したうえで解説していますので、最新情報として参考にしてください。
- 医療保険の訪問リハビリ(C006)とは何か、誰が提供できるのか
- 医療保険の訪問リハビリを受けられる条件と、介護保険を持っていても使える例外
- 料金(点数)・自己負担の目安・利用できる回数のルール
- 対象疾患・よくある対象者、介護保険や訪問看護との違い
- 利用を開始するまでの流れと、現場で確認したい実務ポイント
医療保険の訪問リハビリとは?
医療保険の訪問リハビリは、正式には「C006 在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料」といいます。在宅で療養しており通院が困難な患者に対し、医師の診療にもとづく計画的な医学管理のもとで、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)が訪問して指導を行った場合に算定するものです。
提供できるのは病院・診療所のみです。介護老人保健施設や介護医療院、訪問看護ステーションからは、この「C006」という枠組みでは提供できません(訪問看護ステーションからのリハビリ職の訪問は、別の仕組みで扱われます。詳しくは後述します)。
正直なところ、医療保険の訪問リハビリは「提供しにくく・利用しにくい」サービスです。算定要件が厳しく、対象となる人がかなり限られているためです。順に詳しく見ていきましょう。

医療保険の訪問リハって、現場であまり見かけない気がします。

そう、対象がとても狭いんだ。高齢者の多くは介護保険の認定を受けているから、実際には介護保険の訪問リハビリになることがほとんど。医療保険は「介護保険を使えない人」のための制度、と覚えておくとわかりやすいよ。
医療保険の訪問リハビリを受けられる4つの条件
医療保険の訪問リハビリを受けられるのは、原則として次の4つの条件をすべて満たす場合です。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ①在宅で療養している | 病院・施設ではなく、自宅などで療養していること |
| ②介護保険が非該当 | 原則、介護保険の認定を受けていないこと(例外は次の章で解説) |
| ③通院が困難 | 原則として訪問診療を受けている状態であること |
| ④毎月の(訪問)診療がある | 計画的な医学管理を継続して受けていること |
ポイントは②の「介護保険の認定を受けていない人が対象」という点です。要支援・要介護の認定を受けている方は、原則として介護保険の訪問リハビリが優先されます。なお③・④については、通院困難や訪問診療の実施状況の解釈が、地域や厚生局によって分かれる場合があるとされています。実務で判断に迷う場合は、自己判断で進めず担当の地方厚生局に確認しておくと安心です。
例外あり|介護保険の認定を受けていても医療保険が使えるケース
「介護保険の認定を受けている=医療保険の訪問リハビリは一切使えない」というわけではありません。急性増悪等により一時的に頻回のリハビリが必要と医師が認めた場合には、例外的に医療保険の訪問リハビリを利用できます。
具体的には、1か月の間にバーセル指数(BI)またはFIMが5点以上悪化し、一時的に頻回の訪問リハビリテーションが必要と医師が認めた場合、6か月に1回に限り、当該診療の日から14日以内の期間で、14日を限度に1日4単位まで算定できるとされています。対象者が要介護被保険者等である場合は、頻回訪問が必要と認めた理由と必要な期間(14日以内)を診療録に記載することが求められます。

状態が急に悪化したときの、集中的な対応のためのルールなんですね。

そのとおり。ただし特例は期間も回数も限られているから、BIやFIMの評価をきちんと行って、医師と相談しながら必要性を判断することが大切だよ。
医療保険の訪問リハビリの算定要件・実務ポイント
C006の算定要件は厚生労働省の告示・通知で細かく定められています。実務上、特に押さえておきたいポイントを整理します。
- 医師の診療にもとづき、計画的な医学管理のもとで行う
- その医療機関に所属するPT・OT・STを訪問させ、20分以上の指導で「1単位」とする
- 訪問診療を行う医療機関で、医師の診療があった日から1か月以内に行うのが原則
- 他の医療機関でC006を算定している患者については算定できない
- 介護老人保健施設で通所リハビリを受けている月は算定できない
- 医師は指示内容の要点を診療録に記載し、PT・OT・STは指導内容の要点と時間を記録する
- 交通費は患家の負担(実費)とされている
やや専門的になりますが、患者の病状に特に変化がない場合、訪問診療を行う医療機関が患者の同意を得たうえで、継続して訪問リハビリを行う別の医療機関へ診療情報提供料(Ⅰ)にもとづく文書で情報提供したときは、その情報提供があった日から1か月以内の実施でも算定できるとされています。医療機関同士の連携によって、訪問リハビリを途切れさせない仕組みが用意されている点も知っておくとよいでしょう。
診療報酬の算定要件や点数は、改定によって変更されることがあります。実際の算定にあたっては、必ず厚生労働省の最新の診療報酬点数表・通知、および担当の地方厚生局の案内で確認してください。
医療保険の訪問リハビリの料金(点数)と自己負担の目安
C006 在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料(1単位)の点数は、次のとおりです。令和8年度診療報酬改定(2026年6月1日施行)後も、この点数に変更はありません(2026年7月時点で確認済み)。
| 区分 | 点数(1単位=20分以上) |
|---|---|
| 同一建物居住者以外の場合 | 300点 |
| 同一建物居住者の場合 | 255点 |
診療報酬は「1点=10円」で計算します。同一建物居住者以外の場合、20分の訪問で300点=3,000円が総額の目安です。自己負担は、加入している医療保険の負担割合(1〜3割など)に応じて次のようになります。
| 負担割合 | 1単位(20分) | 2単位(40分) | 3単位(60分) |
|---|---|---|---|
| 1割負担 | 約300円 | 約600円 | 約900円 |
| 2割負担 | 約600円 | 約1,200円 | 約1,800円 |
| 3割負担 | 約900円 | 約1,800円 | 約2,700円 |
(同一建物居住者以外・1点10円で計算した概算です。実際の請求額は端数処理や医療機関の設定により異なります。)これに加えて、訪問にかかった交通費は患家の負担(実費)となります。1か月の自己負担額が高額になる場合は、高額療養費制度の対象になることもあるため、年齢や所得、他の医療費との合算状況によっては、加入している保険者(協会けんぽ・健康保険組合・市区町村国保など)へ確認しておくとよいでしょう。
医療保険の訪問リハビリの利用できる回数
| 場面 | 回数の限度 |
|---|---|
| 原則 | 週6単位(1単位20分=週120分)まで |
| 退院日から3か月以内 | 入院先の医師の指示にもとづき、週12単位(週240分)まで |
| 急性増悪等で頻回の指導が必要なとき | 6か月に1回、診療日から14日以内の期間で、14日を限度に1日4単位まで |
なお、末期の悪性腫瘍の患者の場合は、週6単位の限度の例外とされています。回数や単位数の考え方は改定で変わることがあるため、迷う場合は担当の地方厚生局に確認しましょう。
医療保険の訪問リハビリの対象疾患・よくある対象者
医療保険の訪問リハビリの対象になりやすいのは、64歳以下で、介護保険の16の特定疾病に該当しない疾患により、訪問診療が必要なほど重度の状態にある人です。高齢者の多くは介護保険の認定を受けるため、医療保険の訪問リハビリの対象になるのは、こうした限られた人たちになります。
| ケース | 内容 |
|---|---|
| 若年層の脊髄損傷 | 交通事故等による頸髄損傷などで、65歳未満のため介護保険の認定を受けられず、通院も困難な場合 |
| 40〜64歳で特定疾病非該当 | 第2号被保険者は16の特定疾病に該当しないと介護保険を利用できないため、在宅療養・通院困難であれば医療保険の対象になり得る |
たとえば「50歳代で頸髄損傷があり、寝たきりの状態」といったケースが典型例です。「在宅療養」「介護保険非該当」「通院困難」という条件が重なるケースが中心になる点を押さえておきましょう。
医療保険と介護保険の訪問リハビリの違い
訪問リハビリには医療保険と介護保険の2種類があり、病院・診療所が行う訪問リハビリでは原則として介護保険が優先されるというルールがあります。
| 項目 | 医療保険の訪問リハ | 介護保険の訪問リハ |
|---|---|---|
| 主な対象 | 介護保険の認定を受けていない人 | 要支援・要介護の認定を受けた人 |
| 提供元 | 病院・診療所 | 病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院など |
| 優先順位 | 介護保険が使えない場合に利用 | 原則こちらが優先 |
| 回数の目安 | 週6単位(退院後3か月以内は週12単位) | 週6回(退院後3か月以内は週12回) |
| 計画 | 計画的な医学管理が前提 | リハビリ計画書・ケアプランにもとづく |
訪問看護ステーションからのリハビリとの違い
「訪問リハビリ」と似たサービスに、訪問看護ステーションからPT・OT・STが訪問する形態があります。同じような専門職が自宅を訪問しますが、派遣元がどこかによって名称と算定の仕組みが変わる点に注意が必要です。
| 項目 | 訪問リハビリ(C006) | 訪問看護ステーションからのリハビリ |
|---|---|---|
| 提供元 | 病院・診療所 | 訪問看護ステーション |
| 1回あたりの時間 | 20分以上で1単位 | 30分以上90分未満が目安とされる |
| 指示 | 医師の診療にもとづく計画的な医学管理 | 主治医の訪問看護指示書にもとづく |
このように、同じ「自宅でのリハビリ」でも、病院・診療所からの提供か、訪問看護ステーションからの提供かで、時間の目安や記録・計画書の考え方が異なります。利用者や家族に説明する際は、まず「どこから派遣されるサービスか」を確認すると混乱を防げます。
医療保険の訪問リハビリを利用するまでの流れ
- 主治医・かかりつけ医に相談する在宅療養中で通院が困難な場合、まず主治医に訪問リハビリの必要性を相談します。
- 医師の指示を受ける医療保険の訪問リハビリに決まった書式の「指示書」は必須ではありませんが、指示があったことを記録として残す意味で、指示書の形をとっておくことをおすすめします。様式に決まりはなく、事業所オリジナルのもので問題ありません。
- 事業所・医療機関と契約する自宅でリハビリを行うため、実施内容・緊急時の対応・連絡先・交通費・料金などを含めた契約書を交わしておくことが望ましいでしょう。
- 計画的な医学管理のもとで訪問リハビリを開始する医師の診療と連動しながら、PT・OT・STが訪問して指導を行います。指導内容の要点と時間は記録として残します。
- 状態の変化に応じて見直す介護保険の認定を受けた場合や、通院が可能になった場合など、状態の変化に応じて医療保険から介護保険への切り替えを検討することもあります。個別の可否は主治医・ケアマネジャー・保険者に確認しましょう。
現場で確認したい実務チェックリスト(PT・OT・ST向け)
制度を正しく使うために、訪問リハビリに関わるPT・OT・ST・看護師が現場で押さえておきたい視点を整理します。
- まず利用者の介護保険の認定状況を確認する(要支援・要介護なら原則は介護保険が優先)
- 在宅療養・通院困難・訪問診療の有無など、医療保険の4条件に当てはまるかを確認する
- ③④など解釈が分かれやすい要件は、担当の地方厚生局に確認する
- 急性増悪が疑われる場合はBI・FIMの変化を評価し、医師と頻回訪問の必要性を相談する
- 他の医療機関でC006を算定していないか、介護老人保健施設の通所リハを利用していないかを確認する
- 主治医・ケアマネジャー・家族と情報を共有し、計画的な医学管理のもとで実施する
医療保険か介護保険かの判断に迷ったら、自己判断で進めず主治医・地方厚生局・保険者に確認するのが安全です。誤った算定は返戻や信頼低下につながります。
医療保険の訪問リハビリのよくある質問
医療保険の訪問リハビリでリハビリ計画書は必要ですか?
C006の算定にあたって、リハビリ計画書の作成は必須とはされていません。ただし、医師の指示や指導内容の記録は必要です。
交通費は請求できますか?
請求できます。訪問にかかった交通費は患家の負担(実費)とされており、金額は各医療機関で設定します。
契約書は交わす必要がありますか?
必須の決まりはありません。ただし自宅でリハビリを行うため、実施内容・緊急時の対応・連絡先・交通費・料金などを含めた契約書を交わしておくことが望ましいでしょう。
指定難病医療費助成制度の対象になりますか?
対象になります。指定難病の医療費助成を受けている方は、制度の範囲で自己負担が軽減されます。詳細はお住まいの自治体や医療機関に確認してください。
介護老人保健施設や介護医療院から医療保険の訪問リハビリはできますか?
できません。医療保険の訪問リハビリ(C006)を提供できるのは、病院・診療所に限られます。
特別養護老人ホームに医療保険の訪問リハビリは入れますか?
入れません。特別養護老人ホームには、医療保険・介護保険いずれの訪問リハビリも提供できないとされています。
まとめ|医療保険の訪問リハビリは「対象が限られた制度」
医療保険の訪問リハビリについて、要点を整理します。
- 医療保険の訪問リハビリは「C006 在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料」
- 提供できるのは病院・診療所のみ。介護保険の認定を受けていない人が主な対象
- 介護保険の認定を受けていても、BI・FIMが5点以上悪化した急性増悪時は例外的に利用できる
- 点数は同一建物居住者以外300点/同一建物居住者255点(1単位20分・令和8年度改定後も据え置き)
- 回数は週6単位(退院後3か月以内は週12単位)。算定要件は厳しく対象は限られる
医療保険の訪問リハビリは対象が限られた制度です。算定要件や点数は改定で変わるため、実務では厚生労働省の最新情報や地方厚生局で必ず確認しましょう。
