訪問リハビリは医療保険と介護保険を併用できる?例外と移行期間

「病院の外来リハビリに通いながら、介護保険の訪問リハビリも使える?」「急に状態が悪くなったとき、医療保険の訪問リハビリに切り替えられる?」——医療保険と介護保険のリハビリの関係は、利用者や家族だけでなく、ケアマネジャーや医療機関の職員にとってもわかりにくい部分です。
結論からいうと、同じ時期に医療保険の訪問リハビリと介護保険の訪問リハビリを併用することは、原則としてできません。要介護・要支援の認定を受けている人は、介護保険が優先されるためです。ただし、急性増悪時の14日間の切り替えや、外来の疾患別リハビリから介護保険のリハビリへ移行する際の「一定期間の併用」といった例外があります。この記事では、厚生労働省の給付調整に関する通知をもとに、そのルールを整理します。
- 医療保険と介護保険の訪問リハビリを併用できない理由
- 急性増悪時に医療保険の訪問リハビリへ切り替える条件(6月に1回・14日間)
- 外来の疾患別リハビリと介護保険のリハビリを併用できる移行期間
- 認定を受けていない人が医療保険の訪問リハビリを使う場合
- ケアマネジャー・医療機関との調整のポイント
訪問リハビリは医療保険と介護保険を併用できる?結論は「原則不可」
訪問リハビリには、医療保険の「在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料」と、介護保険の「訪問リハビリテーション」があります。医療保険と介護保険の給付調整に関する通知では、在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料は、要介護被保険者等である患者については原則として算定できないとされています。
つまり、要介護・要支援の認定を受けている人は、訪問リハビリを介護保険で利用するのが原則で、医療保険の訪問リハビリを同時に使うことはできません。
| 利用者 | 医療保険の訪問リハビリ | 介護保険の訪問リハビリ |
|---|---|---|
| 要介護・要支援の認定あり(通常時) | × | ○ |
| 要介護・要支援の認定あり(急性増悪時) | ○ 6月に1回・14日間まで | その期間は算定しない |
| 認定なし(40歳未満、特定疾病以外の40〜64歳など) | ○ 通院困難で医師が必要と判断した場合 | × |

介護保険のほうが優先なのはなぜですか?

介護保険と医療保険で同じようなサービスがある場合、要介護者などには介護保険の給付が優先されるという整理になっているんだ。だから、認定を受けている人の訪問リハビリは介護保険が基本。医療保険を使えるのは、通知で決められた例外の場面に限られるよ。
例外①急性増悪時は医療保険の訪問リハビリに切り替えられる
要介護・要支援の認定を受けている人でも、急性増悪などにより一時的に頻回の訪問リハビリの指導管理を行う必要がある場合は、6月に1回、14日間に限り医療保険の在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料を算定できます。
このとき、介護保険の訪問リハビリの留意事項通知でも、医師が急性増悪などで一時的に頻回の訪問リハビリが必要と認め、特別の指示を行った場合は、その指示の日から14日間を限度として医療保険の給付対象となるため、訪問リハビリ費(介護保険)は算定しないとされています。
この14日間は「医療保険に切り替わる」期間であり、医療保険と介護保険を同時に使う「併用」ではありません。切り替えの開始日・終了日をケアマネジャー、主治医、事業所で共有し、請求が重ならないように管理しましょう。
急性増悪の例
- 肺炎や感染症の後で、体力やADLが急に低下した
- 転倒による骨折などで、一時的に集中的なリハビリが必要になった
- 持病の悪化で、短期間に頻回の指導管理が必要になった
急性増悪にあたるかどうか、医療保険での算定が可能かどうかは、医師の判断と診療報酬のルールによります。事前に医療機関と確認しておきましょう。
例外②外来の疾患別リハビリから介護保険への移行期間は併用できる
病院の外来などで医療保険の疾患別リハビリテーション(脳血管疾患等リハビリテーション料、運動器リハビリテーション料など)を受けていた人が、介護保険のリハビリ(訪問リハビリ・通所リハビリ)に移行する場合には、一定期間の併用が認められています。
| ケース | 医療保険の疾患別リハビリの扱い |
|---|---|
| 原則 | 同じ疾患等について、介護保険のリハビリの利用開始日を含む月の翌月以降は算定できない(手術・急性増悪などで改めて対象となる場合を除く) |
| 医療保険のリハビリを行う施設と、介護保険のリハビリを行う施設が別の場合 | 介護保険のリハビリの利用開始日を含む月の翌々月まで併用可能。介護保険のリハビリを行った日以外の日に限り、開始日の翌月・翌々月は1月7単位まで |
たとえば、A病院の外来で運動器リハビリを受けていた人が、6月10日からB事業所の訪問リハビリを始めた場合、8月までは訪問リハビリのない日にA病院の外来リハビリを受けることができます(7月・8月は月7単位まで)。移行期間を使って、外来から在宅のリハビリへ無理なくバトンタッチするための仕組みです。

同じ病院が外来リハビリと訪問リハビリの両方をやっている場合はどうなりますか?

この移行期間の併用は「別の施設で介護保険のリハビリを提供することになった場合」の扱いだから、同じ施設の場合は原則どおり、介護保険のリハビリの利用開始月の翌月以降は医療保険の疾患別リハビリは算定できないと考えておこう。迷う場合は医療機関の事務と確認してね。
認定を受けていない人の医療保険の訪問リハビリ
要介護・要支援の認定を受けていない人は、介護保険の訪問リハビリを利用できないため、通院が困難で、医師が必要と判断した場合は医療保険の訪問リハビリを利用します。
- 40歳未満の人(若年の脳卒中後遺症、脊髄損傷など)
- 40〜64歳で、介護保険の特定疾病以外が原因の人
- 65歳以上で、要介護認定を申請していない、または非該当(自立)となった人
なお、医療保険で訪問リハビリを受けている人が、その後要介護認定を受けた場合は、介護保険の訪問リハビリへの切り替えが必要になります。認定の結果が出た時点で、ケアマネジャーと医療機関で調整しましょう。
ケース別に見る医療保険・介護保険の使い分け
| ケース | 使う保険と考え方 |
|---|---|
| 要介護2の人が、自宅で訪問リハビリを受けている | 介護保険の訪問リハビリ。医療保険の訪問リハビリは使えない |
| 同じ人が肺炎で入院せず自宅療養となり、一時的に頻回のリハビリが必要になった | 医師が特別の指示を出せば、14日間は医療保険の訪問リハビリ。その間、介護保険の訪問リハビリは算定しない |
| A病院の外来リハビリに通っていた人が、B事業所の訪問リハビリを始めた | 訪問リハビリ開始月の翌々月まで、訪問のない日にA病院の外来リハビリを併用可(翌月・翌々月は月7単位まで) |
| 35歳で脊髄損傷があり、通院が難しい | 介護保険の対象外のため、医師の判断で医療保険の訪問リハビリ |
| 医療保険の訪問リハビリを受けていた60代の人が、特定疾病で要介護認定を受けた | 認定後は介護保険の訪問リハビリに切り替える |
どのケースでも、「認定の有無」と「例外にあたるか」の2点を確認すれば、使う保険を判断できます。判断が難しいときは、医療機関の事務部門や保険者に確認しましょう。
医療保険と介護保険の切り替えで調整したいこと【実践編】
- 認定の状況を確認する要介護認定の有無、申請中かどうか、有効期間を確認します。
- どちらの保険で算定するかを決める急性増悪の特別の指示、外来リハビリからの移行期間など、例外にあたるかを医師・医療機関と確認します。
- 期間と日付を共有する切り替えの開始日・終了日、介護保険のリハビリの利用開始日を、ケアマネジャー・医療機関・事業所で共有します。
- 記録と請求を確認する同じ日に両方の保険で算定していないか、移行期間の単位数の上限を超えていないかを確認します。
よくある質問
介護保険の訪問リハビリと、医療保険の外来リハビリを同じ日に受けられますか?
移行期間の併用でも、医療保険の疾患別リハビリは「介護保険のリハビリを行った日以外の日」に限って算定できるとされています。同じ日に両方を算定することはできません。
急性増悪の14日間が終わったらどうなりますか?
14日間が終わったら、介護保険の訪問リハビリに戻ります。状態が大きく変わっている場合は、医師の診療にもとづいて訪問リハビリ計画を見直し、ケアプランも必要に応じて変更します。
訪問看護(医療保険)と訪問リハビリ(介護保険)は併用できますか?
厚生労働大臣が定める疾病等に該当する人や特別訪問看護指示書が出ている期間など、訪問看護が医療保険で行われる場合があり、その場合でも介護保険の訪問リハビリをケアプランに位置づけて利用することは考えられます。具体的な扱いは、主治医・訪問看護ステーション・ケアマネジャーと確認してください。
まとめ|医療と介護の訪問リハビリは「原則併用不可」、例外を正しく使う
要介護・要支援の認定を受けている人の訪問リハビリは介護保険が優先で、医療保険の訪問リハビリとの併用は原則できません。ただし、急性増悪時の14日間の切り替えと、外来の疾患別リハビリから介護保険のリハビリへの移行期間の併用という例外があります。
- 要介護・要支援の認定者は介護保険の訪問リハビリが優先。医療保険との併用は原則不可
- 急性増悪時は6月に1回・14日間に限り医療保険へ切り替え(その間は介護保険を算定しない)
- 別施設の外来疾患別リハビリは、介護保険のリハビリ開始月の翌々月まで併用可(翌月・翌々月は月7単位まで)
- 認定のない人は、通院困難で医師が必要と判断すれば医療保険の訪問リハビリを利用
- 切り替えの日付をケアマネジャー・医療機関・事業所で共有し、請求の重複を防ぐ
- 厚生労働省「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正(令和8年3月27日)
- 厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1213(令和6年度介護報酬改定に伴う留意事項通知の改正)
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第259回)資料4「訪問リハビリテーション」
※2026年10月時点で確認した情報です。制度は改定されるため、算定・運用の際は最新の通知・Q&Aと指定権者(都道府県・市町村)の案内をご確認ください。

