訪問リハビリの直行直帰のメリット・デメリットとは?おすすめできない理由も解説

訪問リハビリでは、効率化や柔軟な働き方を目指して「直行直帰」を導入する事業所がもあります。
一方で、直行直帰には様々な課題があり、全ての現場に適しているわけではありません。
本記事では、直行直帰のメリットやデメリット、おすすめできない理由を具体的に解説します。
さらに、導入時に必要なルールについても触れ、現場の効率と質を両立する方法を提案します。
訪問リハビリの直行直帰はおすすめできない主な理由
私は訪問リハビリの直行直帰は反対派です。
私が訪問リハビリの直行直帰がおすすめできない主な理由は下記の2つです。
- 私有車を使うことになる(社用車支給ならまだOK)
- 事業所内連携がしにくくなる
それぞれの理由について説明していきます。
私有車を使うことになる(社用車支給ならまだOK)
直行直帰を導入すると、スタッフが私有車を使用するケースが一般的です。私有車を使う場合、ガソリン代やメンテナンス費用がスタッフ個人の負担となる可能性があります。また、交通事故が発生した場合の責任や保険適用範囲が曖昧になるリスクも指摘されています。一方、社用車が支給される場合はこうした問題が軽減されますが、事業所側に車両管理の負担が増えるため、バランスの取れた運用が求められます。
事業所内連携がしにくくなる
直行直帰では、スタッフが事業所に立ち寄る頻度が減るため、事業所内での情報共有や相談の機会が減少します。訪問リハビリでは、患者の状況に応じたチーム連携が重要です。直行直帰の運用によって、個々のケースについて意見交換する場が減り、患者への対応が遅れる可能性があります。このような連携不足が結果的にリハビリの質を低下させるリスクがあります。
訪問リハビリの直行直帰のメリット
訪問リハビリの直行直帰のメリットは下記のようなものがあります。
- 時間効率向上により訪問件数が増加
- 一人でいたいスタッフのストレス軽減
- 事業所内の職員間感染対策ができる
- 柔軟な働き方ができるため求人活動がし易い
それぞれについて説明していきます。
時間効率向上により訪問件数が増加
直行直帰は、スタッフが事業所に戻る必要がないため、訪問と訪問の間の移動時間が短縮されます。この結果、一日あたりの訪問件数を増やすことができ、業務の効率化が図れます。また、スタッフの空き時間が有効活用できるため、利用者へのサービス提供がより充実します。特に訪問先が事業所から遠方の場合に、時間効率の向上は大きなメリットとなります。
一人でいたいスタッフのストレス軽減
直行直帰は、他のスタッフとの不要な対面コミュニケーションを避けたいスタッフにとって有益です。一人で過ごす時間が確保されることで、ストレスが軽減される場合があります。また、特定の人間関係の摩擦を避け、自分のペースで業務に集中することが可能です。こうした点が、スタッフの精神的負担を軽くし、働きやすい環境作りにつながります。
事業所内の職員間感染対策ができる
感染症対策としても、直行直帰は有効な手段です。事業所での対面コミュニケーションが減少することで、スタッフ間の感染リスクを大幅に抑えることができます。特にインフルエンザや新型コロナウイルスが流行する時期には、直行直帰の導入がスタッフと患者双方の安全を守る効果的な方法となります。
柔軟な働き方ができるため求人活動がし易い
直行直帰は、柔軟な働き方を提供できるため、求人の際のアピールポイントとなります。例えば、子育て中のスタッフや遠距離通勤者にとって、直行直帰の導入は大きな魅力です。また、勤務時間や働く場所に柔軟性があることで、多様な人材を採用する可能性が高まります。これにより、スタッフ確保の難易度が下がるというメリットもあります。
訪問リハビリの直行直帰のデメリット
訪問リハビリの直行直帰のデメリットは下記のようなものが代表例です。
- 管理が難しくなる(どこで何をしているか分からない)
- 事業所内連携ができないためリハビリの質が低下する
- 個人情報が漏洩しやすい
- 仕事とプライベートの境界線がわからなくなる
- 汚染や感染などの対策が難しい
それぞれについて説明していきます。
管理が難しくなる(どこで何をしているか分からない)
直行直帰では、スタッフの行動が見えにくくなるため、管理が難しくなる側面があります。例えば、スタッフが現在どこで何をしているのかがリアルタイムで把握できない状況が発生しやすくなります。こうした管理の不透明性は、トラブル時の迅速な対応を妨げる要因となり得ます。スケジュール管理システムやGPS機能を活用することで、こうした問題を軽減できます。
事業所内連携ができないためリハビリの質が低下する
スタッフが事業所で直接顔を合わせる機会が減ると、ケーススタディや意見交換が滞りがちになります。特に複雑なケースでは、多職種連携が欠かせませんが、直行直帰の環境ではこれが難しくなる場合があります。これが結果として、利用者に提供されるリハビリの質を低下させるリスクを高めます。
個人情報が漏洩しやすい
直行直帰を採用することで、個人情報の持ち出しリスクが高まります。例えば、利用者の情報が記載された書類やデジタルデータが車内や自宅で保管されることが多くなり、盗難や紛失のリスクが懸念されます。こうした課題を解決するためには、情報管理に関する徹底的なルール設定が必要です。
仕事とプライベートの境界線がわからなくなる
直行直帰では、スタッフが自宅を拠点に業務を行うことが多くなるため、仕事とプライベートの区別が曖昧になる場合があります。特にオンとオフの切り替えが難しいスタッフにとっては、精神的なストレスが増加するリスクがあります。これを防ぐためには、明確な業務時間の設定が重要です。
汚染や感染などの対策が難しい
直行直帰では、リハビリ用具の消毒や感染対策の徹底が難しくなるケースがあります。特に感染症が流行している状況では、用具や車両の衛生管理が不十分になると、患者やスタッフに健康被害を及ぼすリスクが高まります。感染対策のためのルールを明確化し、徹底的に遵守することが求められます。
訪問リハビリで直行直帰を導入する際に作った方が良いルール
訪問リハビリで直行直帰を導入する際に作った方が良いルールについて紹介します。
事業所に集まる日をつくる
スタッフが定期的に事業所に集まる日を設定することで、直行直帰の課題を緩和することができます。情報共有や相談、チームミーティングを行う機会を設けることで、チームとしての一体感が維持され、業務効率やリハビリの質が向上します。
定期的なオンライン会議の実施
直行直帰の環境でも、定期的にオンライン会議を実施することで、スタッフ間のコミュニケーション不足を解消することが可能です。特に、ケーススタディや課題の共有にオンラインツールを活用することで、効率的に情報交換が行えます。
訪問スケジュールの共有
スタッフ全員の訪問スケジュールを事業所で一元管理する仕組みを整えることで、業務の透明性が向上します。特に、緊急対応が必要な場合にも迅速にフォローできる体制を構築することが重要です。
緊急連絡体制の整備
直行直帰では、緊急時の連絡手段が確立されていることが重要です。例えば、緊急用の連絡先リストやチャットツールを活用することで、迅速な対応が可能になります。これにより、スタッフと事業所の間での連携がスムーズになります。
業務報告の義務化
訪問リハビリ後の業務報告を義務化することで、業務内容の透明性が確保されます。また、報告書のフォーマットを統一することで、情報収集や分析が効率的に行えます。これにより、事業所全体の運営が円滑になります。
プライバシーの保護の徹底
直行直帰では、利用者の個人情報を適切に管理することが求められます。例えば、デジタルデータの暗号化やパスワード管理の徹底が必要です。また、紙媒体の資料については、専用の保管バッグを用意するなどの対策を講じることが重要です。
まとめ
訪問リハビリの直行直帰には、効率的な働き方を実現するメリットがある一方で、管理や情報漏洩などの課題も存在します。
適切なルールを設定し、デメリットを補う仕組みを整えることで、直行直帰の導入効果を最大化できます。
現場に即した制度設計を行い、スタッフと利用者双方にとって安全で効率的な運用を目指しましょう。