認知症短期集中リハビリテーション実施加算とは?訪問リハの算定要件

「認知症の利用者さんに、訪問リハで集中的に関わりたい。でも、認知症短期集中リハビリテーション実施加算って算定要件が複雑で、本当にうちの利用者で取れるのか自信がない」——訪問リハの現場で、そんな声をよく耳にします。算定漏れがあれば事業所の収益に直結しますし、要件を取り違えれば返戻のリスクもあります。
この記事では、令和6年度介護報酬改定で訪問リハビリテーションに新設された認知症短期集中リハビリテーション実施加算について、対象者・医師要件・単位数・算定期間を一つずつ整理します。読み終えるころには、目の前の利用者が対象になるかを自分で判断でき、短期集中リハビリテーション実施加算との使い分けまで迷わず説明できるようになります。
- 認知症短期集中リハビリテーション実施加算とは何か(令和6年度新設の背景)
- 対象となる利用者・医師・算定期間など算定要件のすべて
- 単位数(240単位/日)と1週2日限度の算定ルール
- 短期集中リハビリテーション実施加算との違いと併用の可否
- PT・OT・STが現場で算定漏れ・返戻を防ぐための実践ポイント
認知症短期集中リハビリテーション実施加算とは?【令和6年度新設】
認知症短期集中リハビリテーション実施加算とは、認知症と判断された利用者に対し、退院(所)日または訪問開始日から3月以内に集中的なリハビリを行った場合に算定できる加算です。訪問リハビリテーションでは、令和6年度介護報酬改定(令和6年6月施行)で新設されました。
もともと認知症短期集中リハビリテーション実施加算は、通所リハビリテーションや介護老人保健施設で先行して設けられていた加算です。令和6年度改定で「認知症のリハビリテーションを推進する」という観点から、訪問リハビリテーションでも算定できるようになりました。在宅で暮らす認知症の方に、生活機能の改善を目的とした集中的なリハを届ける——その取り組みを評価するのが、この加算の趣旨です。
ここでの「集中的なリハビリ」とは、認知機能や生活環境を踏まえ、応用的動作能力や社会適応能力(生活環境・家庭環境へ適応する能力)を最大限に活かしながら、利用者の生活機能を改善するリハビリテーションを指します。単なる機能訓練ではなく、「その人の暮らしの中での動作・参加」に焦点を当てるのがポイントです。

訪問リハでこの加算が取れるようになったのは、最近のことなんですね。前からあると思っていました。

そう、訪問リハでは令和6年6月からだよ。通所リハや老健には前からあったから混同しやすいけれど、訪問では「新しい加算」と覚えておくと安心だね。
認知症短期集中リハビリテーション実施加算は、訪問リハビリテーションでは令和6年度改定で新設された加算。「退院(所)日・訪問開始日から3月以内」という起算日と期間が、算定の出発点になります。
認知症短期集中リハビリテーション実施加算の算定要件
算定要件は大きく「対象となる利用者」「医師に関する要件」「算定期間と回数」の3つに整理できます。一つずつ見ていきましょう。
対象となる利用者(MMSE・HDS-Rの目安)
対象は、医師が認知症であると判断した利用者のうち、リハビリテーションによって生活機能の改善が見込まれると判断された方です。さらに、認知症の程度の目安として、評価スケールの基準が示されています。
| 評価スケール | 対象となる目安 |
|---|---|
| MMSE(ミニメンタルステート検査) | おおむね5点〜25点に相当する者 |
| HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール) | おおむね5点〜25点に相当する者 |
つまり、認知症が重すぎても軽すぎても対象から外れる可能性があるということです。「生活機能の改善が見込まれる」という医師の判断とセットで考える点も忘れないようにしましょう。MMSEやHDS-Rのスコアは、対象者を見極めるための重要な客観指標になります。
医師に関する要件
この加算では、認知症であると判断する医師にも要件があります。具体的には、次のいずれかに該当する医師による判断が必要です。
- 精神科医師
- 神経内科医師
- 認知症に対するリハビリテーションに関する専門的な研修を修了した医師
そのうえで、医師または医師の指示を受けた理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が、訪問リハビリテーション計画に基づいてリハビリを行った場合に算定できます。「どの医師が認知症と判断したか」が要件に含まれるため、主治医がこれらに該当しない場合は、事前の確認・連携が欠かせません。

主治医が内科の先生だと、この加算は取れないんですか?

「認知症と判断する医師」が要件を満たしているかがカギだよ。専門の研修を修了している医師なら診療科を問わず該当しうるから、まずは主治医や事業所の医師に研修修了の有無を確認するのが第一歩だね。
算定期間と回数
算定できる期間と回数のルールは次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 起算日 | 退院(所)日、または訪問開始日 |
| 算定できる期間 | 起算日から3月以内 |
| 算定回数の上限 | 1週に2日を限度 |
| 過去の算定との関係 | 当該利用者が過去3月の間にこの加算を算定していた場合は算定不可 |
「3月以内」は退院(所)日または訪問開始日が起点です。起算日を取り違えると算定期間そのものがずれてしまうため、初回訪問の記録段階で起算日を明確にしておきましょう。また、過去3月以内に同じ加算を算定していた利用者は対象外になる点にも注意が必要です。
「1週に2日を限度」とは、同一週内で算定できるのが2日までという意味です。週3回以上訪問していても、加算を算定できるのはそのうち2日分まで。訪問スケジュールと算定日の管理を分けて考えましょう。
単位数(点数)と算定のしかた
認知症短期集中リハビリテーション実施加算の単位数は、次のとおりです。
| 加算名 | 単位数 |
|---|---|
| 認知症短期集中リハビリテーション実施加算 | 240単位/日(1週に2日を限度) |
1日あたり240単位を、所定単位数に加算します。週2日まで算定できるため、要件を満たす利用者であれば1週で最大480単位、3月間で相応の収益につながります。算定漏れが続くと、その分が事業所の機会損失になるということです。
算定にあたっては、訪問リハビリテーション計画にこのリハビリの内容(認知機能・生活環境を踏まえた応用的動作能力や社会適応能力へのアプローチ)が位置づけられていることが前提です。計画書と実施記録が要件と整合しているかを、算定前に確認しておきましょう。
「240単位/日・1週2日まで」がこの加算の基本。単位数だけでなく、計画書への位置づけと記録の整合まで含めて1セットと考えると、返戻リスクを下げられます。
短期集中リハビリテーション実施加算との違い・併用の可否
現場で最も混同されやすいのが、名前のよく似た「短期集中リハビリテーション実施加算」との関係です。結論から言うと、この2つは併用できません。どちらか一方の選択になります。
| 項目 | 認知症短期集中リハビリテーション実施加算 | 短期集中リハビリテーション実施加算 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 認知症と判断され、生活機能の改善が見込まれる利用者 | 退院(所)・訪問開始から早期の利用者全般 |
| ねらい | 認知機能・生活環境を踏まえた応用的動作能力・社会適応能力の向上 | 退院(所)後早期の集中的なリハビリによる機能回復 |
| 併用 | 同時に算定はできない(いずれか一方) | |
どちらを選ぶかは、利用者の状態と支援の目的によって変わります。認知症があり、認知機能をふまえた生活機能の改善を主目的とするなら認知症短期集中リハビリテーション実施加算、それ以外の早期集中リハを重視する場合は短期集中リハビリテーション実施加算、という整理がわかりやすいでしょう。利用者ごとにどちらが適切かをチームで確認し、計画書の方針と一致させることが大切です。

名前が似ていて、つい両方取れる気がしてしまいます…。

気持ちはわかるよ。でも「短期集中」がつく加算同士は二者択一。利用者にとってどちらの目的が中心かを先に決めて、そのうえで加算を選ぶ——この順番を守れば迷わないよ。
厚生労働省のQ&A|医師の「専門的な研修」とは
医師の要件にある「認知症に対するリハビリテーションに関する専門的な研修」について、厚生労働省はQ&Aで考え方を示しています。要点を整理すると、次のとおりです。
この研修は、認知症に対するリハビリテーションの知識・技術の習得を目的とし、認知症の診断・治療、そして認知症リハビリの効果的な実践方法に関する一貫したプログラムを含むものである必要があるとされています。具体例として、全国老人保健施設協会・日本リハビリテーション病院/施設協会・全国デイ・ケア協会などが主催する認知症リハビリ関連の研修が挙げられています。
また、都道府県等が実施する「認知症サポート医養成研修」の修了者も、この加算の医師要件を満たすものと考えられています。主治医がこれらの研修を修了しているかどうかは、加算算定の可否を左右する重要な確認ポイントです。
研修名や取り扱いは制度改正・通知で変わることがあります。実際の算定可否は、最新の厚生労働省の通知・Q&A、および事業所所在地の自治体(保険者)の解釈をあわせて確認してください。
PT・OT・STが現場で押さえるべき実践ポイント
要件を理解したら、次は「算定漏れ・返戻を防ぐ」「リハの質を高める」ための実務です。訪問リハに関わるPT・OT・STの視点で、現場で効くポイントを整理します。
算定漏れ・返戻を防ぐ手順
- 起算日を初回訪問時に確定する退院(所)日か訪問開始日のどちらが起点になるかを、初回の記録段階で明確にします。3月の算定期間はここから数えます。
- 医師の要件を確認する認知症と判断した医師が精神科医・神経内科医・専門研修修了医(認知症サポート医養成研修修了者を含む)のいずれかに該当するかを確認します。
- MMSE・HDS-Rで対象を見極める評価スケールのスコアと「生活機能の改善が見込まれる」という医師の判断をセットで確認します。
- 計画書にリハ内容を位置づける認知機能・生活環境を踏まえた応用的動作能力・社会適応能力へのアプローチを訪問リハビリテーション計画に明記します。
- 算定日と訪問日を分けて管理する週2日限度のルールに沿って、訪問スケジュールとは別に算定日を管理し、過去3月の算定歴も確認します。
「生活機能の改善」を実感できるリハにするコツ
この加算が評価するのは、機能訓練そのものではなく「生活の中での応用的動作能力・社会適応能力」です。訪問だからこそ、自宅の環境・家族との関わり・日課といった「その人の暮らし」に直接アプローチできる強みがあります。
たとえば、よく使う動線での移動、トイレや更衣などの生活動作、買い物や近所づきあいといった社会的な活動。利用者本人がどんな場面で困っているかを家族とも共有しながら、認知機能の特性に合わせて手がかりや手順を工夫していく——3月という限られた期間だからこそ、目標を具体的に絞り込むことが成果につながります。

3月という期間は短いようでいて、目標を絞れば十分に変化を出せる。「家のどの場面を改善したいか」を本人・家族と最初にすり合わせるのが成功のコツだよ。

「機能」だけでなく「暮らしの場面」から目標を考えるんですね。訪問リハの強みが活きそうです。
認知症短期集中リハビリテーション実施加算のよくある質問
短期集中リハビリテーション実施加算と併用できますか?
併用できません。認知症短期集中リハビリテーション実施加算と短期集中リハビリテーション実施加算は、どちらか一方のみの算定となります。利用者の状態と支援の目的に応じて選択してください。
訪問リハではいつから算定できるようになったのですか?
訪問リハビリテーションでは、令和6年度介護報酬改定で新設され、令和6年6月から算定可能となりました。通所リハビリテーションや介護老人保健施設では以前から設けられていた加算です。
1週に2日を限度とは、どういう意味ですか?
同一週内で加算を算定できるのが2日までという意味です。週3回以上の訪問を行っていても、この加算を算定できるのはそのうち2日分までとなります。
算定期間の「3月以内」は、いつから数えますか?
退院(所)日、または訪問開始日が起算日です。そこから3月以内が算定できる期間となります。どちらが起点になるかを初回訪問の段階で確定しておきましょう。
過去にこの加算を算定していた利用者でも、また算定できますか?
当該利用者が過去3月の間にこの加算を算定していた場合は、算定できません。算定にあたっては過去の算定歴の確認が必要です。
対象者の認知症の程度に決まりはありますか?
対象となる利用者は、MMSEまたはHDS-Rでおおむね5点〜25点に相当する者とされています。あわせて、医師が認知症と判断し、リハビリによって生活機能の改善が見込まれると判断していることが必要です。
まとめ|認知症短期集中リハビリテーション実施加算を正しく使いこなそう
認知症短期集中リハビリテーション実施加算は、令和6年度改定で訪問リハビリテーションに新設された、認知症の利用者の生活機能改善を後押しする加算です。要件は複雑に見えますが、起算日・対象者・医師要件・回数の4点を押さえれば、目の前の利用者で算定できるかを自分で判断できます。
- 訪問リハでは令和6年度改定(令和6年6月)で新設された加算
- 対象は認知症と判断され、生活機能の改善が見込まれる利用者(MMSE・HDS-Rでおおむね5〜25点が目安)
- 認知症と判断する医師は精神科医・神経内科医・専門研修修了医のいずれか
- 退院(所)日・訪問開始日から3月以内、1週2日を限度に240単位/日を算定
- 短期集中リハビリテーション実施加算とは併用不可(いずれか一方を選択)
起算日と要件を初回訪問時にきちんと確認し、「暮らしの場面」から目標を絞ることで、算定漏れを防ぎながら質の高い認知症リハを届けられます。
出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(社会保障審議会 介護給付費分科会 参考資料)/厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」。算定可否の最終判断は、最新の告示・通知・Q&Aおよび事業所所在地の保険者の解釈をご確認ください。
