【令和6年度改定対応】訪問リハの診療未実施減算とは|要件・50単位・猶予を解説

「事業所の医師が利用者を診察できていないとき、訪問リハの基本報酬から何単位引かれるんだっけ?」「他院の主治医からの情報提供だけで算定できるって聞いたけど、具体的に何を計画書に書けばいい?」——介護保険の訪問リハビリで実際にレセプトを切る現場PT・OT・STにとって、診療未実施減算はもっとも“グレー”になりやすい論点のひとつです。
本記事では令和6年度介護報酬改定で見直された診療未実施減算(−50単位/回)の算定要件・適用猶予措置・計画書の書き方を、現場目線で整理します。「適切な研修の修了等」の取扱いや、よくある現場の判断にも踏み込み、明日からの記録・請求に迷わない状態に持っていけるよう構成しました。
- 診療未実施減算の単位数(−50単位/回)と適用される場面
- 令和6年度改定で整理された算定要件と、令和9年3月31日までの適用猶予措置
- 「適切な研修の修了等」と日医かかりつけ医機能研修制度の関係
- 退院後1か月以内の利用者は減算が適用されない特例
- 計画書への記載例・現場でよくあるケース別Q&A
診療未実施減算とは|訪問リハで-50単位/回が引かれる場面
診療未実施減算とは、指定(介護予防)訪問リハビリテーション事業所の医師が利用者を診療していないにもかかわらず、PT・OT・STが訪問リハを提供した場合に、所定単位数から1回あたり50単位を減算する仕組みのことです。介護保険の訪問リハビリテーション費・介護予防訪問リハビリテーション費のいずれにも適用されます。
訪問リハの計画書は本来「事業所の医師の診療」に基づいて、医師とセラピストが共同で作成するのが原則です。しかし実務では、利用者がふだん別の医療機関のかかりつけ医にかかっており、訪問リハ事業所の医師が直接診察するのが難しいケースが少なくありません。そうした場合の例外的取扱いとして、「事業所外の主治医からの情報をもとに計画書を作成・指示し、訪問リハを提供する」ことを認めつつ、基本報酬から50単位を差し引く——これが診療未実施減算の趣旨です。

「診療していないと減算」って、ペナルティ的な意味合いなんですか?

ペナルティというより「医師の診察がない分、評価を一段下げて算定を認める」例外措置だね。要件を満たさなければ、そもそも訪問リハを提供できないんだ。−50単位は“算定OKの代わりに少し抑えますよ”という建て付けと理解しておこう。
診療未実施減算は「事業所医師が診療していない=即減算」ではなく、要件を満たしたうえで例外的に算定を認め、−50単位/回で評価する仕組み。要件が満たせない場合は、そもそも訪問リハを提供できません。
【令和6年度改定対応】診療未実施減算の算定要件と適用猶予措置
令和6年度介護報酬改定では、診療未実施減算の要件が整理され、原則ルール(イ)と令和9年3月31日までの適用猶予措置(ロ)の2階建てが明確になりました。それぞれの要件を比較表で確認しましょう。
原則ルール(厚生労働大臣が定める基準・イ)
原則ルールでは、次の3つすべてを満たす必要があります。
- 利用者が、事業所とは別の医療機関の医師から計画的な医学的管理を受けており、その医師から事業所医師に情報提供が行われていること
- 計画的な医学的管理を行っている医師が、「適切な研修」を修了している等の要件を満たしていること
- 情報提供を受けた事業所医師が、その情報を踏まえて訪問リハビリテーション計画を作成していること
適用猶予措置(ロ)|令和6年4月1日〜令和9年3月31日
原則ルールをすぐ満たせない事業所のために、令和9年3月31日までの経過措置が設けられています。この期間中は、研修要件そのものを“完了済み”でなくても、次の要件を満たせば算定できます。
- 原則ルール(イ)の(1)(他院医師からの情報提供)と(3)(計画書作成)に適合していること
- 研修の修了等の有無を確認し、訪問リハビリテーション計画書に記載していること
| 項目 | 原則ルール(イ) | 適用猶予措置(ロ) 〜令和9年3月31日 |
|---|---|---|
| 他院医師からの情報提供 | 必須 | 必須 |
| 他院医師の「適切な研修の修了等」 | 修了していること | 有無を確認し 計画書に記載 |
| 事業所医師による計画書作成 | 必須 | 必須 |
| 減算単位数 | −50単位/回 | |
猶予措置が使えるのは令和9年3月31日まで。それ以降は原則ルールしか使えず、他院医師の研修修了が事実上の前提になります。早めに連携先医師の研修状況を把握しておくことが、来年度以降の算定継続のカギになります。
診療未実施減算の単位数と「適用されない」例外
診療未実施減算の単位数はシンプルに1回あたり−50単位です。一方で、減算が「適用されない」ケースが改定で整理された点は、現場が見落としやすいポイントです。
医療機関に入院しリハビリテーションを受けていた利用者で、入院先から情報提供が行われている場合、退院後1か月以内に提供される(介護予防)訪問リハビリテーションに限り、診療未実施減算は適用されません。
つまり、退院直後の在宅移行期に切れ目なくリハを開始できるよう、事業所医師の診療が間に合わないケースでも基本報酬を満額算定できる、という配慮です。退院サマリーや診療情報提供書をきちんと受領・保管しておくことが要件になります。

退院直後の1か月は減算なし、ってかなり大きいですね。介護保険でも、医療機関からの情報提供書があれば算定OKなんですか?

そう。退院後早期にリハを切らさないための配慮だから、「退院日」「情報提供日」「初回訪問日」を必ず記録しておこう。1か月の起算日が曖昧だと、減算の判断もブレてしまうからね。
「適切な研修の修了等」とは?日医かかりつけ医機能研修制度の取扱い
原則ルール(イ)で最大の論点になるのが「適切な研修の修了等」の解釈です。令和6年度改定のQ&Aで、厚生労働省は次のように示しています。
- 日本医師会の「日医かかりつけ医機能研修制度」の応用研修の単位を取得している場合は、「適切な研修の修了等」に含まれる
- 応用研修すべての単位を取得している必要はなく、該当プログラムを含んだうえで、前36か月以内に合計6単位以上を取得(または令和7年3月31日までに取得予定)であればよい
- 該当プログラムには、リハビリテーションにおける医療と介護の連携、生活期リハ、フレイル対策、地域リハビリテーション、在宅リハ症例などが含まれる(年度ごとに対象プログラムは異なる)
適用猶予期間中であっても、事業所の従業者は他院医師の研修修了等の有無を確認し、訪問リハビリテーション計画書に記載する義務があります。「研修については未確認」では計画書として不十分。他院医師に対し、情報提供時に「研修の修了等」もあわせて伝達してもらえるよう、依頼フォーマットを整えておくのが現場対応のベストプラクティスです。
計画書への記載例(記入イメージ)
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 情報提供元医師 | ◯◯クリニック 院長 △△医師(内科) |
| 計画的医学的管理の内容 | 月1回の定期外来診察、HbA1c・血圧管理、服薬調整、急性増悪時の往診対応 |
| 提供を受けた情報 | 本人・家族の希望、健康状態・経過、心身機能(MMT・ROM等)、ADL(FIM項目)、リハ目標、リハ実施上の留意点 |
| 適切な研修の修了等 | 日医かかりつけ医機能研修制度 応用研修6単位以上を令和○年○月時点で取得済み(情報提供医師に確認) |
| 事業所医師による計画 | 提供情報を踏まえ、△△医師指示のもと当事業所××医師が訪問リハ計画を作成 |
診療未実施減算で算定するまでの流れ(STEP形式)
現場で迷わないよう、初回利用から月次請求までの流れをSTEPで整理します。
- 他院主治医に連携依頼かかりつけ医に対し、計画的医学的管理の実施状況と情報提供の可否を確認。あわせて「適切な研修の修了等」の有無を確認する。
- 情報提供書の受領本人・家族の希望、健康状態、心身機能、ADL、リハ目標、留意点などが記載された情報提供書(別紙様式2-2-1相当)を受け取る。
- 事業所医師による計画書作成事業所医師が提供情報をもとに訪問リハ計画書を作成。研修修了等の有無も計画書に記載する。
- 本人・家族への同意取得計画内容を本人・家族に説明し、同意・署名を取得。診療未実施減算が適用される旨も丁寧に説明する。
- サービス提供・記録計画書に基づいてPT・OT・STが訪問リハを実施。実施記録・モニタリングを毎回残す。
- レセプト請求(−50単位/回で算定)該当する月のレセプトで、所定単位数から1回あたり50単位を減算して請求。退院後1か月以内は減算なしで算定。
現場でよくあるケース別Q&A|セラピストが押さえるべき実務
ケース①|デイケアやデイサービスで主治医が診察した場合は?
デイサービス・デイケアを併用利用している利用者に対して、通所系サービス利用中に事業所医師が通所先を訪れて診療した場合は「計画診療をした」とみなされ、診療未実施減算は不要です。ただし、そのときの診療代を別途算定することはできません。
ケース②|情報提供書はもらったが、研修の有無を確認できなかった
令和9年3月31日までの猶予期間中なら、「研修修了等の有無を確認し、計画書に記載」すれば算定可能です。「未確認」の場合でも、未確認であることそのものを計画書に明記しておけば現場運用は成り立ちますが、来年度以降を見据えれば、確認できる体制を急いで整えるのが望ましい対応です。
ケース③|医療保険の訪問リハには適用される?
診療未実施減算は介護保険の訪問リハビリテーション・介護予防訪問リハビリテーションに適用される減算です。医療保険の訪問リハ(みなし指定の病院・診療所からの訪問リハ等)には、別途の算定ルールがあります。医療保険分との混同に注意しましょう。

「介護保険か医療保険か」「事業所医師か他院医師か」「退院後1か月以内か」——この3点を毎回チェックするだけで、診療未実施減算の判断はだいぶシンプルになるよ。
診療未実施減算の算定回数の推移と現場の動向
厚生労働省の介護給付費等実態統計を見ると、リハビリテーション計画の作成に係る診療未実施減算の算定回数は年々減少傾向にあります。背景として考えられるのは次の点です。
- 事業所医師による直接診療体制の整備が進んでいること
- 主治医連携が密になり、計画的医学的管理の枠組みが明確化したこと
- −50単位/回の減算インパクトを避けるため、事業所側が運用を見直していること
とはいえ、地域の医療資源や事業所体制によっては、診療未実施減算を活用しなければサービス提供そのものが立ち行かないケースもあります。減算ありきの算定はNGですが、要件を満たして適切に運用すれば、サービス継続のための“最後の選択肢”になり得る——というのが現場感覚です。
よくある質問(FAQ)
診療未実施減算は1回ごと?月単位?
1回あたり−50単位の減算です。月内の該当する訪問回数すべてに適用されます。月単位の減算ではありません。
事業所医師が一度でも診療していれば、減算は不要?
事業所医師が利用者を診療し、その診療に基づいて計画書を作成しているのであれば、診療未実施減算は適用されません。減算が必要になるのは、事業所医師の診療がなく、他院医師の情報提供をもとに計画書を作成しているケースに限られます。
「適切な研修」は日医かかりつけ医研修だけ?
厚労省Q&AではJMA(日本医師会)の「日医かかりつけ医機能研修制度」応用研修が例示されています。これに該当しない研修については、現時点では事業所単独での判断はリスクが高く、自治体保険者や顧問の社労士・行政書士に確認するのが安全です。
適用猶予措置(ロ)終了後はどうなる?
令和9年4月1日以降は原則ルール(イ)のみが適用されます。他院医師の研修修了が事実上の前提になるため、令和8年度のうちに連携先医師の研修状況を確認しておく必要があります。
計画書に「研修未確認」と書いた場合、減算は算定できる?
適用猶予期間中であれば、研修修了等の有無を「確認し計画書に記載すること」が要件です。確認した結果「未確認だった」と記載することは形式的には可能ですが、保険者によっては不適切と判断される余地があります。可能な限り、情報提供医師に確認を取り、明確に記載することを推奨します。
退院後1か月の起算日は退院日?初回訪問日?
厚労省通知では「退院後一ヶ月以内に提供される(介護予防)訪問リハビリテーションに限り」とされており、退院日を起算日として1か月以内の訪問が対象になります。退院日と初回訪問日のいずれもカルテと請求記録に明確に残しておきましょう。
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まとめ|診療未実施減算は「要件確認+計画書記載」がすべて
診療未実施減算は、事業所医師が利用者を診療できない場合の例外的な算定ルールです。原則ルールと令和9年3月31日までの適用猶予措置を正しく理解し、計画書に必要事項をきちんと記載することが、減算をめぐる指導・返戻リスクを避ける唯一の道です。
- 診療未実施減算は−50単位/回。事業所医師の診療がない訪問リハに適用される
- 令和6年度改定で「原則ルール」と「令和9年3月31日までの猶予措置」に整理された
- 適用猶予期間中も、他院医師の「適切な研修の修了等」の有無を確認し計画書に記載する義務がある
- 「適切な研修」は日医かかりつけ医機能研修制度の応用研修6単位以上が代表例
- 退院後1か月以内の訪問リハは、入院先からの情報提供があれば減算が適用されない
令和9年4月以降は原則ルールが厳格適用される見込みです。今のうちから連携先医師の研修状況を確認し、計画書フォーマットや情報提供依頼書を整備しておきましょう。
