訪問リハビリの同一建物減算とは?10%・15%の対象と数え方

訪問リハビリの同一建物減算は、事業所と同じ建物や隣の敷地にある建物、または利用者が多く住む集合住宅の利用者にサービスを提供したときに、基本報酬が10%または15%減る仕組みです。サービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームに併設された事業所では、ほぼ毎月関わる減算です。
ところが、「隣の建物は対象になる?」「20人は何で数える?」「要支援の利用者も含める?」といった細かな部分で迷う人が多いのも事実です。この記事では、訪問リハビリの同一建物減算について、対象になる建物・減算率・人数の数え方・区分支給限度基準額との関係を、厚生労働省の通知をもとに整理します。
- 訪問リハビリの同一建物減算とは何か(3つのパターン)
- 「同一敷地内建物等」に当たる建物・当たらない建物
- 20人・50人の数え方(暦月の平均、小数点以下切り捨て)
- 区分支給限度基準額は「減算前」の単位数で管理する
- 運営指導に向けて準備しておく記録
訪問リハビリの同一建物減算とは
訪問リハビリの同一建物減算とは、事業所と同じ敷地や隣の敷地にある建物、または事業所の利用者が多く住む建物の利用者に訪問リハビリを提供した場合に、基本報酬を減らす仕組みです。正式には「指定訪問リハビリテーション事業所と同一の敷地内若しくは隣接する敷地内の建物若しくは指定訪問リハビリテーション事業所と同一の建物等に居住する利用者に対する取扱い」といいます。
訪問リハビリの報酬には、利用者の自宅まで移動する時間や手間も含まれています。同じ建物にまとめて訪問できる場合は移動の負担が小さくなるため、その分を報酬に反映させる、というのが減算の考え方です。
| パターン | 対象になる利用者 | 減算率 |
|---|---|---|
| ①同一敷地内建物等 | 事業所と同じ建物・同じ敷地・隣接する敷地の建物に住む利用者 | 所定単位数の10%減算 |
| ②同一敷地内建物等のうち50人以上 | ①の建物のうち、事業所の利用者が1月あたり50人以上住む建物の利用者 | 所定単位数の15%減算 |
| ③①以外で20人以上 | ①以外の建物で、事業所の利用者が1月あたり20人以上住む建物の利用者 | 所定単位数の10%減算 |
介護予防訪問リハビリテーション(要支援1・2)にも同じ減算があります。厚生労働省の資料でも、訪問リハ・介護予防訪問リハの両方に「同一敷地内建物等又は利用者が20人以上居住する建物の利用者にサービスを行う場合(▲10%)」「利用者が50人以上居住する同一敷地内建物等の利用者にサービスを行う場合(▲15%)」と示されています。

同じマンションに3人だけ訪問している場合も減算になるんですか?

そのマンションが事業所と別の敷地で、隣接もしていないなら、事業所の利用者が20人以上住んでいない限り減算にはならないよ。逆に、事業所と同じ建物や隣の敷地の建物なら、1人だけでも減算の対象になる。まず「建物の位置」、次に「人数」の順で確認しよう。
訪問リハビリの同一建物減算の対象になる建物
①「同一敷地内建物等」の定義
留意事項通知では、同一敷地内建物等を「事業所と構造上又は外形上、一体的な建築物及び同一敷地内並びに隣接する敷地(道路等を挟んで設置している場合を含む)にある建築物のうち、効率的なサービス提供が可能なもの」としています。具体例として、次のようなケースが挙げられています。
- 建物の1階部分に訪問リハビリ事業所がある
- 事業所と建物が渡り廊下でつながっている
- 同じ敷地内にある別棟の建物
- 幅の狭い道路を挟んで隣接している建物
ここでの人数要件はありません。同一敷地内建物等に当たる建物に住む利用者は、1人であっても10%減算になります。
同一敷地内建物等に当たらない例
一方で通知は、この減算は「建物との位置関係によって効率的なサービス提供が可能であること」を評価する趣旨なので、位置関係だけで機械的に判断しないこととしています。サービス提供の効率化につながらない例として、次の2つが示されています。
| ケース | 扱い |
|---|---|
| 同一敷地でも、広い敷地に複数の建物が点在している | 同一敷地内建物等に該当しない例 |
| 隣接する敷地でも、道路や河川で隔てられ、渡るために迂回しなければならない | 同一敷地内建物等に該当しない例 |
建物の運営法人が違っても対象になる
「併設のサ高住は別法人が運営しているから対象外」と考えるのは誤りです。通知では、建物の管理・運営法人が訪問リハビリ事業所の法人と異なる場合でも該当するとされています。判断の基準は、法人ではなく建物の位置関係と人数です。
③20人以上の建物(同一敷地内建物等以外)
①に当たらない建物でも、事業所の利用者が1月あたり20人以上住んでいる場合は10%減算になります。大きな集合住宅や、地域のサ高住にまとめて訪問しているケースが該当します。このとき、同じ敷地内の別棟や、道路を挟んで隣接する建物の利用者数を合算しないことに注意してください。人数は建物ごとに数えます。

サ高住だけじゃなく、普通のマンションも対象になるんですね。

そうだね。減算の対象は「建物」で決まるから、高齢者住宅かどうかは関係ない。一般のマンションや団地でも、事業所の利用者が20人以上住んでいれば対象になるよ。
20人・50人の数え方
20人以上・50人以上の判断に使う人数は、1月間(暦月)の利用者数の平均です。計算方法は通知で次のように決められています。
- 1日ごとに、その建物に住む利用者数を数えるその月の各日について、その建物に住んでいる事業所の利用者の数を数えます。
- 月の合計を日数で割る1日ごとの人数を合計し、その月の日数(30日・31日など)で割ります。
- 小数点以下を切り捨てる計算結果の小数点以下は切り捨てます。たとえば19.8人なら19人となり、20人以上には該当しません。
- 介護予防の利用者も含める介護予防訪問リハビリと一体的に運営している場合は、介護予防訪問リハビリの利用者も含めて計算します。
数えるのは「その建物に住む、自分の事業所の利用者」です。建物の入居者全体の数ではありません。月の途中で入居・退去・利用開始・終了があると平均が変わるため、月末に1日ごとの人数を集計できる表を作っておくと判定が楽になります。
同一建物減算の単位数と計算例
訪問リハビリの基本報酬は1回308単位、介護予防訪問リハビリは1回298単位です(20分以上を1回)。同一建物減算は、この所定単位数に対して割合で減算します。
| 区分 | 減算なし | 10%減算 | 15%減算 |
|---|---|---|---|
| 訪問リハビリ(要介護) | 308単位/回 | 約277単位/回 | 約262単位/回 |
| 介護予防訪問リハビリ(要支援) | 298単位/回 | 約268単位/回 | 約253単位/回 |
※端数処理は請求ソフトや計算の順序によって異なるため、上の表は目安です。実際の請求では、介護給付費単位数表と請求ソフトの計算に従ってください。
たとえば要介護の利用者に週2回(月8回)訪問する場合、10%減算では1か月あたり約250単位の差になります。同一敷地内建物等の利用者が多い事業所では、年間でみると小さくない金額です。
区分支給限度基準額は「減算前」の単位数で管理する
同一建物減算で特に誤解が多いのが、区分支給限度基準額(ケアプランで使える1か月の上限)との関係です。平成30年度改定で、同一建物減算を受ける利用者の限度額管理には、減算前の単位数を用いることになりました。
この見直しは、会計検査院の指摘がきっかけです。減算後の単位数で限度額を管理すると、減算を受けている人の方が多くのサービスを使えてしまい、減算を受けていない人との間で不公平が生じていました。そこで、事業者が減算で減った収入を回数を増やして補うことがないよう、給付管理では減算前の単位数を使うこととされました。
「減算されている分、もう1回入れられる」という考え方は通用しません。ケアマネジャーとの給付管理では、減算前の308単位(予防は298単位)で計算することを前提に、回数を調整しましょう。
同一建物減算の注意点
減算は利用者ごとに判断する
同一建物減算は、事業所の全利用者が対象になるわけではありません。対象になるのは、条件に当てはまる建物に住む利用者だけです。同じ月に、減算対象の利用者と対象外の利用者が混在するのが普通です。請求時は、利用者ごとに住所と建物の区分を確認しましょう。
訪問介護の「90%ルール」は訪問リハビリにはない
令和6年度改定で、訪問介護には「同一敷地内建物等の利用者への提供割合が90%以上の場合は12%減算」という区分が新設されました。これは訪問介護だけのルールで、訪問リハビリには適用されません。他サービスの情報と混同しないよう注意してください。
ほかの加算・減算との関係
同一建物減算は、所定単位数に対して割合で計算する減算です。短期集中リハビリテーション実施加算やリハビリテーションマネジメント加算など、単位数で決まっている加算は、同一建物減算とは別に算定します。加算・減算の全体像は、関連記事の「加算一覧」もあわせて確認してください。

併設のサ高住の利用者さんばかり担当していると、効率はいいけど報酬は減るんですね。

そう。移動が少ない分、減算されるという考え方だね。ただ、報酬が減るからといって訪問の質を落としていいわけではない。生活の場に近いところで関われるのは強みだから、施設の職員と連携して、日中の過ごし方まで含めたリハビリを考えたいね。
運営指導に向けて準備しておく記録
同一建物減算は、適用漏れがあると過誤調整(返還)の対象になります。運営指導では、次のような点が確認されます。
| 準備するもの | 確認されるポイント |
|---|---|
| 利用者の住所一覧(建物区分つき) | 同一敷地内建物等、20人以上の建物に住む利用者が把握されているか |
| 事業所周辺の建物の位置関係がわかる資料 | 隣接する敷地の建物、道路を挟んだ建物の扱いを説明できるか |
| 建物ごとの月別利用者数の集計表 | 暦月の1日ごとの人数の合計÷日数、小数点以下切り捨てで計算されているか。介護予防の利用者を含めているか |
| 請求データ(サービスコード) | 減算対象の利用者に、減算のサービスコードが正しく使われているか |
| ケアマネジャーとの給付管理の記録 | 限度額の管理が減算前の単位数で行われているか |
「同一敷地内建物等に当たらない」と判断した建物(広い敷地に点在、迂回が必要な隣接地など)がある場合は、判断の理由を記録し、必要に応じて指定権者に確認した経緯を残しておくと安心です。
PT・OT・STが現場で意識したいこと【実践編】
同一建物減算は事務の話に見えますが、現場のセラピストも知っておくと役に立ちます。
- 新規利用者の住所を確認する:新規依頼を受けたら、住所が併設住宅や担当の多い集合住宅かどうかを事務担当と共有する
- 引っ越しを見逃さない:利用者が併設のサ高住へ転居した場合、その月から減算の対象になることがある。訪問先が変わったらすぐ事務に伝える
- 回数の提案は減算前の単位数で考える:ケアマネジャーに回数を相談するときは、限度額が減算前の単位数で管理されることを踏まえて提案する
- 施設職員との連携を強みにする:同じ建物に住む利用者が多いほど、生活支援の職員と情報を共有しやすい。転倒予防や生活動作の工夫を職員に伝え、24時間の生活につなげる
サ高住や有料老人ホームへの訪問リハビリそのものの可否については、関連記事で詳しく解説しています。
よくある質問
事業所と同じ建物に住む利用者が1人だけでも減算になりますか?
なります。同一敷地内建物等(同じ建物、同じ敷地、隣接する敷地の建物)に住む利用者には人数要件がなく、1人でも10%減算の対象です。50人以上の場合は15%減算になります。
20人以上の判断に、介護予防訪問リハビリの利用者も含めますか?
介護予防訪問リハビリと一体的に運営している場合は含めて計算します。人数は暦月の1日ごとの人数の合計を日数で割り、小数点以下を切り捨てて求めます。
同じ敷地内の2つの棟に、それぞれ12人ずつ住んでいる場合は?
同一敷地内建物等に当たらない建物で「20人以上」を判断する場合、別棟の人数は合算しません。それぞれ12人なので、20人以上の減算には該当しません。ただし、その敷地が事業所と同じ敷地や隣接する敷地であれば、①の同一敷地内建物等として人数に関係なく減算対象になります。
同一建物減算を受けると、利用者の自己負担も減りますか?
減算後の単位数で費用が計算されるため、利用者の自己負担額も減ります。一方で、区分支給限度基準額の管理は減算前の単位数で行うため、使えるサービスの量が増えるわけではありません。
判断に迷う建物があるときはどうすればいいですか?
位置関係だけで機械的に判断しないこととされているため、迷う場合は建物の配置図や移動経路を示して、指定権者(都道府県・市町村)に確認しましょう。確認した内容と日付を記録しておくと、運営指導のときに説明できます。
- 訪問リハビリの同一建物減算は、同一敷地内建物等の利用者は10%(50人以上は15%)、それ以外で20人以上の建物の利用者は10%減算
- 同一敷地内建物等は人数に関係なく対象。建物の運営法人が違っても該当する
- 広い敷地に点在する建物や、迂回が必要な隣接地など、位置関係だけで機械的に判断しない
- 人数は暦月の1日ごとの合計÷日数、小数点以下切り捨て。介護予防の利用者も含める
- 区分支給限度基準額は減算前の単位数で管理する
- 厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1213(令和6年度介護報酬改定に伴う留意事項通知の改正)
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第259回)資料4「訪問リハビリテーション」
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第153回)資料4「その他の事項について」(区分支給限度基準額)
※2026年10月時点で確認した情報です。制度は改定されるため、算定・運用の際は最新の通知・Q&Aと指定権者(都道府県・市町村)の案内をご確認ください。

