口腔連携強化加算(訪問リハビリ/介護保険)|算定要件・50単位・運用を解説

介護保険の訪問リハビリテーションで令和6年度から新設された「口腔連携強化加算」。算定したいけれど、8項目の評価って何を見るの?、別紙様式6の出し方は?といった疑問で止まっているPT・OT・STは少なくありません。
この記事では、現役の訪問リハスタッフが現場で迷わないように、口腔連携強化加算の算定要件・単位数・評価のやり方・歯科医療機関やケアマネへの情報提供フローまでを、厚生労働省の通知ベースで整理しました。読み終わるころには「明日の訪問でどう動けばよいか」がイメージできるはずです。
- 口腔連携強化加算(訪問リハビリ)の制度概要と新設の背景
- 厚生労働大臣が定める基準と、算定できない3パターン
- 単位数(50単位/月)と1か月1回までの取り扱い
- 評価する口腔8項目と、別紙様式6を使った情報提供の流れ
- PT・OT・STが現場で押さえるべき運用ポイントとFAQ
口腔連携強化加算(訪問リハビリ)とは|令和6年度から新設された加算
口腔連携強化加算とは、指定(介護予防)訪問リハビリテーション事業所のPT・OT・STなどが利用者の口腔の健康状態を評価し、その結果を歯科医療機関と担当ケアマネジャーへ情報提供したときに算定できる加算です。令和6年度介護報酬改定で新設され、訪問リハだけでなく訪問看護・訪問入浴介護・定期巡回などにも同名の加算が設定されています。
背景には、在宅の高齢者で口腔機能の低下や誤嚥性肺炎リスクが見過ごされやすい現状があります。リハ職が定期訪問のタイミングで口腔の異常に気づき、歯科とケアマネにつなぐ「ハブ役」になることが期待されています。

PT・OT・STが口腔評価をしてもいいんですか?歯科衛生士じゃなくて大丈夫ですか?

大丈夫だよ。事業所の従業者なら職種は問わない。ただし歯科医師・歯科衛生士に相談できる連携体制を文書で取り決めておくのが前提なんだ。
口腔連携強化加算の算定要件|厚生労働大臣が定める基準
算定するためには、都道府県知事への届出と「厚生労働大臣が定める基準」への適合が必要です。基準は大きく「連携体制」と「重複算定の禁止」の2つに分かれます。
イ:歯科医療機関との連携体制を文書で確保すること
事業所の従業者が口腔の評価を行うにあたり、歯科診療報酬点数表 区分番号C000「歯科訪問診療料」の算定実績がある歯科医療機関の歯科医師、または歯科医師の指示を受けた歯科衛生士に相談できる体制を確保し、その内容を文書等で取り決めておく必要があります。
連携先は1つに限定されないのがポイントです。利用者の通院先・かかりつけ歯科に合わせて複数の歯科医療機関と覚書を交わしておくと、現場運用が回しやすくなります。
ロ:算定できない3つのケース
次のいずれかに該当する場合、口腔連携強化加算は算定できません。
- 他の介護サービス事業所で、その利用者について口腔・栄養スクリーニング加算を算定している(栄養状態のスクリーニングを実施し口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅱ)を算定している場合を除く)
- 口腔の評価結果から歯科医師が居宅療養管理指導を必要と判断し、初回の居宅療養管理指導を行った月以外に、歯科医師・歯科衛生士による居宅療養管理指導費が算定されている
- 同じ利用者について、他の介護サービス事業所がすでに口腔連携強化加算を算定している
とくに3つ目は要注意です。同一利用者に対し、訪問リハと訪問看護で両方算定することはできません。算定する事業所はサービス担当者会議などで決め、原則として継続的に同じ事業所が評価を続けます。
口腔連携強化加算の単位数|50単位/月(1か月1回まで)
単位数と算定回数は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 単位数 | 50単位/月 |
| 算定回数 | 1か月に1回まで |
| 対象サービス | 指定訪問リハビリテーション/指定介護予防訪問リハビリテーション |
| 対象職種 | 事業所の従業者(PT・OT・ST等)。職種要件は限定されない |
金額にすると地域区分・1単位単価により異なりますが、おおむね1名・1か月あたり500円前後の上乗せです。単価としては大きくありませんが、毎月確実に上乗せできるストック型の加算であり、利用者数が多い事業所ほど積み上げ効果が出ます。
口腔の健康状態の評価|PT・OT・STが見る8項目
口腔の評価では、次の8項目について確認します。イからヘまでは必須、トとチは利用者の状態に応じて確認可能な場合に限り評価します。
| 記号 | 評価項目 | 現場で見るポイント |
|---|---|---|
| イ | 開口の状態 | 指何本分開くか、左右差、開口時の痛み |
| ロ | 歯の汚れの有無 | 歯垢・食物残渣の付着、義歯の清掃状況 |
| ハ | 舌の汚れの有無 | 舌苔の厚さ、口臭の有無 |
| ニ | 歯肉の腫れ・出血の有無 | 発赤、ブラッシング時の出血 |
| ホ | 左右両方の奥歯のかみ合わせ | 欠損、義歯不適合、片側咬合の癖 |
| ヘ | むせの有無 | 水分・食事・唾液でのむせ、頻度 |
| ト | ぶくぶくうがいの状態 | ※状態により評価可能な場合のみ |
| チ | 食物のため込み・残留 | ※状態により評価可能な場合のみ |

重度の方だと、ぶくぶくうがいなんてできないですよね?

そう、トとチは「できる人だけ評価」でOK。未実施=算定不可ではないから、無理にやらせず「評価困難」と記録しておけば大丈夫だよ。
評価にあたっては、日本歯科医学会の「入院(所)中及び在宅等における療養中の患者に対する口腔の健康状態の確認に関する基本的な考え方」(令和6年3月)や、厚生労働省通知「リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について」を参考にすることが求められています。
情報提供の流れ|別紙様式6で歯科医療機関とケアマネへ
評価しただけでは算定できません。評価結果を歯科医療機関と担当ケアマネに情報提供することがセットの要件です。流れを4ステップで整理します。
- 連携体制の整備歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医療機関と、相談できる体制を文書で取り決める。
- 利用者・家族への説明と同意取得評価の目的・歯科医療機関とケアマネへの情報提供について説明し、同意を得る。意向を踏まえ、連携歯科医療機関・かかりつけ歯科のどちらに(または両方に)情報提供するかを決める。
- 訪問時に8項目の口腔評価を実施イ〜ヘは必須、ト・チは可能な範囲で。気になる所見は写真・本人の訴えとあわせて記録する。
- 別紙様式6等で情報提供歯科医療機関と担当ケアマネジャーへ、評価結果を別紙様式6等で提供。主治医の対応が必要そうな所見があれば、ケアマネ経由で主治医にも共有する。
情報提供は「歯科医療機関+ケアマネ」両方への提供で1回算定。どちらか片方だけでは要件を満たしません。提供したことを示すFAX送信票や記録を必ず残しましょう。
PT・OT・STのための運用ポイント|現場で詰まりやすい3つの壁
制度の文面はわかっても、現場で動かすと「どこで詰まるか」が見えてきます。とくにリハ職が陥りやすい3つのポイントを挙げます。
① 連携歯科の確保が一番のボトルネック
口腔連携強化加算の最大のハードルは、歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医療機関と「相談できる体制」を文書で結ぶことです。地域の在宅歯科連携室や歯科医師会、地域包括ケアの多職種会議をきっかけに、まずは1〜2件と覚書を交わすところから始めるのが現実的です。
② 同一利用者の「加算の取り合い」を避ける
訪問看護や訪問入浴も同名の加算を算定できるため、同一利用者でどの事業所が口腔連携強化加算を算定するかをサービス担当者会議で決める運用が必須です。記録に「サ担で当事業所が算定することを決定」と残しておくと、実地指導でも説明しやすくなります。
③ 評価から情報提供までを「ルーティン化」する
毎月の訪問のなかで評価→記録→様式6送付までを定型業務に落とし込まないと、「評価はしたが送っていない」「送ったが控えがない」が起きがちです。月初の訪問で評価、月末までに情報提供といった社内ルールを決めると算定漏れを防げます。
口腔の所見によっては、誤嚥性肺炎リスクや栄養障害が背景にある可能性があります。必要に応じて主治医(医科)にも情報提供を行い、リハ職としての「気づき」を医科・歯科・ケアマネにつなぐ意識を持ちましょう。
算定できないケース・実地指導で見られるポイント
制度の趣旨から外れた算定は、返戻・自主返還の対象になります。次のケースは特に注意です。
- 連携先の歯科医療機関との文書での取り決めがない、または更新されていない
- ケアマネへは提供したが、歯科医療機関には提供していない(またはその逆)
- 同一利用者について、訪問看護や訪問入浴の事業所がすでに当該加算を算定している
- 口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅰ)と重複している
- 居宅療養管理指導費(歯科医師・歯科衛生士)と初回月以外で重複している
- サービス担当者会議で算定事業所を決めていない/決めた記録がない
口腔連携強化加算のQ&A(厚生労働省)
令和6年度介護報酬改定の関連Q&Aは複数回にわたって発出されていますが、本記事公開時点で「訪問リハビリ事業所の口腔連携強化加算」に特化したQ&Aとして厚生労働省から明確に示されているものは限定的です。最新情報は厚生労働省「介護報酬改定に関するQ&A」の各Vol.を必ず確認してください。
口腔連携強化加算の現場でよくある質問(FAQ)
訪問リハと訪問看護の両方で同じ利用者に算定できますか?
できません。同一利用者については1事業所のみが算定可能です。サービス担当者会議でどの事業所が算定するかを決め、その記録を残してください。
評価する従業者の職種は決まっていますか?PT・OT・STなら誰でも算定できますか?
事業所の従業者であれば職種は問われません。PT・OT・ST・看護職員などが実施可能です。ただし歯科医師・歯科衛生士に相談できる連携体制を文書で確保しておく必要があります。
連携歯科医療機関は1か所だけでよいですか?
複数でも問題ありません。利用者のかかりつけ歯科に応じて柔軟に連携先を持っておくほうが現場で動かしやすく、結果として算定機会も増えます。
口腔・栄養スクリーニング加算と併算定できますか?
原則できません。口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅱ)を算定しているケースなど、一部の例外を除き、同月に重複して算定することはできません。
歯科医師による居宅療養管理指導が始まったら、口腔連携強化加算は取れなくなりますか?
原則として、歯科医師・歯科衛生士の居宅療養管理指導費が算定されている月は併算定できません。ただし「初回の居宅療養管理指導を行った月」は併算定が可能です。
情報提供は紙でなくてもよいですか?
別紙様式6等によることとされていますが、媒体は規定されていません。FAX・電子データなど、事業所と連携先で運用しやすい方法で構いません。送付した記録を必ず残しましょう。
まとめ|口腔連携強化加算は「リハ職が口腔と歯科をつなぐ加算」
口腔連携強化加算は、令和6年度に新設された比較的シンプルな加算ですが、歯科医療機関との連携体制づくり・他事業所との算定調整・別紙様式6による情報提供という3点を押さえないと算定にたどり着けません。逆にここを仕組み化できれば、毎月50単位を安定して上乗せできます。
- 口腔連携強化加算は50単位/月(1か月1回まで)の加算で、令和6年度介護報酬改定で新設された
- 算定には歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医療機関との文書による連携体制が必須
- 口腔・栄養スクリーニング加算や歯科の居宅療養管理指導費との重複算定は原則不可
- 評価はイ〜ヘの6項目が必須、ト・チは可能な範囲で実施し、結果を歯科医療機関とケアマネへ別紙様式6等で情報提供する
- 同一利用者について算定できるのは1事業所のみ。サ担会議で決め、記録を残すことが必須
制度の文面を覚えるだけでは現場は回りません。PT・OT・STが「口腔の異変に気づき、歯科とケアマネにつなぐハブ役」になることが、加算の本質的な価値です。明日の訪問から、まずは口腔の8項目をいつものリハの中に組み込んでみましょう。
