【令和6年度版】訪問リハの移行支援加算とは|算定要件・17単位・Q&Aを徹底解説

「移行支援加算って、結局なにを評価する加算なの?」「算定要件が複雑で、自分の事業所が取れるのか判断できない」――。訪問リハビリの現場でそんな悩みを抱えるPT・OT・STは少なくありません。利用者の社会参加を後押しする取り組みを評価する加算でありながら、計算式や確認手続きが多く、二の足を踏みやすい仕組みです。
この記事では、令和6年度(2024年度)介護報酬改定に対応した訪問リハビリの移行支援加算(17単位/日)について、算定要件・計算式・厚労省Q&A・現場での運用ポイントを、実務目線で一気に整理します。読み終える頃には「自分の事業所で算定できるか/何を整えれば届出できるか」が判断できる状態を目指します。
- 移行支援加算がどんな取り組みを評価する加算なのか(趣旨と位置づけ)
- 令和6年度改定後の単位数(17単位/日)と算定対象期間の考え方
- 4つの算定要件と「平均利用月数」の具体的な計算方法
- 厚労省Q&A・解釈通知のポイントと、現場で誤解しやすい論点
- 移行支援加算を取りに行く事業所が整備すべき記録・帳票・運用フロー
訪問リハビリの移行支援加算とは|社会参加を後押しした事業所を評価する加算
移行支援加算は、訪問リハビリテーション事業所が利用者のADL・IADLを高め、通所介護・通所リハ・地域密着型サービスなどの「社会参加に資するサービス」へ移行させた場合に、その実績を翌年度の報酬で評価する加算です。要するに「卒業」を促せた事業所への上乗せ評価と捉えると分かりやすいでしょう。
訪問リハは在宅生活の継続を目的にしたサービスですが、「ずっと訪問リハを続ける」ことだけが正解ではありません。状態が安定し外出ができるようになれば、通所サービスや地域活動への移行を促すことが望ましい――その方向性を制度として後押しするのが、本加算の趣旨です。

うちは「訪問リハをずっと続けてほしい」という利用者さんが多くて、移行ってあまり意識していなかったです……。

気持ちはわかるよ。ただ、訪問リハは「卒業」も大事な目標のひとつなんだ。利用者さんが外で活動できるようになることはADL・IADLの最高評価でもあって、それを支援した事業所をきちんと評価するのが移行支援加算の考え方なんだよ。
令和6年度改定での位置づけ
令和6年度の介護報酬改定では、移行支援加算は単位数が見直され、現在は1日あたり17単位として算定できます。算定の構造そのもの(評価対象期間→翌年度に算定)は維持されつつ、社会参加を促す事業所を、より明確に評価する設計に整えられています。
移行支援加算は「実施した翌年度に算定できる」加算です。令和○年度の算定は、前年(1月〜12月)の実績がベースになる点を、まず押さえておきましょう。
移行支援加算の単位数と算定ルール
現行の単位数と算定の基本ルールは次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 単位数 | 17単位/日 |
| 算定対象 | 指定訪問リハビリテーション事業所(介護保険) |
| 算定期間 | 評価対象期間の末日が属する年度の翌年度内 |
| 評価対象期間 | 算定年度の前年1月1日〜12月31日 ※届出初年度は届出日〜同年12月まで |
| 届出 | 都道府県知事(指定権者)への事前届出が必要 |
たとえば令和7年度に算定したい場合、評価対象期間は令和6年1月1日〜12月31日となります。「実績を積む年(評価対象期間)」と「算定する年(翌年度)」がずれているのがこの加算の特徴です。今年の取り組みが、来年の収益に直結する設計と覚えておきましょう。
同じ事業所のなかで「加算を取る利用者」と「取らない利用者」を混在させることはできません。届出をした事業所は、対象となるすべての利用者に対して加算を算定する運用になります。
移行支援加算の4つの算定要件をやさしく整理
算定要件は、厚生労働大臣が定める基準として4つの要素にまとめられます。順に見ていきましょう。
要件① 社会参加サービスへ移行した利用者の割合が5%超
評価対象期間中に訪問リハビリを終了した利用者のうち、その後に通所介護・通所リハ・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護・小規模多機能・看多機・第一号通所事業など「社会参加に資する取組」を実施した人の割合が5%(100分の5)を超える必要があります。
注意したいのは、医療機関への入院、介護保険施設への入所、再度の訪問リハ・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)への移行などは「社会参加」には含まれない点です。あくまで「在宅で外に出るサービス」「就労系の障害福祉サービス(就労移行支援・就労継続支援A型/B型)」が対象です。
要件② 平均利用月数のルール(回転率25%以上)
「12 ÷ 事業所の平均利用月数 ≧ 0.25」という式を満たす必要があります。
言い換えると、平均利用月数が48か月以下であれば要件を満たすという回転率の指標です。長期利用が固定化している事業所では達成が難しくなる仕組みになっています。
要件③ 終了後14〜44日に状況確認・記録
訪問リハ提供を終了した日から14日以降44日以内に、PT・OT・STのいずれかが、その利用者の通所介護等の実施状況を確認し、記録に残す必要があります。確認の手段は電話でもよいとされており、必ずしも家庭訪問でなくても構いません。
要件④ リハビリ計画書を移行先へ情報提供
利用者が通所サービスなどに移る際、利用者の同意を得たうえで、リハビリ計画書の情報を移行先の事業所に提供します。本人・家族の希望、健康状態と経過、リハ目標、提供サービスの内容など、重要な項目を抜粋して渡せばよく、計画書すべてをそのまま送る必要はありません。
平均利用月数の計算式と実例
もっとも分かりにくいのが「平均利用月数」の出し方です。式の構造を分解してみましょう。
平均利用月数 = 利用者ごとの利用者延月数の合計 ÷ {(新規利用者数 + 新規終了者数)÷ 2}
用語の定義(実務での落とし穴)
- 利用者延月数:評価対象期間中に利用者が訪問リハを使った月数の合計。途中で利用を終えた人や、利用初日に終了・死亡した人も含む。
- 新規利用者:評価対象期間に初めて当該事業所の訪問リハを使った人。なお、いったん利用を終えてから12か月以上空けて再開した人も「新規利用者」として扱う。
- 新規終了者:評価対象期間中に訪問リハを終了した人の数。
計算の具体例(イメージ)
たとえば次のような事業所を想定します。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 利用者延月数の合計 | 360 月 |
| 新規利用者数 | 20 名 |
| 新規終了者数 | 16 名 |
平均利用月数 = 360 ÷ {(20+16) ÷ 2} = 360 ÷ 18 = 20か月。
12 ÷ 20 = 0.6 となり、要件②は余裕でクリアです。
「社会参加への移行割合」と「12÷平均利用月数」の数値は、小数第3位以下を切り上げて判定します。微妙なラインを攻める事業所は、計算端数の処理ルールを正しく押さえておきましょう。
厚労省Q&Aから読み解く運用の注意点
厚生労働省の解釈通知・Q&Aには、現場で迷いやすい論点が整理されています。要点を実務目線でまとめます。
すでに通所介護を併用している人の扱い
訪問リハと通所介護を併用している利用者が、訪問リハだけ終了し通所介護を継続する場合、「通所サービスへ移行した者」として取り扱って差し支えありません。”終了後に新たに通所を開始”でなくても対象になるのは、現場で見落としやすいポイントです。
事業所内で「算定する人/しない人」を分けられるか
分けられません。届出を行った事業所は、対象となる利用者全員に対して加算が発生します。「重い人だけ取らない」といった選択的運用はできない点に注意しましょう。
移行後に元のサービスへ戻った場合
移行先で生活が安定せず、再び訪問リハに戻るケースもあります。終了から3か月以上経過し、医師がリハの必要性を判断した場合は新規利用者として再開できます。逆に、3か月以内の再開だと「同じ利用」とみなされやすいので、医師の判断と記録を必ず残しましょう。
就労系の障害福祉サービスへの移行も対象
就労移行支援、就労継続支援A型・B型などの障害福祉サービスにつながったケースも、社会参加先として認められます。若年の利用者や、難病・高次脳機能障害の方を担当している事業所では、現実的な選択肢として押さえておきたいところです。
リハビリ計画書の様式
厚労省が示す様式(別紙様式2-2-1・2-2-2など)は標準例です。同等の項目が記載されていれば、自事業所で使い慣れた様式でも構わないとされています。重要なのは「必要な情報が漏れなく移行先に伝わること」です。
現場でつまずきやすいポイント|PT・OT・ST視点の運用Tips

要件は分かったんですけど、現場で本当に運用するとなると、何から手を付ければいいですか?

ポイントは、「終了見込みの利用者を早めに見つける」「移行先と顔の見える関係を作る」「14〜44日の電話確認を仕組み化する」の3つだよ。
- 終了見込み者の早期スクリーニングADL・IADLが安定し、外出が増えてきた利用者をカンファレンスで毎月リストアップ。早い段階で「卒業計画」を担当ケアマネと共有します。
- 移行先候補との連携体制づくり地域の通所介護・通所リハ・第1号通所事業の特徴を把握し、利用者の趣味嗜好・移動手段に合った先を提案できるようにしておきます。
- 計画書情報の引き継ぎ様式を整備計画書すべてを丸ごと送らず、本人希望・健康状態・リハ目標・実施内容を抜粋した「移行サマリー」を1枚で作るのが現実的です。
- 14〜44日の状況確認をルーティン化終了日からカウントできるよう、終了管理表に「確認予定日」を自動で入れる運用に。電話確認の記録テンプレートも整えておくと、実地指導でも提示しやすくなります。
- 年度末の実績集計と届出評価対象期間(1〜12月)の終了者ベースで、社会参加移行割合と平均利用月数を集計。要件を満たしていれば翌年度に向け届出を提出します。
「社会参加」と認められない移行先に要注意
入院、介護保険施設への入所、再度の指定訪問リハ、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は、社会参加先には含まれません。移行先の選定段階で勘違いしやすい点なので、ケアマネ・家族とも事前に共有しておきましょう。
移行支援加算 よくある質問(FAQ)
1人でも対象者が出れば算定できますか?
個別の利用者単位ではなく、事業所単位の実績で判定する加算です。終了者全体に占める社会参加移行者の割合が5%を超えていることが要件となるため、1名の移行で即算定可能とは限りません。終了者の母数と合わせて判断します。
状況確認は家庭訪問が必要ですか?
電話などでの確認でも問題ありません。ADL・IADLの維持改善が確認できる方法であれば手段は問われていません。記録の残しやすさを考えると、電話+確認シートの運用が現実的です。
移行先の通所介護が短期間で中止になった場合は?
14〜44日の確認時点で、通所介護等を継続できているかどうかが評価対象となります。確認時点で実施できていれば、移行支援加算の対象としてカウントできます。
リハマネ加算とは併算定できますか?
リハビリテーションマネジメント加算とは、目的・要件が異なる別の加算であり、それぞれ要件を満たしていれば併算定が可能です。詳細は内部リンクのリハマネ加算解説をあわせてご覧ください。
届出は毎年必要ですか?
すでに届出済みであっても、毎年度の実績で要件を満たし続けているかを確認する必要があります。要件を満たさない年度が出た場合は、辞退届の提出も含めて対応します。指定権者ごとに運用が異なるため、所管自治体のページで最新案内を確認しましょう。
記録はどのくらい保管すればよいですか?
介護保険サービスの記録保存期間は原則として5年(自治体により異なる場合あり)です。算定根拠となる確認記録・計画書情報提供の写し・実績集計表は、実地指導で求められる重要書類なので、紙・電子いずれにせよ確実に残しておきましょう。
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まとめ|移行支援加算は「卒業を後押しする事業所」の評価指標
移行支援加算は、訪問リハビリの「卒業」を制度として後押しする加算です。長期利用を否定するものではありませんが、利用者のADL・IADLを最大化し、地域や社会へ送り出していく姿勢を、報酬面から評価する仕組みとなっています。要件は4本柱で複雑に見えますが、本質は「実績の見える化」と「移行後フォローの仕組み化」に集約されます。
- 移行支援加算は17単位/日。評価対象期間の翌年度に算定できる
- 要件は「移行割合5%超」「回転率25%以上」「14〜44日の状況確認」「計画書情報の提供」の4本柱
- 移行先は通所系サービスと第1号通所事業、就労系の障害福祉サービスが対象。入院・施設入所・再訪問リハは含まれない
- 平均利用月数は「延月数 ÷ {(新規利用者+新規終了者)÷2}」で計算。小数第3位以下は切り上げ
- 事業所単位の運用が原則。「取る人・取らない人」を選別することはできない
「卒業」を促す視点を組織として持てるかどうかが、移行支援加算を継続的に算定できる事業所と、そうでない事業所の分かれ目になります。まずは、終了見込み者のスクリーニングと、14〜44日確認のルーティン化から始めてみてはいかがでしょうか。
